「ZESHIN」って、ご存知でしょうか?

ZESHIN…柴田是真。是真は、江戸末期から明治時代に活躍した蒔絵師であり、絵師、現代風に言うと「工芸家」であり「画家」。
近年、海外で収集されたコレクションが紹介されている中、約30年ぶりに国内の優れた作品約120点を展示する展覧会が青山:根津美術館で開催された。
無印や家具デザインで活躍されているプロダクトデザイナー:深澤直人氏がこの展覧会を紹介(確か、NHKの日曜美術だったか)したこともあって、とても興味深く「早速、いこー!」と、美術館に向かった。
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美術館エントランス風景      ●クリックすると拡大します。

根津美術館は、東武鉄道の社長などを務めた、実業家で茶人の初代・根津嘉一郎の収集品を展示するためにつくられた美術館。第二次世界大戦以前からの歴史をもつ、日本では数少ない私設美術館のひとつであり、2009年秋に隈研吾氏デザインによる改修工事で話題となった美術館である。
東京・青山にある美術館の敷地は、根津嘉一郎の私邸跡。現在も広大な日本庭園があり、庭内には茶室が点在し、季節感の味わえる大好きな美術館である。
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会場入口風景           ●クリックすると拡大されます。

美術館ロビーは重々しい仏像が整然と配置されており、ウインドー越しに見える樹木に覆われた日本庭園と一体感のある空間が、展覧会会場への期待と緊張を誘う。
会場内は貴重な展覧会とあって多くの日本人に混じって外国人の方も驚嘆しながら是真の作品を見入っていた。和服のご婦人が多いのも特徴的な美術館だ
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展覧会リーフレット         ●クリックすると拡大します。


一線を越えた「漆絵師」柴田是真

柴田是真(1807-91)は、欧米の日本美術愛好家・コレクターの間ではとても有名な作家。
もちろん日本美術コレクションと言えば、「北斎」「広重」「歌麿」などの「浮世絵」を筆頭に「漆・漆芸」も人気のアイテムだ。そもそも日本の漆芸は、「ジャパン」と命名されたほど日本の人気特産物。19世紀後半の日本政府は工芸美術品を輸出する政策をとった結果、パリやウィーン万博で日本美術を開化させ熱狂的な「ジャポニズム」(直訳すれば日本主義)ブームがわき起こった。ジャポニズムはヨーロッパだけではなく、南北戦争後のアメリカでも起こっており、是真の作品がアメリカの日本美術コレクションにも多く含まれている。
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作品名:烏鷺蒔絵菓子器
作者:柴田是真 作
国:日本
時代:江戸~明治時代 19世紀
所蔵:東京国立博物館蔵
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是真は、「蒔絵師」であり、「絵師」でもある。つまり、「工芸家」であり、「画家」であった。と書くと何でもなく感じるが、画紙や絵絹に墨や岩絵具に描く「絵」と、器物の上に粘性の強い漆で施す「蒔絵」は全く別のもの。その別々のものを是真は行なったのである。実際会場で展示された是真の作品は、漆工芸というよりは絵画であり、洗練されたレイアウト、色使い、造形、そして、グラフィック的にデザインされている。

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作品名:夕顔蒔絵板戸
作者:柴田是真・三浦乾也 合作
国:日本
時代:江戸~明治時代 19世紀
所蔵:根津美術館蔵
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漆で器や印籠に絵を描いている。もっと驚くことに画紙に漆で絵を描いている。そんな作家は後にも先にも、いないのである。一線を引き済み分けされた伝統工芸や美術界では超異端児なのだ。