妊娠・授乳期の薬と健康/妊娠・授乳期の薬と健康

妊娠中・授乳中の花粉症対策!薬は使って大丈夫?

妊娠中・授乳中で花粉症に苦しむ方も多いはず。ほとんどの点鼻薬、点眼薬、アレグラなどの抗アレルギー内服薬は使えますが、注意が必要な面もあります。今回は妊娠中・授乳中の花粉症対策についてお伝えしようと思います。

赤岩 明

執筆者:赤岩 明

妊娠・出産ガイド

妊娠中・授乳中でも花粉症の薬は使える

 
辛い花粉症の症状。妊娠中・授乳中だからといって我慢する必要はありません

辛い花粉症の症状。妊娠中・授乳中だからといって我慢する必要はありません


妊娠中・授乳中で花粉症もちの方にとって、辛いシーズンをどう乗り切るかは大問題。例年、花粉症治療で医療機関を受診していらっしゃる妊婦さんや授乳中のママは、担当医を受診して妊娠・授乳期であることを伝え、自分の体質に合った方法で治療しましょう。

ほとんどの点鼻薬・点眼薬、抗アレルギー内服薬は、医学的に必要であれば用量・用法を守って使用できますが、注意が必要な点もあります。医薬品に頼りたくない方、症状の軽い方には、代替医療(医学的治療を補完する対策)が有効な場合もあります。
   
<目次>
 

花粉症はどんな方法で診断する?

花粉症は、花粉の飛散シーズンに一致した鼻炎症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)や眼症状(かゆみ、流涙)から診断します。症状の増悪、生活習慣、ストレス要因などの問診が重要です。

血液検査による診断は、スギ、ヒノキ、ハウスダスト、ダニ、ブタクサ、カビなど10種類ほどの候補からアレルギーの原因物質を特定する検査ですが、問診で明らかな場合には行いません。ただし、減感作療法を行う場合にはアレルギー物質の特定が必要です。
 

妊娠中・授乳中の花粉症はどのように治療をする?

妊娠・授乳期の花粉症。症状に応じて使用できる処方薬

妊娠・授乳期の花粉症。症状に応じて使用できる処方薬

例年、医療機関で点鼻薬、点眼薬、抗アレルギー内服薬、漢方薬などの処方で対処できている妊婦さん、授乳中のママは、かかりつけの医師に相談すれば、ほとんどの場合、同じ薬を処方してくれると思います。

妊娠中・授乳中は、指示された用量の範囲で症状の増悪に従って薬を増減します。使用経験のない薬は成分が合わないこともあるので、できれば使いません。

また妊娠・授乳期に初めて花粉症症状を経験する方は、医師と十分に相談の上、治療を開始します。
 

妊娠中・授乳中に処方してもらえる花粉症の治療薬

以下の薬は、妊娠・授乳期にも、医師の判断でしばしば処方されます。
  • 内服薬
    アレグラ、アレロック、アレジオン、クラリチン、ジルテック
  • 点鼻薬
    フルナーゼ、ナゾネックス、アラミスト、インタール、ザジテン
  • 点眼薬
    パタノール、リボスチン、インタール、リボスチン、ザジテン
  • 漢方薬
    小青竜湯(ツムラ・クラシエ・コタロー)
例年、鼻閉症状が強く、口呼吸になり日常生活が不自由になるような重症の方は、花粉が飛散し始める前に、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。花粉の飛散開始前から、内服薬とステロイド点鼻薬を併用し、鼻粘膜の炎症を予防します。ステロイド点鼻薬も妊娠・授乳期に使えます。

眼症状に使う抗アレルギー点眼薬は、どの科でも処方しますが、重症の場合に使われるステロイド点眼薬は、眼科専門医の診察・判断が必要です。

薬の使用中、授乳の中止を指示されることがありますが、それは、標準的な判断ではありません。授乳を続けられる処方をお願いしましょう。医師が授乳期の処方に慣れていない場合は、かかりつけの産科医に相談しましょう。

【参考】眠くなりにくい花粉症の薬の選び方…眠気と薬の関係
 

花粉症の市販薬は使ってもいい?

例年、医療機関を受診せずに市販薬で対処されていた方は、注意書きを読み、用法・用量を守れば、妊娠中・授乳中でも使用可能です。ただし次のような注意が必要です。
  • 市販薬の抗アレルギー薬成分は、処方薬に比べ、眠くなる成分が多い
  • 市販薬には数種類の成分が含まれ、処方薬で使わない成分も入っている
  • 市販の点鼻薬、点眼薬の使いすぎは、粘膜の炎症を増悪させることがある
症状が辛いときの非常用として、1シーズンで内服薬、点鼻薬、点眼薬がそれぞれ1箱程度で済む方には市販薬も使えるでしょう。継続して治療が必要な方は医療機関を受診することをおすすめします。

【参考】花粉症の薬、市販と通院のどちらが経済的?
 

