PlayStatonVita(以下Vita)が苦戦している。週間販売数が1万台を割り、今後の見通しはなかなかに厳しい。反面ソーシャルゲームは全盛期とも言える好況ぶりで、最新の携帯ゲーム機であるVitaの苦戦と比較され論じられることも多い。

ソーシャルゲームとはソーシャル・ネットワーキング・サービス(以後SNS)によるコミュニケーションを重視したネットワークゲームであり、その手軽さから携帯電話、スマートフォンやPCを中心にプレイされている。

さて、それではVita苦戦の原因はソーシャルゲームなのだろうか?

伸びないVita、伸びるソーシャル

PS Vita

PS Vita

PS3の立ち上げが鈍く、DSやWiiなどで手軽に遊べるゲームがヒットを飛ばしていた現状から、現在はゴージャスな映像表現を謳ったゲームよりカジュアルゲームが受け入れられているという見方が一般的である。

事実PS2時代にはミリオンヒットだった作品の続編が、PS3では半分以下の実績しか確保できていないという例も多い。

反してPSPやDSの売れ行きは順調で、Vitaにかかる期待も非常に大きなものがあった。Vitaは「PSPよりゴージャスなゲーム体験」を実現するリッチなゲーム機であり、それはソニー・コンピュータエンタテインメント(以後SCE)が後継ハードを提供するたびに映像表現の向上を実現していったのと一貫したコンセプトだった。それでいて、世の中のソーシャルゲーム・スマートフォンの普及を見逃さず、スマートフォンと共通のプラットフォーム「PlayStation Suite」を提供するという抜け目のなさも持ち合わせていた。

しかし現状では開発ツールが一般公開されたばかりであり、狙い通りに行っているとは言いがたい。ここまでリッチなゲーム体験に注力していたSCEだが、今のところユーザーの興味は「暇つぶし」としてのゲーム体験らしい。



暇つぶし=ゲーム?

 「暇つぶしならグリー」という広告を見た時、筆者が得た感想は「ゲーム開発も大分志が低くなったものだたな」と言ったものだった。今のところ、ソーシャルゲームの多くは同じ作業を繰り返してコレクションを充実していくというものだ。筆者はいくつかのソーシャルゲームを試してみたが、(あくまで個人としての感想だが)楽しめるものは殆ど無かった。「忍者ロワイヤル」などのゲーム要素が比較的高いものはそれなりに熱中できたが、多くのものはゲーム性すら感じることができなかった。

新しいジャンルのゲームに対しては「これはゲームか」という議論が往々にして起こるが、その線引きはおそらく無意味なものだ。ゲームであろうがなかろうが、ある種の娯楽には違いない。だが感覚を総動員して楽しむエンターテインエントか、ただの時間潰しかという点では大いに違いがある。

確かにゲームの原点は暇つぶしかも知れない。優れた戦略性を持ったチェスや麻雀、知恵の輪やジグソーパズル。娯楽として広まる大本は暇つぶしだったことだろう。しかし、ゲーム機はそこから音、映像、物語性を得てエンターテインメントへと進化していった。ソーシャルゲームの台頭は、ある意味ではその進化がいったん無に還ろうとしている瞬間ともいえる。

薄れていくゲーム性

かつてはカジュアルゲーム、今はソーシャルゲームがゲーム業界を席巻している。手軽さという意味では2つは同列といえるのかもしれない。それらと比較すれば苦戦しているといえる家庭用ゲーム機は、エンターテインメント化していく中で、ゲームとしての本質が徐々に薄れていった。音楽、映像、物語性。ゲームを盛り上げる諸要素がゲーム性より重視されるに至り、映画などの高度なエンターテインメントのような存在へと昇華していった。

だが、肝心のゲーム性が希薄であったり、製作者側の自己満足が前面に出てしまったりと評価は必ずしも前向きなものばかりではなくなっていた。家庭用ゲーム機より携帯ゲーム機、携帯ゲーム機よりスマートフォンというトレンドの変化はユーザーの正直なニーズの変化といえる。とは言え、現在のソーシャルゲームの盛り上がりは健全なものばかりではない。



「ガチャ課金」の危うさ

 ソーシャルゲームの多くは「基本プレイ無料」「アイテム課金」という手法をとっている。フィーチャーフォンやスマートフォンで遊べるという間口の広さ、無料で遊べるという手軽さからユーザーは集まりやすく、開始されたばかりのサービスで「ユーザー数100万人突破」などという景気のいい数字が乱れ飛ぶ。
そのため多くの人々が関心を抱く「ワンピース」などの有名作品がこぞってソーシャルゲーム化され、古い漫画もニッチ層を狙って次々とソーシャルゲームになっていっている。

今のところ、それらのほとんどが同じゲーム性と言わざるを得ない。かつて流行した大型タイトルがそうだったように、雨後の筍のように類似したゲームが増えていっている状況だ。また、ガチャなどで課金して、出てくるアイテムが運任せというシステムに問題を指摘されている。将来的には規制される可能性もあるというから穏やかではない。しかし、中には「パズル&ドラゴンズ」などといったパズルゲーム要素のあるものが登場し始めており、今後の広がりを予感させる。

ソーシャルゲームはまだ「卵」だ

 ソーシャルゲーム=スマートフォンやPC、などと短絡的に考えるのはおそらく危険だ。同じようにスマートフォンの急速な普及とソーシャルゲームの盛り上がりだけを結びつけるのも危険だろう。PS3で発売されたゲームにも「リトルビッグプラネット」や「グランツーリスモ5」などソーシャル要素の含まれるものが見られる。しかしゲーム性とソーシャル要素の融合という観点から見ると「ダークソウル」あたりのスマッシュヒットがいいヒントになるかもしれない。

今のところ、ソーシャルゲームの広がりは予測が難しい。課金モデルの危うさも含め、ソーシャルゲームは自分に適したゲーム性・収益モデルを探している過渡期にあるように見える。少なくともその先には単なる「暇つぶし」ではなく、より高度なゲーム体験があることだろう。その時、VitaやPS3といったゲーム専用機にとってソーシャルゲームは「敵」ではなく、「歓迎するべき仲間」となっているはずである。
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