各メーカー一斉にコンプガチャから手を引く

Greeブースの図

2011年には東京ゲームショウにGREEブースが大きく登場し、ゲーム業界でも存在感が増しているソーシャルゲーム

インターネット上では大変な話題になっていますから、多くの方がご存知かもしれませんが、ソーシャルゲームにおける「コンプガチャ」と呼ばれる手法が、景品表示法に抵触するという見解を消費者庁が2012年5月18日に発表しました。ついては景品表示法の運用基準を改正し、7月から規制することになります。

コンプガチャと言えばソーシャルゲームの屋台骨を支える収益源であり、これが違法であったとなると業績ダウンは避けられない大事件ですが、メーカー各社はさしたる混乱もなく、あっさりとコンプガチャから撤退を始めています。一方で、コンプガチャに変わる新たな懸賞手法が登場しつつあり、この規制の後、ソーシャルゲームがどのように変わっていくかについては注目が集まるところです。

今回は、コンプガチャがどのように違法であったか、そしてソーシャルゲームが抱える問題とは何であったかをご説明しつつ、ソーシャルゲームの健全化について少し考えてみたいと思います。

ソーシャルゲームの社会的問題

携帯電話で遊ぶ図

正しい判断力でお金を払っているか、消費者が混乱させる仕組みになっていないかというのが1つ重要なポイントです

まずコンプガチャについてお話する前に、ソーシャルゲームが抱える社会的な問題についてお話ししておきたいと思います。前提として、お金をたくさん使ってしまう人がいること、これそのものについては何の問題もないということを確認しておきます。大人が自分のお金で、正しい判断力で支払ったお金であれば、10万円使おうが100万円使おうが何の問題もありません。

ではソーシャルゲームの何が問題かというと、まず、子供が保護者の了解なく10万円以上もの大金を使ってしまうケースが発生しているということが1つ挙げられます。これにはソーシャルゲームそのものだけではなく、子供の携帯電話利用の在り方や、クレジットカードの管理など、家庭の問題も多分に含みますが、やはりソーシャルゲームも無関係とは言えません。

もう1つは、正しい判断力でお金を払っていないのではないか、という点が挙げられます。今回の規制のポイントも、この正しい判断力という部分で、コンプガチャの仕組みは例え大人であっても正しい判断力を保てなくなることがあります。もちろん、子供なら言わずもがなですね。

次は、コンプガチャの違法性についてと、ソーシャルゲームのこれまでの状況についてお話していきたいと思います。

揃いそうで揃わない コンプガチャの違法性

アイドルマスターシンデレラガールズの図

ソーシャルゲームで人気の「アイドルマスターシンデレラガールズ」も、コンプガチャの企画を絶え間なく開催していました

ガチャというのは、ソーシャルゲームにおけるくじ引きの総称です。300円程度で1回ひけるのが一般的で、くじをひくとランダムでゲーム内で使用できるアイテムが貰えます。コンプガチャと呼ばれるものは、くじを引いて手に入れられるたくさんのアイテムの中から、特定のアイテムを6種類とか、8種類など、複数揃えるとさらに特別なアイテムがもらえるという仕組みです。コンプリートさせるガチャだから、コンプガチャですね。

この、くじ引きでランダムに景品が手に入って、さらにそれを複数種類集めるという方法は、景品の額にかかわらず禁止ということになっています。今回ソーシャルゲームの規制のために何か新しい規制法が作られたわけではなく、元々禁止だったんですね。

というのも、例えば6種類なら6種類、ガチャで絵柄を集めていくと、最初の1種類、2種類が当たる確率と、最後の1つが当たる確率が全然違うんです。最初の1つは6種類のうちどれが手に入っても当たりですが、最後の1つは6種類のうちたった1つしか当たりがありません。ガチャをやればやるほど、既に持っているアイテムを重ねて手に入れてしまう確率が高くなって、多くの人が、あとたった1枚で揃うはずなのに運悪くその1枚が出てこない、という状況に陥ります。実は運が悪いわけでも何でもなく、その最後の1枚が出る確率は極めて低いのです。ここに消費者の混乱があって、こういう困惑によって商品の購入を誘引するような景品の手法はいけない、ということで違法になっているわけです。