妊娠中・授乳中に「スギ花粉症の減感作療法」は受けられる?

重症のスギ花粉症の関心を集めているのが、2014年に保険承認されたスギ花粉舌下液による減感作療法です。症状が出ない程度のごく微量のアレルギー原因物質を繰り返し投与し、身体を慣れさせてアレルギー反応を減少させる治療ですが、長期間の通院が必要です。

すでにこの治療を継続している方は、妊娠中・授乳中も治療を継続できますが、中断される方もおられます。治療の開始時に注意が必要なので、妊娠中・授乳中にこの治療を新規に始めたりはしません。専門医に相談しましょう。
 

妊娠・授乳期に注意する治療、避ける治療って?

■予防的治療
以前は、花粉症シーズンの2週間程前から予防的に薬を使用するよう勧められましたが、現在は症状が出始めてからで良いとされています。特に妊娠中・授乳中は、薬が必要な場合も最小限で済ませるのが原則。重症の方以外は、生活上の花粉症対策を心掛け、花粉の飛散が多い日など症状のあるときに処方薬を頓服します。

■レーザー手術法
鼻粘膜のアレルギーを起こす部位に、レーザー照射してアレルギー反応が起きないようにする手術です。治療そのもの妊娠中・授乳中も可能な方法ですが、過去に、この治療を受けた経験のある妊婦さんに「妊娠中でもレーザー手術をうけますか?」とお聞きしたら、「レーザー照射して、1週間ほどの間、半端じゃない鼻水が出て苦しかったからやりません」とおっしゃっていました。もし行うなら、妊娠の前に計画的に行うべきでしょう。

■徐放性ステロイド注射療法
花粉症のシーズン初めに一度、筋肉注射したら治ると、口コミやネット情報でも紹介されています。妊婦さんの中にも例年この治療を行っている方がおられます。これは徐放型ステロイドの注射療法で、花粉症の標準的治療ではありません。副作用の危険性が高く、妊娠初期の胎児への安全性は判っていません。胎児奇形などの問題はなかった方もおられますが、妊娠中・授乳中には絶対に行わない治療法です。

その他、妊娠・授乳期のアドバイスとしては、基本的には例年、自分に合った方法があれば、あまり新しい治療法を試さないこと。花粉症に有効とされるアロマオイルの中には、妊娠中には使えないものもあること、ネット情報には巧みに高価な商品へ誘導するサイトがある点などに注意しましょう。
 

日頃の花粉症対策がまず大切!

■生活上の注意 【スギ花粉の回避】
  1. 花粉情報に注意する
  2. 飛散の多い時の外出を控える
  3. 飛散の多い時は、窓・戸を閉めておく
  4. 飛散の多い時は、外出時にマスク・メガネを着用する
  5. 外出時、毛織物などのコートは避ける
  6. 帰宅時、衣服や神をよく払い入室する・洗顔、うがいをし、鼻をかむ
  7. 掃除を励行する
(アレルギー疾患 診断・治療ガイドライン2010より)

花粉症対策で一番大事なのは、花粉に接触しないことです。最近は、空気清浄機、マスクの性能も向上しています。就寝用、ぬれフィルター、息ラクフィルターなどの優れもののマスクは、妊娠中・授乳中の方も、ぜひ試してみましょう。

【参考】
花粉が服に1万個!?静電気防止スプレー等おすすめ対策方法
花粉の掃除方法!家の中の花粉を徹底除去するための10カ条
 

薬に頼らない花粉症対策もある

医薬品に頼りたくない方、症状の軽い方は代替医療(医学的治療を補完する治療)を試してみる価値はあります。

雑誌、ネットなどでは、甜茶、黒豆、レンコン、乳酸菌、ハーブティー、アロマ、漢方など、さまざまな方法が紹介されています。人によって効果は違いますが、症状が改善する場合もあります。

専門家の調査でも、医薬品による治療だけでは、満足できない人がいることが判っています。代替医療を活用し、医薬品の使用量を減らせれば良いことです。

【参考】
自分でできる目・鼻の症状改善法
花粉症に効くツボは? 東洋医学での花粉症対策法
即実践! 花粉症に役立つアロマケア

【関連記事】
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