実際に足を計測してもらうことに!

東京メトロの明治神宮前駅と渋谷駅の丁度中間にオープンした[M'Lab東京」

東京メトロの明治神宮前駅と渋谷駅のちょうど中間にオープンした[M'Lab東京」

アスリートのオーダーシューズ製作工房「ミムラボ」を主宰する三村仁司氏が、アディダスと共同開発したスピードを求めるランナーのための「adizero TAKUMI」シリーズの発売を記念し、期間限定でオープンした「M.Lab(ミムラボ)東京」。世界で活躍する数多くのランナーから絶大な信頼を得ているシューズ作りの匠が、期間限定とはいえ一般ランナーでも実際に目にし、接することができるという貴重な時間と空間の出現です。
私も実際に見学してみたいと思っていたところに、「足の計測を体験してみませんか」という思ってもみなかったお誘い。これは何があっても体験してみたいとばかりに、即答でお願いしました。

思いこみ、思い違いもズバリ指摘

2010年ロンドンマラソンスタート前。小崎まり選手に声をかける三村氏

2010年ロンドンマラソンスタート前。小崎まり選手に声をかけリラックスさせる三村氏

三村氏とは一昨年ロンドンマラソンの視察に行った折、現地で長時間同行し、三村氏がシューズを手掛けた小崎まり選手やノーリツの森岡芳彦監督とのやり取りを目にしてましたし、三村氏からだけでなく、小崎選手や森岡監督からも三村氏の選手との接し方や、なぜ三村氏のシューズに信頼がおけるのかなどこまかく聞くことがありました。
シューズを作るにあたっての過程は、氏が選手についての情報をことこまかく収集をすることはもちろんですが、その収集方法が単に集めるというのではなく、選手とのコミュニケーションを培い、本質的な問題も探り出し、一方選手の身を気遣いながら自信を与えるアドバイスの言葉を投げかけるというもののようでした。
その際には、選手の思い込みや思い違いをずばりと指摘する、受け入れられなくても必要とあればこっそりとでも対策を施しておくということさえ敢えておこなうし、大事なレースに用いられるとなれば、どのような履かれ方をするのか(どのレースをいつ走るのか、その路面はどうか)ということも実地に検分してシューズに反映するという、単なる足に合った型を作る職人とは同列に語れないマイスターだという感想をいだきました。

その三村氏が私の足を見てくれるという、冗談かとも思えるような話でしたがこれは願ってもない機会です。早速「M.Lab東京」を訪れました。

機械任せでは不可能な情報収集

まず足のアウトラインを描く

まず足のアウトラインを描く

東京に滞在しているということで、これまで東京からわざわざ兵庫県高砂市にある「ミムラボ」を訪れていた選手や監督がひっきりなしに顔を見せているようで、来客対応にも忙しいご様子。そんな中でロンドンでのヤキソバのまずさと値段の高さの思い出話をしつつ足の測定が始まりました。

まずは私の足のアウトライン取りと足囲長の計測。特製の道具でまず足のアウトラインを取り、次に足囲数か所を巻き尺で測っては書き込んでいき、丁寧に取ります。アナログですけども、おそらくここといったポイントの足囲の長さは、3Dスキャンでは求めにくいデータでしょう。巻き尺のほうが簡単ですし、機械任せのスキャニングでは足の観察ができません。

アラインメントと脚長を計測

アラインメントと脚長などを計測

アラインメントと脚長などを計測
 

3Dスキャナで足型を計測

3Dスキャナで足型を計測

次にベッドに横たわり、足のアラインメントの計測をしてもらいます。行うのはアシスタントですが、それでもこの道10年の経験があるとのこと。足首の可動域、足首の角度の偏り具合、膝の可動域、それに脚の長さも測定。
なぜ脚の長さを測るか? 左右の脚の長さ違いはフォームに影響を与え、パフォーマンスにも影響し故障の原因にもなります。有名な秘話(?)では、シドニー五輪時に高橋尚子選手の左右の脚長の違いを、三村氏が隠れてソール厚で調整したというエピソードが伝えられています。
私もこれまで何回かアラインメント計測をした経験がありますが、脚長を測られたのは今回が初めてでした。

