青春小説であり、恋愛小説「疾走」

主人公の少年シュウジは走るのが好きで、実によく走ります。中学では陸上部。新聞配達の給料から天引きされる自転車の貸し賃を節約するため、走って配るから自転車はいらないと専売所の所長に言い、「なめてんのか!てめえ!」と怒鳴られたりします。

ただ、表紙の絵でもわかると思いますが、この作品は、スポーツ少年のさわやかな青春物語などではありません。家族の崩壊、壮絶ないじめ、性暴力、殺人などが、これでもかというくらい全篇にわたって描かれた、おそろしく暗い、重い、悲しい物語です。

でも、ただ暗い、重い、悲しいだけの話というのでもありません。暗闇ほど光が輝いて見えるように、深い絶望の中だからこそ、たった一つの希望を命がけで守り抜こうとする主人公が、まぶしいくらいに光り輝く、そういう物語です。絶望的な状況の中での成長と純愛を描いた青春小説であり、恋愛小説なのです。重苦しい展開を通り抜けた末たどりつく、放心するほどの読後感のすがすがしさは、ふつうの青春小説、恋愛小説では、決して得られないでしょう。




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