骨・筋肉・関節の病気/関節痛・膝痛・膝の痛み

関節炎の種類・症状・治療

【形成外科医が解説】肘や膝などの関節に症状がみられる関節炎。関節炎には、細菌性関節炎、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風、偽痛風、乾癬性関節炎、変形性関節炎など様々な種類があります。病態ごとに診断、治療が異なりますので、まずは整形外科を受診して適切な治療を受けましょう。中でも細菌性関節炎は急速に進行し根本的な治療が必要なので、早期に治療を開始する必要があります。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

関節炎とは

関節炎のイメージ画像

外傷ではないのに関節に炎症をきたす関節炎。まずは原因を診断することが大切です

外傷以外が原因で、関節の炎症をきたす病気すべての総称です。さまざまな病気が含まれるため病態も各疾患ごとに異なり、その原因を診断することが大切です。
 

関節炎の症状……疼痛・腫れ・むくみ・水腫など

疼痛、関節の腫脹、浮腫、関節水腫などが関節炎の局所症状です。
右膝

右膝の関節炎。関節液の貯留のため腫脹がみられます。


関節炎の影響が全身に波及した場合、発熱、体重減少などの症状が発生します。
 

関節炎の原因……関節リウマチ・痛風など

■細菌性関節炎
細菌感染が原因となり、関節内に白血球、浸出液が増加し、関節の腫脹、発赤、疼痛が生じます。起因菌として黄色ブドウ球菌が多いです。院内感染の増加に伴いMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)関節炎、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)関節炎などの頻度が増加しています。この両者とも多剤耐性の感染症であり、高齢者や易感染性宿主では生命を脅かす感染症となることがあります。

■結核性関節炎
肺結核の減少に伴い頻度としては珍しい関節炎。全身症状として発熱、倦怠感などがみられます。

■関節リウマチ(関節リュウマチ、関節リューマチ)
3ヵ所以上の関節炎がある場合、関節リウマチの可能性が高いです。

診断に使用されるアメリカリウマチ学会の診断基準ですが、7項目中4項目以上を満たす場合、関節リウマチと診断します。
  1. 朝のこわばりが1時間以上持続する。この状態が6週間以上継続している
  2. 3関節以上の関節炎が6週間以上継続している
  3. 手の関節炎が6週間以上継続している
  4. 対称性の関節炎が6週間以上継続している
  5. リウマトイド結節(骨が突出している部位の皮下結節)
  6. 血清リウマトイド因子が陽性
  7. X線像の変化

■痛風
痛風は血液の尿酸が増加する高尿酸血症が原因となり、尿酸ナトリウム結晶が血管周辺の組織に沈着し、急性関節炎、痛風結節、尿路結石、腎障害、狭心症などの多臓器障害をきたす代謝疾患です。

関節炎の症状ですが、急速に発症する関節炎で、足の関節が多いです。疼痛、腫脹、皮膚の発赤などが認められ、歩行困難となります。通常一つの関節炎として発症します。
痛風

痛風発作時の足。激痛を伴います。

■偽痛風
ピロリン酸カルシウム結晶の沈着で発症する関節炎で、痛風と似た関節炎を発生します。膝関節が最も頻度が高く、足関節など比較的大きな関節に発生します。関節液に混濁があり、化膿性関節炎と誤診される可能性があります。X線で膝関節半月板の石灰化があれば偽痛風の可能性が高くなります。確定診断は関節液の中のピロリン酸カルシウムを顕微鏡で見つけることです。

■乾癬性関節炎
皮膚疾患である乾癬に合併する関節炎です。皮膚、爪に乾癬を認め、手、足の関節、脊椎、仙腸関節などの関節に炎症が生じます。

■変形性関節炎
加齢に伴い関節軟骨が変性、破壊し、それに伴い関節周囲の骨増殖、滑膜炎が発生し、炎症が生じます。成人の股関節、膝関節、手関節、脊椎などによくみられます。慢性的に時間をかけて発症し、急性の関節炎と違い、X線で異常が認められます。
 

