スマートフォンが普及してソーシャルゲームが流行ってるから3DSが苦戦した?

3DSとiPhoneとパズル&ドラゴンの図

3DSは本当にスマートフォンやソーシャルゲームに押されているんでしょうか?

ニンテンドー3DS(以下3DS)はスマートフォンやソーシャルゲームに押されて苦戦している。ここ1、2年、色んなメディアでこういった内容を目にしました。3DSは確かにスタートから半年ほどの動きが鈍く、急遽値下げをした経緯があり、それが任天堂の業績に大きく響きました。ということは、やはり多くの人が言うように、3DSはスマートフォンの普及やソーシャルゲームの流行に押され、ゲーム専用機が必要とされなくなって苦戦しているのでしょうか。

実はガイドは、何度かこのゲーム業界ニュースにおいてそれぞれの市場は別々の動き方をしているのではないか、というお話をしてきました。3DSがスマートフォンやソーシャルゲームと競合するというのは、実際の購買行動の観察を行わずに、似ているように見えるものを安易に結びつけているだけのように感じます。

2012年に関して言えば、3DSは苦戦どころか大躍進を遂げました。そしてそれは、現状においてスマートフォンやソーシャルゲームと3DSがほとんど競合関係に無いことを示しています。

この点について、2012年の動きを振り返りながらご説明していきたいと思いますが、その前に1つお断りを。スマートフォンはハードウェアであり、ソーシャルゲームはオンライン上のサービスです。ですから、この2つを並べるとちょっと分かりにくいところもあるかもしれません。しかし、3DSを脅かすと言われ続けている代表選手の2つということで、お話させていただければと思います。

スマートフォンやタブレットPCの普及が進む

iPhoneの図

これまで以上にスマートフォンが売れた年になりました。

2012年は、スマートフォンが大きく普及した年でした。改めて言うまでもなく、電車の中でもスマートフォンを手にとっている人をたくさん見かけるようになりましたよね。携帯電話の買い替えの際にも、スマートフォンを導入するユ-ザーは増え続けています。普及率は2011年と比較してほぼ倍増しており、2013年には半分以上の人がスマートフォンを持つようになるとも言われています。

もう1つ、2012年躍進しているのがタブレットPCです。2012年3月に発売した第3世代iPad、そして9月に発売されたNexus 7、さらには11月にiPad miniが発売されて、大変市場を賑わしました。特にNexus 7やiPad miniが発売されてからの伸びは大きく、PC関連商品における月間のシェアではデスクトップPCを凌駕して、ノートPCに次ぐ位置を獲得しつつあるようです。

これらのスマートフォンやタブレットPCでは安価で手軽なゲームアプリが遊べる為、数千円もするゲームを主軸にしている3DSは苦戦している、というのが多くのメディアの報道でした。

続いて、ソーシャルゲームについてです。

ソーシャルゲーム天国になった日本

パズル&ドラゴンの図

ゲームの仕組みもさる事ながら、的確な運営で人気を博したパズドラ

日本のソーシャルゲームというのは世界の中でも特異に発達していて大変大きな市場を形成しています。特に、携帯電話でも遊べるほとんど同じボタンだけを押していればいいカードバトルタイプのゲームが流行し、それがいわゆるガチャと呼ばれるくじ引き形式の課金システムと相まって巨大な市場を創出しました。

ソーシャルゲームは、2012年6月にコンプガチャの規制がありました。コンプガチャというのは、ガチャで獲得できるレアなカードを、さらに複数種類揃えればもっとレアなカードが手に入るというシステムで、コンプリートするガチャでコンプガチャです。

ソーシャルゲームはこのコンプガチャによって大変な利益を得ていると言われており、6月以降各社一斉に撤退したことで、その影響が注目されていました。しかし、ソーシャルゲーム市場はさらに拡大を続けています。スマートフォンが普及する中で、タッチパネルを使ったパズルで戦う「パズル&ドラゴンズ」がダウンロード数500万突破という大ヒットもあり、2012年度は30%ほどの成長が見込まれ、コンシューマーゲーム市場を上回る可能性があると言われています。

それでも、どうぶつの森の代わりなんてなかった

どうぶつの森の図

どうぶつの森が遊びたいんですから、どうぶつの森を買うしかないんです

2012年、スマートフォンの普及が進み、タブレットPCが盛り上がり、ソーシャルゲームは大流行しています。これらと3DSが競合しているというのであれば、2011年と比較して有利な要素は1つもありません。にも関わらず、冒頭申し上げた通り、2012年の3DSは大躍進を遂げました。

理由はいくつかあります。2011年末にモンスターハンター3G、スーパーマリオ3Dランド、マリオカート7の3タイトルがハードを大きく牽引したことで2012年は勢いがついていたこと。その勢いを切らさないよう、コンスタントに質の高いソフトが投入されたこと。夏に発売した大画面のニンテンドー3DSLL。しかし、これこそ大躍進の立役者と言えば11月8日に発売した「とびだせ どうぶつの森(以下どうぶつの森)」でしょう。

