第38回小学館・集英社杯・小学生将棋名人戦の各県予選が、1~2月に行われます。この小学生名人戦は、各県の代表1人(東京のみ23区と都下から1人ずつ)を都道府県予選で決定し、代表による東日本大会と西日本大会でそれぞれ上位2人を決定、合計4人による全国準決勝と決勝はNHKで放送されます。子どもの将棋大会ではもっとも注目度が高いと言える大会です。

渡辺竜王、羽生三冠も小学生名人戦優勝

この小学生名人戦はプロ棋士への登竜門とも言われ、優勝者には、羽生善治三冠(1982年)、窪田義行六段(1984年)、野月浩貴七段(1985年)、鈴木大介八段(1986年)、渡辺明竜王(1994年)などとプロ棋士が多数。高校生プロ棋士の佐々木勇気四段も、2004年に優勝しており、最近でも小学生名人戦優勝者がプロ棋士になるケースは続いています。

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プロ棋士のアドバイスが詰まった「小学生将棋名人戦公式ガイドブック」

大会スポンサーでもある小学館から2008年に発売された「小学生将棋名人戦公式ガイドブック」には、小学生名人戦を経験したプロ棋士への多様なインタビューが掲載されています。プロ棋士から小学生に向けた将棋が強くなるためのアドバイスが満載。小学校6年生のときには、年間、道場で1万局将棋を指していたという田村康介六段(1987年優勝)のびっくりするようなエピソードも。

今年で38回の歴史を誇る小学生名人戦ですが、1993年の第18回大会までは県予選は行われず、東京でいきなり全国大会が行われる形でした。県予選を勝ち抜かなくても出られるわけですが、地方からこの大会に参加するのは、将棋が強い子や熱心な子に限られていました。

県予選方式になり、年々参加者は増加

19~22回大会は、東日本、西日本の2か所で行われ、東西の上位2人ずつが全国準決勝、決勝に出る形、そして1998年の23回大会から各県で予選が行われる現在の形になりました。それまでは100~500人程度だった小学生名人戦の参加者は、各県予選が行われることによって激増。23回大会以降は毎年1000人を超える小学生が参加、年々増加傾向にあり、2012年の37回大会は全国で2512人が参加しました。

小学生の大会であってもそのレベルは高く、県代表になるのは、道場で三~五段といった大人の強豪と匹敵するような実力の持ち主であることがほとんど。NHKで放送される準決勝、決勝のインタビューでは、将来の夢を聞かれ、多くの子どもが「プロ棋士」と答えています。

プロ棋士になるには、奨励会という養成機関に入る必要があり、ほとんどの場合、小学校高学年か中学生で奨励会に入会します。入会試験は、地元では天才と呼ばれるような強豪少年であっても簡単には合格できない難関ですが、今も小学生名人戦で上位に入った経験者が多数奨励会に在籍し、プロ棋士をめざし修行を積んでいます。

>>小学生名人戦に出場するには


プロ棋士養成機関に入ると大会には出られない

奨励会員は、小中高校生の大会を含むアマチュアの将棋大会に出ることは禁止されています。中学生の全国大会も大規模なものが行われ、そこからもプロ棋士は多数誕生しているのですが、中学生になると、奨励会員になっていて大会に出られない強豪が増え、本当の中学生最強を決める意味が薄れる面があります。また、トップ棋士は小学生のうちに奨励会入りし、それ以降の大会には出ないケースがよくあったのも、小学生名人戦がプロ棋士の登竜門と言われ、注目される理由と言えます。

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小学生名人戦の参加者は男子が多数を占めますが、女子の参加も年々増えています。

さて、小学生名人戦は、プロ棋士を目指す少年たちのハイレベルな戦いという他に、もう1つの顔があります。それは、より多くの小学生に将棋の楽しさを知ってもらう大会であるということ。各県で予選が行われるようになってから、初心者、級位者の子どもも多数参加するようになりました。

各県予選の日程は、公益社団法人日本将棋連盟のサイトのこちらに掲載されています。出場資格は2013年4月時点で小学生であること。住んでいる都道府県の予選に出場します。2013年1月の時点で小学校6年生の子は出られないということになります。これは全国準決勝、決勝やNHKでの放送時点での学年に合わせているためです。

各県で違う予選の方式

日本将棋連盟では、より多くの子どもが小学生名人戦に参加しやすくなるための策として、県予選の前に地区別予選をすることや、棋力別のクラスを設けることを各県予選主催者に勧めてきました。埼玉、千葉などは、県代表を争うクラスの他に、実力別に3段階のクラスを設けています。東京23区では、名人クラスの他、級位者クラスと初心者クラスがあります。青森では、地区別予選のあとに地区代表者による県予選を行う形です。

まだ参加できる県予選がたくさんあります。時間と会場が掲載されていますが、事前申し込みが必要な場合も多いので、いきなり出向くことはせずに、まずは問い合わせてみましょう。県予選主催者のホームページにリンクが貼ってあり、申し込み方法など詳細が見られる県もあります。毎年、年末くらいに日本将棋連盟のサイトに、全国の小学生名人戦の県予選の案内がアップされるので、次回以降出場を考えている場合もチェックしてみてください。

大会では情報収集を

代表を選ぶクラス以外では、その都道府県の在住者以外も出られる場合や、現6年生や未就学児も出られるようにしている場合もあります。また、負けて早く終わってしまった子どものために、プロ棋士による指導対局を用意している県予選もあります。

もし、子どもにとって初めての大会として小学生名人戦に出場する場合は、大会の最初の説明はよく聞くことが大切。対局中に、親が子どもに話しかけることは「助言」とみなされるので、してはいけません。また、対局相手が知らない子どもだと、つい体格で強さを判断してしまいがち。ですが、小柄な子や低学年であっても強い子どもはたくさんいます。もし、子どもが負けてしまっても、「あんな小さな子に負けたの」といった発言は慎みましょう。

小学生名人戦の県予選には、多くの親や将棋指導者が集まるので、子どもがもっと大会に出たい、もっと将棋を指したいと思っているならば、格好の情報収集の場でもあります。その県では、子どもが出られる大会がほかにあるのか、子どもが将棋を指せる場が近くにないか、他の保護者や関係者に聞いてみることをおすすめします。
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