元々は昔のプロ野球チップスなどで、カードを集めて景品を貰うという懸賞が問題になり、懸賞の方法そのものが適切でないということで1977年には全面禁止となっています。

消費者を混乱させて課金を誘引する商品が、大量のCMでプロモーションしていた

ドリランドの図

GREEの看板タイトルドリランド。本当にいつもCMを見かけますよね

ソーシャルゲームのこれまでの状況を整理すると、違法とされるような商品購入を誘引する懸賞手法を使い、しかもその商品の大量CM投下による大規模プロモーションにより、広くユーザーの集客をしており、大変な影響力を持っていたということになります。

子供の課金について、家庭内の管理の問題も大きいというようなことを前述しましたが、誰でも観るような場所、時間に大量のプロモーションを投下して行う商売であれば、やはり安心して遊べるようなものである必要があり、その点においてソーシャルゲームにも相応の社会的責任が求められることは言うまでもありません。

また、子供が大金を使っていたという話のインパクトが大きいのでそちらに気を取られがちですが、大人を相手にした場合でも、やはり正しい判断力を失わせるような手法を使っていては、健全とは言えません。

これだけ多くの人に遊ばれる娯楽として認知されるようになっていったソーシャルゲームがこれからさらに発展を目指すのであれば、その分の社会的責任を果たしていく必要があります。

何が健全化なのか

ガチャの話し合いの図

コンプガチャがダメなら次のガチャ、というのが健全化なのでしょうか?(イラスト 橋下モチチ)

今回、違法という判断が下され、ソーシャルゲームを提供するメーカー各社は瞬く間にコンプガチャから撤退しました。その引き際たるや見事なものです。迅速な対応は大変に素晴らしいことですが、その後の展開には疑問も感じます。結局、批判は最小限に抑えられ、インターネット上でこそ活発な議論も見られるものの、相変わらず電車に乗っても、テレビを観ても、まるで問題などどこにもなかったかのように堂々とプロモーションが流れ、コンプガチャに変わるあらたな懸賞手法が早くも登場し始めているというのが現状です。

子供の高額課金に対しては、ソーシャゲームプラットフォーム大手のモバゲー、GREEともに未成年のアカウントに対する課金額の制限を導入するという施策も行なっています。利用制限によるトラブルの回避には期待するところですが、それで十分というわけでもありません。本来は細かい法解釈と照らし合わせるまでもなく安心して遊べるということが当たり前に大事なことで、利用制限があるからいいということではなく、確認すべきは仕組み自体に問題がないかという部分でしょう。

ソーシャルゲームのガチャは、当選確率が明示されてなく、運営側でいくらでもコントロールできることなど、コンプガチャ以外にも問題視されるポイントはいくつも挙がっています。そういった状況の中で、コンプガチャが指摘されたから、コンプガチャだけ早々に撤退すればよいと、もしメーカーが考えているのであれば健全化とは程遠いと言わざるを得ません。願わくば外部からの指摘ではなく、業界の中からみんなが安心して遊べるガイドラインを提案し、懸賞手法が違法なのか合法なのかですったもんだするのは早々に終わらせていただきたいところです。

ソーシャルネットワークをプラットフォームとし、携帯電話やスマートフォンなどオンラインへの常時接続できるハードウェアで展開するゲームというものは、まだまだたくさんの可能性を秘めているはずです。そのコンテンツの発展のためにも、トラブルのない、安心して遊べる仕組みづくりが求められるのではないでしょうか。

【関連記事】
ゲーム業界はソーシャルと本気でお付き合いするのか(Allaboutゲーム業界ニュース)
ソーシャルゲーマーがただの画像にお金を払う理由(Allaboutゲーム業界ニュース)
いまさら聞けない ソーシャルゲームってなあに?(Allaboutゲーム業界ニュース)

【関連サイト】
田下広夢の記事にはできない。(ゲーム業界ニュースガイド個人運営サイト)

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。