関節炎の診断……レントゲン・MRI・採血等

■単純X線(レントゲン)
初期の関節炎では通常異常所見は認められません。
慢性に進行する変形性関節炎ではX線の異常を認めます。
変形性股関節炎。

変形性股関節炎。


単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明を受けられるので、整形外科では必ず施行します。

■MRI
MRIは磁気を使用して人体の断面写真を作成する医療用機器です。被爆がないのが最大の特徴です。欠点は費用が約1万円程度と高額な点や、狭い部屋に15分間ほど閉じ込められて、騒音が強いことです。脳外科の術後で体内に金属が残っている人、心臓ペースメーカー装着の人、閉所恐怖症の人などはMRI検査が無理なので、CT検査を行います。CT検査の費用は5,000円程度で、MRIより安くなりますが、被爆があります。単純X線では診断不可能な初期の異常をMRIで診断することが可能な場合があります。

■採血
関節炎が全身症状を伴う時、白血球増多、CRP上昇などの検査所見がみられます。慢性関節リウマチではリウマトイド因子が陽性となる場合が多いです。痛風では血清尿酸の上昇、白血球の増多、CRPの上昇がみられます。

■関節液
化膿性関節炎では関節液の肉眼所見で混濁という所見が認められます。細菌培養で原因となる細菌を検出すれば確定診断となります。痛風では尿酸の結晶が認められます。
尿酸結晶

関節液でみられる尿酸結晶。結晶の先端が周囲の組織を破壊すると考えれられています。


偽痛風ではピロリン酸の結晶を顕微鏡で診断が可能です。
偽痛風  

偽痛風のピロリン酸カルシウム結晶。
 

関節炎の治療法……原因にあわせ、抗菌薬投与や手術など

治療は関節炎の原因により異なります。

■細菌性関節炎
進行が急速で非可逆的であるため、早期に強力な治療を開始します。まずは関節液から採取された細菌に感受性のある抗菌薬の投与を点滴で行います。次に関節切開術、内視鏡下関節腔の洗浄、滑膜切除術などを施行します。通常は術後にチューブを関節腔に留置し、持続洗浄を追加します。持続的他動運動装置などを用いて関節のリハビリテーションを術後の早期から開始します。

■結核性関節炎
細菌性関節炎と同じ治療ですが、抗菌薬として結核の治療薬を使用する点が異なります。

■関節リウマチ
リウマチの治療薬を使用します。副腎皮質ステロイド、生物学的製剤、メトトレキセート、タムロリムス、金製剤などがあります。

■痛風
発作時の治療と発作の予防の二つの治療があります。

●発作時の治療
・鎮痛薬
ボルタレン、ロキソニンなど非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDと省略されます)を用います。

ボルタレンは、1錠15.3円で1日3回食後に服用。副作用は胃部不快感、浮腫、発疹、ショック、消化管潰瘍、再生不良性貧血、皮膚粘膜眼症候群、急性腎不全、ネフローゼ、重症喘息発作(アスピリン喘息)、間質性肺炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、無菌性髄膜炎、肝障害、ライ症候群など重症な脳障害、横紋筋融解症、脳血管障害胃炎です。

ロキソニンは、1錠22.3円で1日3回食後に服用。副作用はボルタレンと同様です。

どちらの薬でも胃潰瘍を合併することがありますので、胃薬、抗潰瘍薬などと一緒に処方されます。5年間、10年間の長期服用で腎機能低下などの副作用がありますので、注意が必要です。まれに血液透析が必要となる場合もあるので、漫然と長期投与を受けることはできる限り避けて下さい。

鎮痛薬の問題点は数ヵ月以上の服薬で胃腸症状、腎機能低下が高率に発生しますので、急性期を過ぎたら主治医と相談し、減量ないし休薬を考えましょう。

●発作の予防
高尿酸血症を治療します。
アロプリノールなどの薬を使用します。

■偽痛風
ピロリン酸カルシウムをコントロールする根本治療は存在しません。対症療法として鎮痛薬の投与を行います。

■乾癬性関節炎
乾癬」の治療を参照して下さい。

■変形性関節炎
進行した変形性関節炎は手術が対象となります。「「変形性股関節症」「変形性膝関節症」」を参照して下さい。
 

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