糖尿病/プレ糖尿病・糖尿病予備軍

糖尿病の初期症状・早期発見に役立つ前兆とは

糖尿病の初期症状を正しく知り、チェックすることは大切です。いわゆるメタボ健診とも言われる特定健康診査などで糖尿病予備群と言われた人は、自分が感じている不調が糖尿病の前兆となる初期症状なのではないかと気になることと思います。糖尿病の初期症状について、具体的に解説します。

執筆者:河合 勝幸

糖尿病の初期症状……無自覚でも軽症とは限りません

不安な男性

オーストラリア糖尿病協会は、「人生は40から始まる。糖尿病も同じように」というフレーズをキャンペーンに用いました。糖尿病の症状には注意が必要です。

糖尿病合併症の予防には、早期発見・早期治療が決め手です。40歳を過ぎたら、定期検診と自分自身のコンディションへの気配りが大切。2型糖尿病はなかなか自覚できないものなのです。

一口に糖尿病と言っても、1型糖尿病のように、風邪のような症状の後から突然に、あるいは女性なら妊娠中に体調が急変して1型糖尿病が見つかる場合もありますし、2型糖尿病のように10年前以上に発症しているのにもかかわらず、ほとんど症状に気付かないままに大事な年月を過ごしてしまうものもあります。

症状のない期間は決して「軽症」を意味しているのではありません。2型糖尿病と新たに診断された人の2人に1人は、すでに慢性合併症の初期の証拠が見られるとさえ言われています。劇的に発症する1型糖尿病では合併症が隠れていることはありません。

糖尿病の症状……尿の増加・喉の渇き・体重減少

  • しきりに多量の尿が出る
  • やたらに喉が渇く
  • 何もしないのに体重が落ちてきた
これらは糖尿病の典型的な症状です。こういう症状があって、空腹時血糖値126mg/dl以上、または随時血糖値200mg/dl以上、またはHbA1C 6.5%以上であれば、糖尿病と診断してよいことになっています。症状がなくて血糖値のみの判定の場合、別の日に行った2回以上の検査の結果を見て診断されます。

上記の3症状は高血糖のサインなのです。血糖値を測定すれば、まず間違いなく250mg/dl以上あるでしょう。

糖尿病の高血糖が及ぼす全身症状

健常者は食後でも血糖値が140mg/dlを超えることはまずありません。さて、インスリンの欠乏あるいは作用不足によって糖尿病になると、血糖値はどのくらいまで上昇するのでしょうか? 驚くことに1000~2000mg/dlぐらいになることがあります。

2型糖尿病者が高血糖で意識障害を起こす「高浸透圧高血糖症候群」と言われる糖尿病昏睡があります。独り住まいや介護施設に居る、ケアが不十分な高齢者が起こしやすいもので、薬剤や脱水、感染症などで血糖値が600~1500mg/dlにも上昇して意識を失うことがあります。3人に1人は糖尿病とは診断されていない隠れ患者なので、突然起きる、とても危険な状態ですね。

そんな極端な例でなくても、高血糖は全身にいろいろな影響を及ぼします。

ただ、高血糖による体調不良はとても言葉で表現するのが難しいことがあります。以下に症状例を挙げますから、なるべく医師に具体的に伝える習慣をつけてください。症状の多くは高血糖のせいだけで、必ずしも糖尿病だけに起きるものではないからです。

■ 口の渇きと頻繁な排尿
血糖が高くなると血液がシロップのように濃くなります。脳はこれを脱水状態と判定して水を飲んで薄めるように指令します。そこで、どんどん水を飲んで、からだは腎臓から尿として大量に排泄するようになります。誰でも経験する悪夢の始まりですね。

これはかなりひどいことになることもあります。高血糖の時は体に大切なエネルギー源のブドウ糖が取り込めないので、なぜか砂糖入りの甘いソフトドリンクを飲みたくなります。こうなると癒やすことができない渇きに苦しむことになります。飲む程にますます喉が渇きます。マイルドな渇きは食べ過ぎやインスリンの単位不足でも日常的に起きています。エスカレートしないように血糖を測りましょう。

多尿と頻尿は必ずしも同じではなく、たびたびトイレにいっても少量の排尿だったり、特に排尿時に痛みがあったり、血が混じっていたり、なかなか尿が出てこなかったりしたら尿道炎かも知れませんし、男性の場合は前立腺の問題かも知れません。

また、自分は日本茶が好きだからとか、ビールが大好物だからと思い込んでいると、口渇・多尿のサインに気づかないこともあります。

■ 視力がぼやける
高血糖による視力異常はちょっと怖い思いをすることがあります。糖尿病網膜症のことで医師から脅されているからですね。でも網膜症は何年にもわたる高血糖の結果なので、数年の糖尿病では心配のしすぎかも……。

数日以上の高血糖が続くと眼のレンズが膨らみ、厚みが増すことがあります。つまり、老眼鏡を掛けたような状態です。多くの場合は血糖コントロールをよくすれば数日で改善しますが、レンズが完全に元に戻るには6週間以上かかるそうなので、注意しないといけません。

■ 脱力感
糖尿病による疲労感や脱力感は高血糖や低血糖の時に現われる症状です。低血糖では別の低血糖症状が伴いますからすぐに分かりますが、高血糖(つまり、インスリン不足でエネルギー源のブドウ糖が筋肉に取り込めない)の脱力感は「くるまのガス欠」のようなものです。

マイルドな症状では、「年だから」「過労気味」などと納得しがちですが、糖尿病のある人は血糖測定をすると分かります。病気の時に脱力感があったら高血糖のリスクに注意しましょう。

■ 体重減少と空腹感
インスリン不足で高血糖になって、それが尿糖として食べた炭水化物がどんどん体外に出てしまうと、結果的にカロリー不足になります。また、体はブドウ糖が取り込めないと、脂肪を分解して水溶性のケトン体としてブドウ糖代替エネルギー源にしたり、筋肉のタンパク質を分解してブドウ糖を生成するようになります。ケトン体の一部は呼気中に排泄されるので、呼気(吐く息)がフルーツ臭を感じさせることもあります。いずれにしても高血糖がひどいと体重が減ります。

高血糖症状の口渇、多尿よりも一般的ではありませんが、高血糖でやせてくるのはとても悪い状態です。

さらに、高血糖は免疫力を下げて感染症に罹りやすくします。また、思考力にも悪影響を与えます。神経障害の痛みを増悪することも確かです。

高血糖が体に悪いのは承知していても、説明がつかない高血糖になることがあります。そんな時は一つひとつの事柄よりも生活のパターンの認識から解決に近づくことがありますよ。
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