平沢進さんの生徒だった

ガイド:
tonight

Tonight

今回のインタヴューはとても楽しみにしていました。結成から現在に至るShampoo、そして折茂昌美さんに迫りたいと思います。P-MODELの平沢進さんのプロデュースで、二人組Shampooとして1982年にシングル『Tonight』でデビューされたんですけど、折茂さんはもともと平沢さんの生徒だったんですね。

折茂:
はい。シンセサイザー教室の生徒でした。

ガイド:
シンセサイザーを習おうってどうして思われたのですか? 当時、まだ女性でシンセサイザーを習っていた人は珍しかったのでは?

折茂:
shampoo-orimo

Shampoo (折茂昌美)

シンセサイザー自体が、まだ一般的ではなかったですね。とても高価なものだったし、珍しくて興味津々でした。そんな時にヤマハが比較的手に入りやすい値段のCS10を教材にしたシンセサイザー教室を始めたんです。私はCS10を持っていませんでしたが、ともかくソコに行けばシンセサイザーに触れるという…その一心で(笑)。

パンクである故に反パンク

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groovinshowa6

GROOVIN' 昭和6

「Tonight」はフィル・スペクター風ガールグループ・サウンドmeetsテクノポップといった趣ですね。ずばり僕が当時、好きだった(いや、今でも)サウンドです。その後、『テクノ歌謡』『GROOVIN' 昭和!』などのコンピレーションにも収録されてCD化されたのが嬉しかったです。何に触発されてこの曲を作られたのか、興味があります。

折茂:
『GROOVIN'昭和』って?入ってるんですか?!初めて知った(笑)。

ガイド:
よくあるんですよね、ご本人がご存じなくリリースされているコンピって(笑)。

折茂:
Shampooはパンクムーブメントに触発されて作ったバンドですが、「Tonight」はむしろ反パンク的な…いえ、ステレオタイプ化されていくパンクに触発されたというか。「ぶち壊せ」って言っても壊れない現実の中で、ラヴソングやったらどうか、と。初期のShampooはそういう逆説的な反骨精神がけっこうあって、白黒はっきりしろと言われるとグレーを強く主張したりしていました。元気でした(笑)。

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impossible

Impossibles!

パンクであるために反パンク的! 確かにロックであるために反(その当時の)ロック的だったパンクですから(笑)。
カップリングの「ストック」(その後『Impossibles! 80's Japanese Punk & NewWave』でCD化)からは、ほとんどイントロのような不思議な曲! 実験的なニューウェイヴの衝動を感じます。

折茂:
「ストック」は原曲が53秒しかない曲で、「Tonight」のB面に入れようということになった時に短すぎるから何か加えようという話になり付け足したんですよ。歌詞以外はほどんとレコーディングスタジオで作ったと記憶しています。「Tonight」同様、プロデュースをしていただいた平沢さんのセンスが大きく反映されています。

キャバレーなロンド

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rebelstreet

REBEL STREET

Shampooとしてのリリースは当時LPとして『REBEL STREET』(1982年)に収録された「ロンド(輪舞曲)」は退廃的なキャバレーに似合いそうな曲。こちらは2009年のライヴ動画も公開されていますが、お気に入りの曲なんでしょうか?

折茂:
お気に入りです(笑)。
1999年に15~16年ぶりにライヴをやることになった時、その時点で世間で聴けるShampooのCDは『REBEL STREET』の中の「ロンド」だけだったんです。で、ライヴをやるにあたって来ていただけるお客様に一曲でも知っている曲があった方がいいだろうと思ってライヴでやったんですよね。それ以来、ライヴでやるといまだに「生ロンドが聴けた」と喜んでもらえる人がいるので…ついやってしまいます(笑)。

幻のアルバム音源はどこに?
 

ガイド:
当時の相方だった足立真理さんとはどのようなきっかけでいっしょにやることになったのですか?

折茂:
彼女もまた、シンセサイザー教室の生徒さんだったんですよ。私とは別の地域の教室だったんですが、一緒に授業を受ける機会があって知り合いました。

ガイド:
でも、デビューして1年くらいで足立さんは渡米しちゃうんですよね。足立さんが抜けてからもShampooとしての活動はされていたのですか?

