家族の絆は元から強かった
震災後に行われた意識調査では、多くの調査で、震災前と比較したとき「家族のつながり」をより強く意識するようになっている、という傾向があります。しかしこれらの調査の多くは震災後のみに調査されたもので、震災後の「家族の絆は大事」という社会全体の流れを無意識のうちに反映してしまっている気がします。このような影響を受けない「震災前」と「震災後」の調査を比較したものとして、東京ガス都市生活研究所の調査があります。首都圏一都三県が対象で全国的なものではないことに注意が必要ですが、東日本大震災による意識の変化を捉える貴重な資料と言えるでしょう。
ところが、この調査では「親を大切に」「家族とのコミュニケーション」といった項目が震災前から上位を占め、震災後の調査でもほとんど変化していません。「親と同居するのは良いこと」という肯定派も3割程度で全く変化がないのです。この3割という数字は一見少ないようですが、前述の住生活総合調査で「親はいない」のが4割を占めて居ることを考えると親が居る6割の半分程度と考えられ、私は充分高い数字ではないかと思っています。
こうして見ると、要は震災前から「家族の絆」は強かった、ということではないでしょうか。つまり、大震災の影響だけではなく、以前からの変化、例えば人口の増減や世代の違いのような他の要因も大きいと考えられます。大震災後に二世帯住宅が増えているとすれば、それらのニーズの高まりが大震災後の「家族の絆」への注目により、刺激されたということではないかと思います。
「震災後の生活者の意識・実態に関する調査1111」
東京ガス株式会社 都市生活研究所;2011
(震災後の意識調査 2011.5 N=2122、2011.8 N=2142、2011.11 N=2128、震災前(2010年) N=2000)
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