まずは3Hハイボール

田外博一氏

田外博一氏

田外博一(たげひろかず)氏のバー『エルミタージュ』ではじめて飲んだのは1999年の12月だった。独立してちょうど1年が経った頃で、ひとりで黙々と、また陽気に、手際よく仕事をこなす姿が印象的だった。
自分ですべてをこなさないと、気が済まない、というか、なんでもこなせちゃう人間なのだ。「悲しい性(さが)だね」と言うと、田外氏は苦笑しながら「そうでもないんですけどね」と返してきた。
そしていまもひとりで、手際よく、冗談を飛ばしながら肩の凝らないサービスをつづけている。

フランス語の『エルミタージュ』は、隠れ家を言う。はじめての客にはHERMITAGEの綴りの中に、「ほら、TAGE、わたしの名前が隠れているでしょう」と笑わせる。
久しぶりに田外ちゃんに会った。「しょうがねぇ、人気の3Hハイボールとやらで幕を開けるか」というと、「ありがとうございます」とテキパキとつくりはじめる。
3H(スリーエッチ)とはスケベェの3倍ってことではない。白州、エルミタージュ、そしてなんと自分の名前の博一、3つの頭文字Hである。以前「ハイボールも入れて、4Hでいいんじゃないの」と突っ込んだら、「余計なこと言わんと、グビッと飲んでください。さあ、喉をうるおしてください」と流された。以来、3Hがどうのこうの、という話は面倒だから一切しない。

バー入門者におすすめ

3Hハイボール

3Hハイボール

このシングルモルト白州10年のソーダ割(3Hハイボール/¥1,000)は旨い。ステンレスのマグカップがまた涼味をそそる。森香るハイボールにレモン、ミントの風味がそそと寄り添い、口中をリフレッシュさせながら喉元からお腹に滑り込むと、たちまちにして全身に爽快感が広がっていく。
「旨い、爽快」とビールのようなつまんないコメントを発して唸ると、「ありがとうございます」と元気よく応える。田外氏の気っ風のよさがまた魅力でもある。
はじめてのバーというか、バー入門者はこういう店に行くといい。気取ることなく、それでいてしっかりとした酒のサービスを受けることができる。何もわからない、と告げてしまいなさい。田外氏が楽しく、おいしい世界へ誘ってくれる。
次頁では、もうひとつ人気のハイボールをお伝えする。(次ページへつづく)