折茂:
何回か知り合いにサポートをお願いしてライヴをやりましたが、そう長くは続けませんでした。

ガイド:
当時、Shampooとしてアルバムを発売するという話もあったと聞きますが、これはどの程度進行していたのでしょうか?

折茂:
何曲くらい録音したかなぁ。5~6曲は完全に出来上がっていたと思いますね。今思えば制作の当事者でありながら私は周りの状況がぜんぜん分かっていなくて、その辺りは不明な点が多くて…あのマスターはどこに?

アフリカのクリスマス
 

ガイド:
発掘されて日の目を見てほしいです。
1990年にリリースされた島崎和歌子さんが歌う「アフリカのクリスマス」は、自分の中ではクリスマスソングBEST 5に入っているんですが、これは折茂さんと平沢さんの共同作詞ですよね。これは平沢さんから声がかかったとか?

折茂:
そうです。

ガイド:
ちなみに以前、僕のBlogでこんな事を書きました。
さて、この「アフリカのクリスマス」ですが、アイドル・ソングとしての妥協を許さない完成度です。島崎和歌子が「アーフリカのクリスマス」とつぶやき始め、その後、感動的な重厚な平沢サウンドが炸裂します。クリスマスソングとしても歌詞はあり得ない展開。クリスマスツリー、イエス様、マリア様に虫、ジャングル、ザンビアの滝の音が混在する摩訶不思議な世界。作詞は、平沢進と彼が昔プロデュースしたShampooという女性二人組の京野昌美が担当しています。こんなクリスマスソングが世の中に一つくらいあってもいい。
 
そうそう、この時は折茂昌美ではなく京野昌美名義になっていますが、もともと使い分けられていたのですか?

折茂:
いいえ、後にも先にもこの時だけなんですよ。

ガイド:
余談ですが、NHK BSの「熱中スタジアム~クリスマスソング特集」に昨年、何故か出る事になって、この「アフリカのクリスマス」について話したいとしつこく言ったのですが、残念ながら僕の願いは叶いませんでした(笑)。

折茂:
見ればよかった!
でも、願いが叶っていたら完全に浮いていたでしょうね(笑)。

『Cold Sleep』で再起動

ガイド:
coldsleep

COLD SLEEP

長いブランクを経て2002年にKCさんと男女二人組Shampooとしての復活アルバム『Cold Sleep』をリリースされましたが、音楽活動を再開された理由は?

折茂:
1999年、突然段ボールの蔦木さんからライヴに誘われて…迷いに迷った末に、出演させていただくことにしました。『東京カタストロフ・ホーン』というイベントでした。その時に初めてKCさんに音楽的なお手伝いをしていただいたんです。で、ライヴで使う音源を作ったらそれをCDの形にしたくなるのが人情というもので…2002年の『Cold Sleep』の発売となりました。

ガイド:
KCさんは情念というユニットでも吉田酢酸さん等と活動されていますが、どのようなきっかけで一緒に活動することになったのですか?

折茂:
KCさんとはShampooと関わっていただく以前からの知り合いなんですよ。もう、何年かしら。かなり長いです。彼が自分のバンドをやったり、多くの女性ミュージシャンのプロデュース的なことをしたりしているのを私は友人として見ていた訳です。なので安心感もありました。で、いざ人手が必要!となったときにKCさんにお願いしたんです。

KC:
初めは軽い気持で「うん、やるやる~!」で、その後「こんな、たいへんなことだったの?」という…

ガイド:
「Honey」や「Fall In Love」を聴いていると、もしShampooがあのまま活動を続けていたら、「Tonight」の後にこんな曲出したのかなぁと。ノスタルジックという意味ではなく、80年代のShampooの個性がちゃんと引き継がれていると。

