今月(平成23年2月)2日~4日頃、新聞各社により「東京都中央区で路面電車を計画」といった報道がされていました。銀座~晴海間の約3キロに次世代型路面電車を整備するというもので、20年代前半に開業した後、東京駅方面などへの延伸も検討されるようです。まだ来年度予算案に調査費が盛り込まれた段階で、これが本当に実現するかどうかは分かりませんが、将来の都市交通のあり方を含めて、計画が順調に進むことを期待したいものです。

路面電車は明治28年に京都で初めて登場してから全国に広がり、昭和7年には65都市82事業者(国土交通省道路局資料による)で営業運転がされていたのだそうです。その中の1都市である東京でも、最盛期には41系統が運行され、都心部を網の目のように走っていたとか。高度成長期より前の東京の写真では、背景に路面電車が写っているものをよく見かけます。

しかし、昭和40年代からの急速なモータリゼーションや、路線バス、地下鉄の整備に伴い、路面電車は次第に邪魔者に。全国で路線の廃止が相次ぎ、現在残っているのは17都市19事業者(平成22年3月末時点)のようです。東京都心部でも昭和42年から47年にかけ、早稲田線(現、都電荒川線)だけを残して他はすべて廃線となりました。都内では東急世田谷線も残っていますが、大半は専用軌道を走るため「路面電車」というイメージは薄いでしょう。

都電荒川線 早稲田駅(新宿区)から三ノ輪橋駅(荒川区)までの12.2km

都電荒川線 早稲田駅(新宿区)から三ノ輪橋駅(荒川区)までの12.2km


しかし、人々の生活スタイルの変化に伴い、乗降の容易性(車両の超低床化や軌道・電停の改良など)によるバリアフリー化や快適性、静粛性、環境負荷の軽減などを考慮した「次世代型路面電車システム」によってこれが再評価され、全国の都市でも路面電車の見直し機運が高まっているのだそうです。

それを考えながら改めて街を眺めてみると、路面電車の運行が可能な道路、路面電車によって公共交通を補完できる都市は全国にいくつも存在することでしょう。実際に複数の都市で「次世代型路面電車システム」の導入が検討されているようです。新しい路面電車の開通によって利便性が大きく向上したり人の流れが変わったりする都市も、これから次第に増えていくことが考えられます。もちろん都市の景観も大きく変わることでしょう。これらは不動産の価格や資産価値にも少なからず影響を及ぼすに違いありません。

一方で、「次世代型路面電車システム」の導入を検討しながら、すでに断念した都市もいくつかあるようです。建設コスト(自治体負担)など財政面の問題だったり、既存の道路幅や交通量との兼ね合いだったり、その理由はさまざまでしょうが、ただ造れば良いという問題でないことは確かです。自治体の都市計画の中に位置づけられる「次世代型路面電車システム」ですが、国がもっと積極的に財政支援をしても良いように感じられます。国土交通省による導入補助事業も行なわれていますが、世間にはあまり知られていないのが実情でしょう。

豊橋鉄道市内線 愛知県内に残る唯一の路面電車

豊橋鉄道市内線 愛知県内に残る唯一の路面電車


ただし、新しく路面電車を整備するときには、地上給電や燃料電池による架線レス化を図るなど、空中に架線を張りめぐらすことはないように願いたいものですね。

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