革靴の靴底、トレッドパターンに機能美を求める

ダイナイトソールとは…靴底に特徴的な溝を持つ革靴・紳士靴

ラバーソールと言えば「のっぺり」よりもこの「ギザギザ」や「凸凹」を思い出される方も多いでしょう。機能面だけでなく、心理面でもこれがあると確かに頼りになる存在です

素材が天然ゴムか合成ゴムかの大きな違いはあれ、多くの方がどちらかのラバーソールを一度は使用した経験があるのではないでしょうか。ただ、どちらも「紳士靴用のラバーソール」と言われて最初に思い浮かぶものでは、今日ではないのかもしれませんね。

なぜなら、紳士靴の範疇ではそれら以上に「よりラバーソールらしい顔立ち」を有しているものの方に、人気がすっかり定着してしまっているからだと思います。顔立ちとは、言うまでもなく底の下に刻まれた溝=トレッドパターン。靴の使用目的に合わせて製作者が成分の配合比率と共に悩みに悩み抜いて完成させ、更に改良を重ねたものなので、これにはいずれも独創的な表情があり、印象に強く残るのは間違いありません。

ということで今回は、そのような特徴的なトレッドパターンを有したラバーソールの代表例を、幾つかご紹介します。近年では「この底が付いているから買う!」とか、「オールソール交換の時には、必ずこれに替えてもらう!」みたいな固定ファンも登場しているこの分野。微妙な違いを知っておいて損はしないはずですよ!
   

イギリスの紳士靴でお馴染み、ダイナイトソール・リッジウェイソール

ダイナイトソール

イギリスのドレスシューズ用のラバーソールと言えば、まずこの「ダイナイトソール」を思い出さない訳にはまいりません。シンプルな割に機能は必要十分。原型の登場からもはや100年を超えたものの、その魅力は未だ衰えません

趣のあるトレッドパターンを有した合成ラバーソールのうち、タウンユースに容易に活用できる代表例と言えば、「ダイナイトソール」と「リッジウェイソール(Ridgeway Sole)」でしょう。

共にイギリスのハルボロラバー(Harboro Rubber)社が、この会社の工場がかつて昼も夜も忙しく稼働していたのに起因する「Dainite」のブランド名で製造するもので、当然ながらイギリス靴のラバーソールとしてお目に掛かれる確率が高いものです。ただ最近では、特に前者を日本のメーカーが採用するケースも増えてきており、日本にも多くの愛用者・支持者がいる事を伺わせます。

前者は原型の登場が100年余り前の1910年で、今日でも当時とほぼそのままの形状で製造されています。底面に施された幾つかの円い凹凸でグリップ力を与える形状から「スタッデッドソール(Studded Sole。 「Stud」は英語で「鋲を打つ」とか「点在させる」の意味)」なる正式名称を持っているのですが、このブランドを代表する底材としてあまりに有名であるが故、もはや「ダイナイトソール」なる俗称の方が通りが良くなってしまいました。

側面からはその凸凹が見えないようスッキリした印象に仕上げており、内羽根式の靴やデザイン次第ではスリッポンにも違和感なく装着できるが故、確かに雨用のドレスシューズの底材としては最適なものの一つでしょう。ギザギザが少ない分、泥などの除去を行い易いのも実は隠れた長所です。
 
リッジウェイソール

ダイナイトソールをもう少しカジュアルな位置付けにしたのが、この「リッジウェイソール」でしょう。写真の靴は大分履き込んでいるので解り辛いですが、細かいフィン状の襞のお陰で、グリップ力は強くなる一方で、履き心地は僅かにソフトになります

一方、英語の「あぜ道」の名を冠した後者も登場は1930年代と古く、こちらも当時とほぼそのままの形状で製造されています。その名の通りあぜ道状の「ひれ」を細かく配する事で、グリップ力を強め悪路への対応力をより高めているのが特徴です。

点ではなく多数の「線」で足を支えることになるので、履き心地自体は前者に比べソフトに感じるものの、やや押しの強い顔立ちでもあるせいか、こちらは外羽根式の靴など多少カジュアル寄りのスタイルを持つドレスシューズに多く採用される傾向にあるようです。
 

より頑強さを求めたラバーソール、コマンドソール・ビブラムソール

コマンドソール

ハードユースに耐えるラバーソールと言えば、何と申してもこの「コマンドソール」でしょう。もともとは登山用途に開発されたものですが、文字通り戦闘靴用にも転用された実績を誇ります。重さも慣れれば気になりません

上記で採り上げた2種類のラバーソールは、アスファルトの道でも土の道でも上手く対応できる要素を持って開発されたと思われるものですが、例えば山道や岩場などより条件の悪い路面も想定して製造されているものも、勿論存在しております。その代表例が「コマンドソール(Commando Sole)」と、俗に「ビブラムソール(Vibram Sole)」と呼ばれているものでしょう。

英語で「突撃隊」や「ゲリラ隊」を意味する前者は、イギリスのITSHIDEブランドを代表する製品です。原型はあくまで登山ブーツ用のソールとして1940年に登場したもので、やがてその性能が認められ、その年代の終盤からはイギリス陸軍省に文字通り軍用ブーツのソールとして大量に納入されました。

例えば朝鮮戦争では実際に戦闘活動に用いられた記録が残っています。足アタリが硬く、しかも重いソールではありますが、深く刻まれたトレッドパターンのお陰で路面状況に関わらず安定した歩行が可能な、頼り甲斐のあるラバーソールであるのは間違いなく、例えばTricker’sのカントリーブーツ等に正式採用されているのも納得です。
 
ビブラムソール

コマンドソールと似ているものの、この種の「ビブラムソール」も絶対に外せません。凸凹がソールの端まで続いているので、視覚的にはよりカジュアルかつ重々しい雰囲気が強まります。ビブラムはイタリアのメーカーですが、アメリカの靴にも不思議と似合う!

後者の原型は、イタリアのビブラム社(Vibram。創業者であるVitale Bramani氏の名前を略したもの)が、同じく登山ブーツ用のソールとして1937年にタイヤメーカーのピレリ(Pirelli)の協力を得て開発したものです。ビブラム社は現在、世界最大のラバーソールメーカーであり、製造している底材も極めて多岐に渡るものの、その代表例であるRocciaソールや Montagnaソールなど、今でも原型に近い形状を持つものを慣用的に「ビブラムソール」と呼んでいます。

耐久性や履き心地は前者とあまり変わらないと思いますが、ソールの端までトレッドパターンが刻まれ、側面からもそれがはっきり見えてしまうため、前者以上にカジュアル或いは重厚な雰囲気を持った靴との相性に優れていると言えるでしょう。また、これらのソールは本国イタリアの靴以上に、アメリカのブランドの靴に不思議と似合う傾向にあります。ビブラム社が長年アメリカでも製品を製造しているからかも?

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