折茂:
単純で分かりやすいメロディラインの曲が基本的に好きで、あと、たぶん古いんじゃないかしら、人間が(笑)。

ガイド:
「Dentelle」は凄くかっこいい曲。アレンジを担当されたKCさん、部分的な音使いから、YMO好きなんだと勝手に思っています。

KC:
リリースは8年前ですから実際に作っていたのは10年前ぐらいでしょうか。なので、当時何を思ってこの曲のアレンジをしたのかはおぼえていませんが、今聴くと、YMOっぽいですね(笑)。とくにドラムとサビのフランジャーのかかったシークエンス(YMOというかジョルジオ・モロダー)に、そう感じます。あとデペッシュ・モードですか。これは当時意識してたかな?
あと、直接的には出てないかもしれませんが、90年代のクラブ・ミュージックの影響は大きかったはずです。ギターの現PEVO1号さんには「ロバート・フリップで!」と注文したことをおぼえています。

Leg Twoと『BLIZZARD DRIVE』
 

ガイド:
blizzarddrive

BLIZZARD DRIVE

では、本題とも言える5月21日に発売された『BLIZZARD DRIVE』について。このアルバムを制作する前、2007年に右大腿部切断という大きな苦難を乗り越えられたのですが、Shampooとしての活動を継続していくというのはごく当たり前の事だったのでしょうか?

折茂:
生きるか死ぬかって時は音楽どころではありませんでしたが、徐々に回復してきた頃(2009年)に「DRIVE TO 2010」のお話をいただいて、じゃあやるかって。そうそう、私はいつも周りの人に背中を押してもらって動いてきたと思います。Shampooを継続していくのは当たり前ではないけれど、人との関わりにおいて必然だったと感じています。

ガイド:
legtwo

Leg Two

ジャケにも写っていますが、ご自身の義足を楽器化したLeg Twoを装着して演奏していますね。この世界でも唯一無二と思われる義足楽器はどのように思いつかれたのですか?

折茂:
義足に関しての夢はぼんやりと色々あったのですが、それを具体化しようと思ったのはやはりライヴがきっかけです。「DRIVE TO 2010」の出演が決まってから構想を練り始めました。まず「こんなポーズで奏でたい」という形から(笑)。音なんて出なくてもいいってくらいに、形から(笑)。それも、あながち夢ではないと思わせてくれる人材が友人にいたから実現したことなんですよ。制作には技術が必要でしたから。

ガイド:
どのような構造で音がでるのでしょうか? また、どんな音がするのですか?

折茂:
本体にギターシンセを取り付けています。弦が1本張ってあり、バイオリンの弓で弾いています。今のところエフェクティブなノイズがメイン。このあたりはPEVO1号氏(バチバチソニック)のアイデアと創意工夫によるものです。

005Harry*:
折茂さんが義足になる事は友人として当時とてもショックでしたが、その義足を楽器化したいという話が私の所に来た時は驚きました。しかし、その様に逆境さえも楽しんでしまう折茂さんに私も共感し、仕事としてというより殆ど自分の趣味として楽しんで製作しました。デザインなども私の自由にさせてもらったので作業はやり易かったです。
もしも苦労話があるとすれば、装着しても歩けるギリギリの重さ(軽さ)や、Leg Twoが衣装の邪魔にならない形状をある程度計算した位でしょうか…。立体的に見える様に手作業で様々なアールを削り出しましたが、それは苦労と言うより完成が近付いていく事も楽しめた感じです。

*005Harry=
バチバチソニックのドラマー。現在活動を休止しているPEVOのドラマーでもある。
アルミを絶妙なフォルムに削り出す技術をもつ。折茂昌美用の骸骨マイクも作品のひとつ。

ガイド:
ライヴでもLeg Twoでの演奏を見せて頂きましたが、義足がとてもメカニックであるが故、それがかえって美しいと感じました。表現として難しいのですが、偽の足ではなく、まるで体と一体化した美しいアクセサリーのような。

折茂:
ありがとうございます。最大の褒め言葉です。
義足は隠すもの、というのが今の日本の風潮なので、こうしたデフォルメした表現がネガとポジを逆転させる効果があったら楽しいと思います。

デモタイトルは「バーキン風」
 

ガイド:
電子音の使い方が気持ちいい「メロディ」からはヨーロッパ・・・フランスあたりのデカダンなポップスの香りがします。何かモチーフがあって作られた曲なのでしょうか?