どうぶつの森は発売されるや否や、出荷された60万本が店頭から消えてなくなり、店舗購入用のダウンロードカード20万枚も売り切れ、その後も仕入れれば仕入れるだけ飛ぶように売れていくという状況が続き3DS本体も大きく牽引、本体の累計販売台数を1,000万台まで引き上げました。どうぶつの森は240万本以上を販売してまだまだどこまで伸びるんだろうかというような状況です。

スマートフォンやタブレットPCやソーシャルゲームと関係なく、安価で短時間で遊べるゲームが世の中にどれだけたくさんあっても、どうぶつの森は売れました。何故でしょうか。それは、どうぶつの森を購入したユーザーは、ゲームならなんでもいいわけではなく、どうぶつの森が遊びたかったからです。任天堂が自ら配信するゲーム情報番組、「とびだせ どうぶつの森 Direct」が10月に配信されると、新要素にたくさんの注目が集まりました。YouTubeでは再生回数160万回を超えています。多くの人が、今回のどうぶつの森は面白そうだと感じたのでしょう。

スマートフォンで安価なゲームが手軽に遊べます、ソーシャルゲームも流行っています。でも、それはそれ、どうぶつの森の代わりにはなりません。

おそらく2013年も、スマートフォンやタブレットPCの普及はますます進むでしょうし、ソーシャルゲームは大きな存在感を持つでしょう。それらと3DSは競合するのでしょうか?

2013年 ドラクエ、モンハン、ポケモンの代わりはいる?

ポケモンの図

ワールドワイドでキラーコンテンツになる、ポケモンの新作が登場。ポケモンの代替商品があるのか、というのがポイントです(イラスト 橋本モチチ)

さて、2012年、3DSは大きく躍進を遂げました。ちなみに3DSの本体1,000万台突破は、98週で達成。これはニンテンドーDS(以下DS)よりも2ヶ月程遅い達成となります。DSには及ばないものの、発売から半年のもたつきを考慮すれば、相当挽回をしたことが分かります。ちなみに、子どもから圧倒的支持を得て当時の携帯ゲーム機市場を掌握していたゲームボーイアドバンスは125週かかっていたりします。

では、2013年はどうなるのでしょう? 2013年、スマートフォンやタブレットPCの普及はますます加速していくことが予測されます。また、ソーシャルゲーム市場に関しても、その成長スピードこそ緩くなってはきましたが、依然として大きな存在感を持つであろうことは想像に難くありません。今度こそ、3DSはこれらのゲームと競合して、売れなくなるのでしょうか?

ガイドは、おそらくそうはならないだろうと考えています。3DSのこれからのラインナップを見れば、2013年2月に、ドラゴンクエスト7のリメイク、春にはトモダチコレクション、夏にはモンスターハンター4、そして10月にはポケットモンスターシリーズの最新作「ポケットモンスターX・Y」が登場する予定です。どのタイトルも100万本以上売れて全くおかしくないポテンシャルを持っていますし、ポケットモンスターX・Yに至っては500万本クラスの超大型タイトルです。加えて、どうぶつの森もまだまだ長くじっくりと売れていくでしょう。これらの代わりになるコンテンツが、どこにあるのか、ということですね。

ゲーム業界の市場というのはゲームのソフトコンテンツによって形成されています。同じゲームという名前がついていても、ハードウェア同士が似たような機能を持っていたとしても、ソフトコンテンツの方向性が違えば市場の動きも全く違うのです。購入層そのものが違う場合も当然ありますし、ソーシャルゲームだとか、スマートフォンで手軽なゲームアプリを遊んでいたとしても、どうぶつの森が面白そうで、どうしても遊びたければどうぶつの森を買うのです。逆に言えば、3DSが苦戦した発売から半年程は、どうしても遊びたいソフトが欠けていたということでもあります。

そして、3DSがこれだけ売れた2012年も、スマートフォンやソーシャルゲームはその市場を大変な勢いで拡大させているわけで、少なくとも2012年においてはこれらと3DSはニーズが違ったのです。

近年、ゲームが専用機のパッケージソフトだけではなく、実に様々な形で提供されるようになり、大変な多様性を生みました。しかし、それらをゲームというだけでひとくくりにして考えると、目の前で起こっていることが分からなくなります。ゲームはゲーム、似たようなもの、というわけにはいきません。

お金を出してゲームを遊ぶ人は、自分の遊びたいゲームを遊びたい、この当たり前のことをもう一度思い出すと、ゲーム業界の動きはより鮮明に見えてくるかもしれません。

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【関連サイト】
田下広夢の記事にはできない。(ゲーム業界ニュースガイド個人運営サイト)
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