アラインメントとは直訳すれば「一直線」というようなことなのでしょうが、人間の足の計測でいえば、足と脚が一直線になっているか否かを計測するというような意味で使われると思います。外くるぶしが伸びているようならO脚になりオーバープロネーションする着地になります。内くるぶしが伸びているようならX脚でアンダープロネーションというような着地になります。どちらもスピードのパフォーマンスを落とす上に故障発生の要因です。ついでにいえば、シューズのソールの減りが偏り、シューズの寿命を縮めるので不経済でもあります。

さて、足や脚の可動域を測った後は暗箱の中に足を入れての3Dスキャニングによる計測です。足の形が等高線であらわされる計測機です。これによって左右の足の違いは歴然です。甲や土踏まずの高さなども明らかです。

以上でとりあえず、計測は完了です。ここまで約20分弱。
三村氏の神髄が現れたのはここからでした。

走りを見なくてもわかる選手の走り

やるべきトレーニングを実際にやって教えてくれた

やるべきトレーニングを実際にやって教えてくれた
 

「ここにこうしてひっぱって貼って動きを妨げるように」とテーピング実技も

「ここにこうしてひっぱって貼って動きを妨げるように」とテーピング実技も

出そろったデータをざっと見つつ「ほぼ…」といいかけたのでてっきり「いいんじゃないですか」の言葉が続くと思いきや、データを見まわして、「バランスが悪いな。着地するときに…」あとは「それから…」「それから…」と欠点の指摘のオンパレード。
自慢じゃないですけど、ありとあらゆるといいたいほどに足の故障を起こし、現在も右足の「アキレス腱石灰化症」が完治せずにいる私ですから、指摘されることは思い当る事ばかり。それだけにフォームや着地は常々注意して走っているつもりです。アンバランスといっても大きな差はないはずで、いつも履いているシューズでも見たら推測できるかもしれませんし、ランニングフォームを見れば指摘するのも難しくないかもしれませんが、足の測定だけで言い当てますから驚きました。

走りのメカニズムを理論的に説明

そして左右のバランスの違いによって、右足と左足の動きにどのような差異が生じ、それゆえに股関節、膝、足首に左右それぞれどのような負担がかかり、どうパフォーマンスに影響したりどの筋肉に疲労やけいれんが多く生じる可能性があるか、理論的に説明してくれるわけです。
こういう解説をしてくれるシューフィッターには残念ながらまだ出会ったことがありません。

アンバランス矯正のトレーニング法も

さらに、そのアンバランスを矯正するためのトレーニング法を教えてくれるのです。
「足首が硬くて可動域が少ないから正座を1分毎日湯あがりに。それとかかと上げ」とか、「左脚の振り上げ降り下げを50回、4セット」「右脚は膝が弱いから片足スクワットを選手なら250回を2セットだけど」「内転筋が弱いのでこうして(自らベッドで実演指導)30秒を3セット」「アーチがやや低いので走る前や風呂上りに青竹に1分くらい乗ること」といった具合です。さらに、可動域が広いほうの可動域を制限するためのテーピングまで実際に私の足を膝に上げて実演してくれるのですから恐縮してしまいます。

自分では気がつきにくいアンバランス

筋トレやストレッチングの効果というのは確実にあるし、エリートランナーのみならず初心者でも初心者なりにおこなったほうが良いので、ランニングのマニュアル本に必ず載っています。読者の方にも実行されている方は多いと思います。
それらの本には、スクワット(膝屈伸)、シットアップ(腹筋)、プッシュアップ(腕立て伏せ)という3大筋トレを初めとし、さまざまな方法が載っています。これをやれば強くなれる、速くなれると信じて実行していると思うのですが、人によっては不必要なトレーニングもあります。
また、私のようにアンバランスな場合、左右を同じ回数だけやっても左右のアンバランスはなくならないわけです。左右のアンバランスだけでなく、部位によるアンバランスもあるでしょう。例えば大腿四頭筋(大腿の前部の筋肉)とハムストリング(大腿の後部の筋肉)のバランスが悪ければ故障を起こしやすくなります。バランスが悪く筋肉が発達しているならまず弱い筋肉を強化すべきで、一様に強化していたのでは、いつまでたってもバランスの悪さは解消されず、故障発症の可能性が高くなったりフォームもおかしくなります。強化しなくてよいほうのトレーニングにかける時間は無駄であり非効率でもあるわけです。
しかし、大きな差ならばともかく、小さな差ですとなかなか自分ではわかりにくいものです。まして、経験が少ない方ですとシューズの減りなどの相違を見てもその原因を思いつくに至らないと思います。やみくもに筋トレをしてもダメというわけですが、ここまでアドバイスしてくれる人は、ランニングコーチでもなかなかいません。