KC:
最初、折茂さんからもらったデモのタイトルが「バーキン風」でしたので(笑)。前半は折茂さん、後半は僕が作りました。アレンジは「バーキン風」という縛りからちょっとだけ逃れる、というのが課題だったかもしれません。

折茂:
今後、デモにタイトルを付けるときは気をつけます(笑)たしか昨年の猛暑の中、作った曲です。デカダンな午後でしたよ。

ゲンスブールのカヴァー
 

ガイド:
前作では全てオリジナルでしたが、今作ではカヴァーも織り交ぜられていますね。9曲目の「Bonnie and Clyde」は、没後20年で映画「ゲンスブールと女たち」も公開中のセルジュ・ゲンスブールの作品ですが、やはりゲンスブールはお好きなのでしょうか?

KC:
好き!ではありますが、思い入れはあまりないです。(日本の好きな歌謡曲作家ぐらい)「Bonnie and Clyde」ということで、歌はもちろんのこと、めったに弾かないギターでも(無理やり)コンビを組みました。左が折茂さん、右が僕です。

折茂:
「Bonnie and Clyde」ではLeg Two制作者でもあるHarry氏にドラムをお願いしました。生ドラム。ドラム以外全員ヘタっていう(笑)…

ニューウェイヴな「はこ」
 

ガイド:
個人的に一番好きな曲が「はこ」。スピード感と情念が入り混じった感じ。やっぱりニューウェイヴの魂を感じると言うか・・・ 最初、“はこ”って何を指しているのだろうと思ったのですが、何度が聴いている内になるほどと。

KC:
Shampooをやるときは、何かしらニューウェイヴっぽいことを意識しているのかもしれません。とくにこの曲はニューウェイヴっぽいと思います。整合性に欠けるところを勢いで突破!みたいな。ただ、ギターバンドでならともかく、打ち込みでこういう感じを出せるようになったのは、21世紀に入ってShampooに参加してからです。

折茂:
「はこ」はShampooのごく初期の曲ですが、今回KCさんによるリアレンジ、4D-mode1の横川理彦さんにバイオリンを弾いていただきました。

30年ぶりの関西ライヴ
 

ガイド:
shampoolive

Shampoo Live

今回、5月21日の難波ベアーズでのレコ発ライヴも見せて頂けて、感激です。関西でShampooのライヴが2011年になって見れるとは、思っていませんでした。関西はP-MODELのツアーにShampooとして参加して以来、30年ぶりだったとの事。久しぶりの大阪でのライヴはいかがでしたか?

折茂:
それはもう楽しかったですよ!お客さまもベアーズのスタッフもみんな温かくて、いいムードの中でできたことに感謝しています。こちらも30年ぶりなら、お客さまも「高校生の時に見ました」とか言って来て下さる方もいて、お久しぶりです、みたいな(笑)。また、今まさに高校生のような若いお客さまもいらっしゃって、なんとなく不思議な既視感を感じました。

今後の予定
 

ガイド:
今後の活動予定や豊富についてお聞かせください。

折茂:
まずは今月、6月27日に高円寺HIGHにてライヴがあります。
それ以降は未定ですが、今後はライヴの形態に少しバリエーションをつけることも考えてみようかと。現サポートメンバー(PEVO1号、ロミーナ)にさらに人を加えて賑やかバージョンとか、KCさんと私だけでしっとりバージョンとか。自分一人だけというのもアリかもしれません。

CTO LAB. Presents Tokyo Outbound #01
高円寺HIGH 2011.6.27(MON)
18:30open/19:00start
¥2,500/¥3,000

<LINE UP>
-Live-
CTO LAB.(岡田徹+イマイケンタロウ+Polymoog)
Shampoo
(M)otocompo

-Guest Act(Mini Live)-
宇田道信(ウダー)
tenorierie(テノリエリ)
ヒトリミサキ

【リンク集】
Shampoo公式HP
折茂昌美ブログ 
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