みやげ品集は貴重な社会文化資料

『新版 大阪名物』(創元社)¥1,300

『新版 大阪名物』(創元社)¥1,300

『大阪名物』(創元社刊)が登場したのは2006年だった。頁をめくって唸った。傑作である。名著である。足で、眼で、鼻で、口で、五官を研ぎすまして吟味し、真摯に書き上げた大作である。
著者は大阪が誇る女性ライター、井上理津子氏と団田芳子氏。名文家のふたりが書き下ろしたものだから、ひとつの品が抱いた空気感まで伝わってくる。
“なにわみやげ”と謳い、さまざまな品を紹介しながら、この一冊こそが大阪名物といえるものであり、ひとつの社会文化史として100年後、200年後、もっといえば大阪が、日本が、いや世界が存在している限り貴重な文献資料となる作品といえよう。
6年経ち、2012年秋、『新版 大阪名物』とともに上方みやげ『関西名物』も登場した。京都、神戸、阪神間、奈良、大阪のみやげものにしたい美味が紹介されている。これには脱帽である。
『関西名物』(創元社)¥1,300

『関西名物』(創元社)¥1,300

雑誌の連載で毎回ひとつずつ何かを取り上げるのならばまだ気が楽だが、関西の飲食ものとなると吟味するのも至難の技だ。なんせ彼女らは、客として店を訪ね、品を購入し、その店の空気感も胸の内に吸い込み、試食を重ねた上で厳選、執筆している。誰もができる仕事ではない。美味67品を収録しているが、苦行のような選択だったであろう。
『新版 大阪名物』はたこ焼き、豚まん、こんぶ茶、寿司、漬け物にパン、スイーツ、調味料から酒、はたまた燗徳利に革かばん、手ぬぐい、石鹸などなど日用雑貨まで70品が紹介されており、頁をめくりながら生き生きとした大阪の香り、今昔、伝統文化が感じ取れる。

世界のシングルモルトもあるぞ

山崎蒸溜所シングルモルトウイスキー紹介頁

山崎蒸溜所シングルモルトウイスキー紹介頁(『新版 大阪名物』より)

その大阪名物のなかにあったあった、ウイスキーがあった。よかった。
サントリー山崎蒸溜所のファクトリーショップで売っている「山崎蒸溜所シングルモルトウイスキー」。300ml、1,400の蒸溜所限定ウイスキーである。実はこれ、わたしは飲んだことがない。仕事で何度も山崎蒸溜所に行きながら、まだ買ったことがないのだ。ボトルのスタイリングもスタンダード製品とはまったく違うし、今度味わってみなければならない。たしかにこれは名物だし、いいお土産になる。
いまや世界的なシングルモルトとなり、欧米でファンを拡大しつづけているシングルモルト山崎は、大阪名物なのである。

広告やマスコミに取り上げられる知名度の高い品や、新幹線の駅の土産物店で入手できる品は登場していない。その店に行かなければ買えない品ばかりだ。
両著とも、嬉しいことに店の周辺地図、通販の可否、掲載店以外でも購入できる場所まで付記されている。
そんなことよりも単純に本として読んで面白い。ついでに言えば、ライターで飯を食おうとしている若者にすすめたい。ライターの仕事とは、を教えてくれている。ふたりのような物書きは、なかなかいない。バイブルにするといい。わたしは彼女たちをこころから尊敬している。
まずは買って読め。

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