ランナーは小さいサイズを選びがち

そして、最後の極めつけのアドバイスはシューズのサイズでした。
「靴のサイズは左足は27.5cm、右足は27.25cm」「えっ!」
私が履いているのより5mm大きいです。実は私がランニングを始めた時は26.5cmを履いていました。窮屈ではあったんですが、シューズにぴったりせず内部に隙間があると、足の力が地面によく伝わらないという思いがあったのです。しかし、走る距離が長くなってくるにつれて窮屈な靴が辛くなりました。27cmにしてからずっと楽になりました。それでも足が疲れてくると土踏まずのアーチが下がり、足長が伸びて指が爪先に当たることもあったのですが、大きな問題とにまではならなかったので、27cmを履き続けていました。
しかし、故障のためこの1年間は走行距離が減ったことで、アーチが下がっていたのでしょう。それが足長に表れていたのです。足というのは、変動するものなんです。「どうもみんな小さいシューズを選ぶ傾向があるんですね。足長より1.5cmです。短い距離(10km以下くらいか)なら27cmでもいいでしょう」ということで、試しに27.5cmに足を入れてみると確かに快適。ちなみに三村氏に想定してもらっているレースはマラソンです。

本人をやる気にさせる言葉

「adizeroundefinedTAKUMI」は氏の渾身の自信作

「adizero TAKUMI」は氏の渾身の自信作

そして最後に「私が言った筋トレで弱いところを強く鍛え、テーピングをし『adizero TAKUMI sen』で走ったら完璧」「私は記録が出やすい靴、故障しにくい靴を作りますけどね、後は本人がやるかやらないか」と三村氏。
そうです。後は私がやるかやらないか。しかし、ここまで核心を突きかつ実行が難しくもないアドバイスを、かくも丁寧にしていただいた以上やるっきゃないじゃないですか。選手をその気にさせる言葉には、深い経験に裏打ちされた選手が安心して信頼するアドバイスと共に、トップアスリートの心理を知りつくしアスリートを鼓舞する愛情が込められているのです。

「信頼」と「やる気」を生むシューズ

三村氏に作ってもらうシューズの何がいいかという質問に、機能的なことよりも「安心できるから」「信頼できるから」という言葉を小崎まり選手も山下佐知子第一生命監督も話してましたが、これはどんなに機械的に微に入り細をうかがう足のデータをとったところで、生み出せるものではないでしょう。
これまでずぅ~っとエリートアスリートのオーダーシューズを作り続けてきた三村氏の技と心が注入された市販シューズとして登場したのが「adizero TAKUMI」のレース用「adizero TAKUMI sen」とトレーニング用「adizero TAKUMI ren」。「sen」に足を入れると特に勇気づけられるものがあります。

ランニングシューズのメカニズムを学ぶのにももってこいの「M'Lab東京」

ランニングシューズのメカニズムを学ぶのにももってこいの「M'Lab東京」

三村氏のアラインメント測定やシューズの製造工程が見られたり「adizero TAKUMI」の試し履きができる期間限定オープン「M.Lab東京」は2月13日までです。ぜひ一度足を運んでみられることをおすすめします。

M.Lab(ミムラボ)東京
・期間:1月31日(火)~2月13日(月)
・時間:[平日]11:00~20:00
[土日・祝]10:00~19:00
・場所:東京都渋谷区神宮前6-23-6 ティスモ原宿2
・最寄駅:東京メトロ明治神宮前駅徒歩5分、JR渋谷駅徒歩5分、原宿駅徒歩9分


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