失敗しない不動産投資には
投資シミュレーションが不可欠

不動産投資の目的は人によって異なりますが、主に資産形成を目的に投資用物件を選ぶ場合には、大切なポイントが2つあります。1つ目は、投入した自己資金を何年で回収できるか。2つ目は、利益を何年で確定できるか、です。

まず、自己資金の回収年数を知るには、投資したことによって長期的な事業収支がどうなるかを試算する「投資シミュレーション」を作成することが不可欠になります。というのも、単に価格が安いとか、利回りが高いといった購入時点の数字だけでなく、購入者自身がどのような資金計画で賃貸経営をするかによって、収支が大きく変わってくるからです。

不動産ファンドなどの場合は、3年から5年で資金を回収して利益を確定することが多いようですが、個人の購入検討者の場合には、短くても10年、一般的には20~30年程度をイメージしておくのが良いでしょう。

投資シミュレーションの設定条件

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下の図は、年収1,000万円の会社員(45歳)が8,000万円の1棟マンションを購入した場合のシミュレーションの例です。
年間の満室想定家賃は720万円、表面利回りは9%、頭金は1割の800万円です。
税金や登記費用、ローン保証料、保険料などの諸費用が約450万円かかりますから、頭金と合わせて投入する自己資金は約1,250万円となります。

 

投資シミュレーションの図表

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税引き後の手取り額がいくらかを見極めよう

さて、図1から、自己資金の回収年数は17年目であることがわかりますか?
(図1をグラフにした図2も併せてご覧ください)
税引き後のキャッシュフロー(手取り収入)の累積金額が自己資金を超えた時点で判断します。

投資シミュレーションのグラフ

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この例では常時満室という条件で試算していますが、実際の賃貸経営では入居者の入れ替えがあったり、募集期間が長引いたりします。そこで、5%程度の空室率を想定しておくほうが無難でしょう。その場合は、自己資金の回収年数は25年となります。ちょうどローンを完済した頃です。自己資金を取り戻し、ローンのない収益物件が手に入るというわけです。

このシミュレーションでは、キャッシュフローの税引き前と後の数字の違いにも注意してください。ここでいう「税金」は、「給与所得に不動産所得を合わせた総合所得に対する所得税と住民税の合計」です。税引き前は、物件の条件によって計算される数字です。税引き後の数字は、購入する人の収入や年齢など、各人の条件によって変化します。

図1・2の例では、税引き前のキャッシュフローは1年目が約169万円。しかし、給与所得だけのときよりも不動産所得が約200万円増えたために、不動産投資をする前より税金が約66万円増えました。この分を差し引いた約103万円が、税引き後のキャッシュフロー、つまり正味で増えた手取り金額です。

その物件に投資するかどうかを判断する際には、税引き後の数字のほうに注意してください。なかには税引き前は黒字なのに、税引き後は赤字になってしまうケースも珍しくありません。そのような結果となる場合は、投資戦略を大幅に見直す必要があるでしょう。

ちなみにこの例では6年後、16年後に家賃が下がるという設定にしているため、税引き前のキャッシュフローは段階的に減っていきますが、税引き後のキャッシュフローは16年目に少し増えています。これは、定年でその他の所得が激減して、税金が大きく減ったためです。


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