今日の続きが明日。明日は今日と一緒。同じ電車に乗って、同じ仲間と働いて……茫洋と続く感覚に襲われたら、細かく、日々や、自分を観察してみましょう。そこには常に蠢く命の姿が。生きることは変わること。細胞の循環、時代の変化、人やものごととの出会い。私たちは常に、何らかの変化を抱えています。

私たちは、安定を求めて社会を築き上げています。それと同時に、動物であり、それは常に環境なり、己の肉体からの揺らぎを受け、変化し続ける不安定性を抱えています。

社会の中にどっぷりと浸かると見えなくなる、もしくは見たくない不安定も、退屈になってしまった社会的日常から見直してみると新しい発見があるかも……。さて、15カ国21組のアーティストが表現する「変容」とは?

状況に応じて変化し続けるということ

マシュー・バーニー

マシュー・バーニー 《クレマスター3:ファイブ・ポインツ・オブ・フェローシップ》2002 Collection of the Artist, Courtesy: Gladstone Gallery, New York

イェール大学で医学を修めたあと、美術と体育を学び、フットボールの特待生、ファッションモデルを経て、映像や彫刻の作家になったマシュー・バーニー。

陣現の身体における内部と外部の関係性をテーマにした、長編5部作「クレマスター」シリーズは、彼の代表作です。

クレマスターとは、クレマスター筋から来ているのでしょう。睾丸をつつんで温度変化によって伸縮しこれをひっぱりあげたり、おろしたりする筋肉を指しています。身体内の、状況に応じて変化し続ける非決定性の美学を託していると言えます。

今回は『クレマスター3』(2002年)の映像や写真、彫刻作品などを出展。

私は誰? 決めるのは誰?

バールティ・ケール

バールティ・ケール 《狩人と預言者》 2004 Courtesy: the Artist and Hauser & Wirth

パールティ・ケールによる『狩人と預言者』は女性の身体が動物へと変化する「ハイブリッド・シリーズ」のひとつ。

己が誰であるかは、本来、自分が分かっていれば良い事。けれど、他人と生活を構築していく集積体である社会は、それでは成り立たない。あなたが誰かを証明する役割は社会から渡されるラベル(性別、未既婚、年収、職業など)や、周囲の人々からの証言(かっこいい、背が高い、など比較から生み出される数多くの形容詞)無くして、有り得なくなったのです。

ところが、私たちは社会的な存在でもありますが、動物でもあります。身体の一部を動物に変容させた女性の姿は、身分証明や他人からの言葉に固執し、却って弱体化する自我に警告を浴びせかけています。

4点の彫刻と、平面作品を出品。