簡単な注意で熱中症・脱水症は防げる

救急車のお世話にならないようにセルフケアを

救急車のお世話にならないようにセルフケアを

関東地方は例年よりかなり早い梅雨明けとなりました。「梅雨明け十日」(梅雨明けの十日間は高気圧に覆われて天候が安定するので登山に絶好という、登山界の言葉)の言葉通り、当分は強烈な陽射しに見舞われそうですが、そこで心配なのが熱中症や脱水症状。すでに例年以上に熱中症・脱水症患者発生のニュースが伝わっています。

熱中症・脱水症患者が急増したのは、節電への協力でクーラーの使用を控えたということも理由のひとつにあるかもしれませんが、梅雨明けが早かったために暑さに慣れる助走期間が短かったことも原因しているのではないかと思われます。

電力不足がなかったとしても、地球の温暖化の影響で日本の熱中症はこのところ増加の傾向にありました。気温との関係が深い熱中症ですが、なぜ熱中症になるのか、熱中症とは何なのか知っていれば未然に防げる症状です。健康によいとされるランニングをしていて熱中症や脱水症にかかっては笑えません。無事にジョギングを続けるために知っていなければならない熱中症について学びましょう。

熱中症のタイプ

熱中症はおおまかに4つの病型に分けられます。脱水症とも深く関係しているものもありますが、まずは、熱中症のパターンを把握しましょう。詳しくは、「healthクリック」などのサイトにも目を通して下さい。

【熱失神】
原因:熱により皮膚血管が拡張するために脳血流が減少して発症
症状:めまい、失神、顔面蒼白、呼吸が早くなる、唇しびれ、頻脈

【熱疲労】
原因:大量発汗に水分補給がおいつかないための脱水
症状:脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気

【熱けいれん】
原因:大量発汗に対して水分だけを補給した結果血液の塩分濃度が低下
症状:脚、腰、腹部の筋肉けいれん

【熱射病】
原因:体温上昇による中枢機能の異常
症状:意識障害及び、頭痛、吐き気、めまい、ショック症状、全身の臓器障害を合併することも

意識が正常で、ふらつかずに立っていられるようでしたら軽微ですから、涼しいところで頭や首筋などを冷やして休めば徐々に回復します。
上記の症状が現れた時には、すでに軽微とはいえません。救急医療を要請する必要があるでしょう。

体調に変化を感じたら運動中止を

駅伝などレースになるとムリしがち。体調に異変を感じたらいさぎよく棄権を

駅伝などレースになるとムリしがち。体調に異変を感じたらいさぎよく棄権を

問題は、意識がある程度はしっかりしていて、「体調が今日はちょっとおかしいな」という自覚はあるものの、運動を続けてしまう場合です。
それが熱中症の前段症状だということを知っていれば、運動を止めて木陰で休憩するというような自衛手段を取りますが、熱中症の前段症状だとは思わず、夕べの夜更かしのせいだろう、ぐらいに軽く考えて運動を続けていると確実に症状は進みふらふらしてきます。気持ちも悪くなります。

意識もぼーっとしてきて、自分で救急車を呼ぼうという考えも浮かびません。周囲の人に「大丈夫か?」と声をかけられたとき「大丈夫」と答えてしまうと、これまた救急車の要請が遅くなります。

熱中症を予防する心得としては、涼しい場所と時間を選び、放熱仕様の素材によるウエアを着用する等の基本的な注意だけでなく、気温が高ければそれだけ熱中症になる可能性が高いことと、初期症状についての知識を持っていること、そして運動中に体調の異変を感じたらすぐにランニングを中止することです。

体温が上がってしまうさまざまな原因

気温については、何度以上が危険、というわけではなく、当人の体調もあるし、風や湿度との関係もあります。

風がない、あるいは追い風で風を感じなければ汗をかいても汗が蒸発しにくく気化熱が奪われないので体温が冷却されにくくなります。湿度が高い気候でも同様に汗が蒸発しにくい状態ですから、汗は出るが体温が下がらない条件といえます。ダイエットを目的に、あるいは日焼けを避けるために長袖のヤッケを着込んでいるランナーを見かけることがありますが、これも危険です。ウエアによっては汗に濡れると肌にべったりとまとわりつくような素材があります。これも発汗と蒸発を妨げ体温の上昇を招きかねません。

グループで走っていると、他のメンバーが走っていると体調の変化に気がつくのが遅れたり、ついムリして走り続けてしまうことがありがちです。特に気をつけましょう。他のメンバーの様子にもお互い気を配りましょう。
脱水症に水分補給は必要ですが、熱中症の場合は脱水が原因している場合でも、体が水分を受け入れない場合があります。水を飲めば改善するという思いこみは危険です。

脱水症が幼児と高齢者に多いわけは

木陰に入れば気温は数度下がる

木陰に入れば気温は数度下がる

熱中症と混同しやすい症状に脱水症があります。暑いと汗をたくさんかいて脱水症になりやすいことは事実ですが、脱水症とは体の水分のレベル以下の減少によって生じることですから、寒くても脱水症は起きます。

一般に脱水症状を起こしやすいのは幼児と高齢者であり、青壮年は少ないことになっています。
これは、幼児は体の組織が水分を要求することと、体の体積に比して表面積が広く、水分を放出しやすいことが原因です。一方高齢者の場合は細胞が水分を保持する力が弱く、慢性的に体の水分量が少ない(青壮年にくらべほぼ5%)のと、乾きを覚える感覚が衰え、脱水を自覚しにくことが主な理由とされています。

したがって、脱水症状をネット上で検索しても幼児の脱水や高齢者の脱水(「健康長寿ネット:脱水症」)について解説するサイトがたいへん多くなっています。で、ランナーの場合ですが、ランニング時の発汗によって多量の水分を失えば、幼児や高齢者の脱水症状とまったく同様の状態に陥ることになります。

10km走って1リットルの脱水

20名ほどのランナーに頼んでランニング時にどの程度の水分を失うのか実験したことがありますが、25℃程度でも10kmあたり平均1リットル弱の水分を失っているようです。自分の経験では30℃前後の気温条件で30km程度を走ると、途中給水していても3kg程度の体重(ほとんどは水分)が減少していました。

夏になると夜間の室温も冬よりは高めに設定していると思いますが、それだけに就寝中の発汗量も多くなります。朝練をする方は特に起床直後から練習に走り出すまでの間に多めの水分を補給して下さい。これもランニング中と同じでこまめに給水するようにします。ランニング中はもちろん途中の給水を行うようにしましょう。水分だけでは電解質のバランスが崩れがちですから、スポーツドリンクを活用するのも冬以上に意味のあることです。日常の食事でも塩分を他の季節より多めにしたり、梅干しを食べたりといった工夫をしましょう。

いつの間にかなってしまう脱水症

脱水症状には痛みがありません。なんとなく脱力感が生じてきて体をうごかすことがおっくうになり、頭の働きもぼーっとしてきます。そうなると、自分で積極的に水分をとろうという意識もなくなってしまうのです。

気温が25度はおろか30度にも達しようという状況下でランニングをするということは、脱水症や熱中症に陥る可能性が高いということをよくよく自覚し、事前の給水を忘れず、常に自分の体調を意識していてください。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。