民放以上に過激? なNHKのバラエティー

NHK教育「きらっといきる」ホームページ

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いま、コアなお笑いファンの中で、旬な話題になっているバラエティーがあるのをご存知でしょうか。深夜枠? ローカル番組? いえいえ、全国ネットでゴールデンタイムに絶賛放送中の番組です。

番組タイトルは「バリバラ」(「バリアフリー・バラエティー」の略)。NHK教育テレビの福祉情報番組「きらっといきる」(毎週金曜午後8時~8時30分)の枠で、毎月最終週にオンエアされる、これまでになかった新しい形のバラエティーです。

番組ホームページからそのまま引用すると、「日本のテレビ史上初の障害者バラエティー番組」。バラエティーを通してバリアフリーを考えるという願いが、タイトルに込められてます。

出演は「きらっといきる」同様、さまざまな障害のある人々ですが、「バリバラ」の中では、笑いを生み出すパフォーマーとして大活躍を見せているのが最大の特徴です。さまざまなロケ企画のVTRを、スタジオのMCたちが見て感想を話し合うスタイルは、まさに民放バラエティーのノリ。しかし、その内容の濃さは、これまでのバラエティーの常識を覆すものばかりです。

例えば、「お 弟を犬にしてしまった」など、実際の幻聴、妄想体験をもとにつくった「幻聴・妄想かるた」。重い言語障害のある人を講師に迎え、塾生たちが講師の指示を懸命に聞き取ろうとする「最強ヘルパー養成塾」などなど。福祉情報番組の枠だからこそ成立する、ハイパーなバラエティーだと思います。

そんな「バリバラ」が、きたる12月4日(土)午後8時から、なんと2時間の特番「ETVワイド ともに生きる」として、企画満載でお目見え。サブタイトルは、その名も「笑っていいかも!?」。

今回は「バリバラ」のチーフプロデューサー日比野和雅氏に、画期的なバラエティーが誕生した経緯から、2時間特番の見どころまで、たっぷりと話をうかがいました。福祉番組の枠内で展開している企画というよりも、バラエティーとして視聴者に笑ってもらえる番組を目指していることが、しっかり伝わってきます。


障害者と一緒に笑いあえる番組を

「バリバラ」司会者たち

「ETVワイド ともに生きる~笑っていいかも!?」司会者たち (C)NHK

---10年以上の歴史を持つ「きらっといきる」の枠内で、今年に入って「バリバラ」をスタートさせた成り立ちと、新たな番組の中で広く視聴者に伝えたいテーマについてお聞かせください。

日比野 これまで、メディアにおける障害者の描き方は、「頑張っている、大変、感動」といった画一的なものが大半でした。ここ数年、番組では、障害者の等身大の姿をどのように伝えるか模索してきた結果、これまで描かれなかった障害者のエンターテインメント性を打ち出したバラエティーに挑戦することにしました。

「笑い」は人々の共感を呼び、そのあとで考えさせる力を持っています。バラエティーから見えてくる福祉の問題も多々あるはず。障害(者)を笑うのではなく、障害者と一緒に笑いあいながら、バリアフリーについて考えていきます。

---4月にスタート以来、さまざまな反響が寄せられたことと思います。

日比野 最初に心配していた「障害者を笑いものにしている」というご意見は、思いの外少なく一部でした。それも批判的なご意見は健常者から寄せられたものが多く、「障害者が見るときっと嫌な思いをする」「『笑っていい』と言われても笑いにくい」といったものが見られました。 一方、障害者(もしくはその家族)からは驚くほど支持をいただき、「障害者と健常者の見えない壁が取っ払えそうだ」「障害者が『障害』を個性に変えている姿に本当の意味でのバリアフリーを感じた」といったご意見が寄せられました。

福祉番組という枠を打ち壊したい

「笑っていいかも!?-バラエティからバリアフリーを考える-」での1シーン。<脳性まひコント>

「ETVワイド ともに生きる~笑っていいかも!?」での1シーン。<SHOW-1グランプリ> (C)NHK

---斬新なバラエティーだけに、制作される方々のご苦労も並々ならないものがあるのでは。また、それ以上にオンエアした後のやりがい、達成感も大きなものではないかと思います。

日比野 ドキュメンタリーを作ってきたスタッフが、バラエティーに挑戦するのはまったく初めてで、どう面白く見せるか、毎回苦労の連続でした。ただ、ドキュメンタリーの経験は貴重で、ディレクターたちには物事の本質を見極めようという姿勢が備わっています。だから、単に面白いだけではなく、その先にあるバリアフリーについても障害者を交えて議論します。そのためこれまでの企画会議には、膨大なアイデアが出されましたが、採用されるのはその中のごく一部です。

達成感については、正直まだまだ走っている真っ最中という感じで、成し遂げたという余韻にひたってる状態ではないですね。

---12月4日に放送される特番の内容、見どころについて、詳しくお聞かせください。

日比野 まず、人気放送作家・鈴木おさむさんとバリバラの障害者がタッグを組んで「日本初の障害者によるドッキリ」を企画しました。また、障害者同士によるかつてない肉弾戦(?)が展開される「バリバラ大運動会」も大注目です。スタジオでは漫才・コントなどを障害者が披露する「お笑いパフォーマー決定戦!SHOW-1グランプリ」を開催。バラエティーはバリアフリーにつながるのかも、徹底討論します。

---今後の「バリバラ」についてはどんな展望をお持ちでしょうか?

日比野 福祉番組というと、どうしても閉じ込められた枠の印象がぬぐえません。それを打ち壊すべく、誰が見ても面白いバラエティー番組のレベルまで引き上げたいですね。さらに、イギリスのBBCと連携して、海外展開も図る予定。最終的な目標は、障害者がNHKの一般番組(情報・ドラマなど)や民放のバラエティーに普通に出演できるようになることです。


  「笑えない」という人にこそ見て欲しい

「笑っていいかも!?-バラエティからバリアフリーを考える-」に出演した「ゆーじーず'01」の漫才

「きらっといきる」の「バリバラ」に出演した「ゆうじーず」の漫才 (C)NHK

2時間特番の全貌も、お分かりいただけたことと思います。カンニング竹山、松村邦洋、ザブングルら、民放のバラエティーでもおなじみの芸人も出演しますが、彼ら以上に活躍を見せる、番組発の芸人たちにぜひご注目ください。

はっきり言えるのは、今までにテレビで見たことのない映像満載だということ。ただ、番組のクオリティとは別のところで、障害のある出演者をどうしても笑ったりできない方も、確実にいらっしゃるとは思います。

「バリバラ」の1ファンとして願うのは、そういう方にこそ今回の2時間特番を見て欲しいということ。「障害者を笑うことは許されない」という意識が働いてしまう方は、無理に笑おうとしなくても、自ら進んでバラエティーをやりたかった障害者もいることを認識するだけでも全然OKだと思います。

ただ、2時間にわたって番組出演者の生の声を聞き、全力で行動する姿を見ているうちに、結局のところ、バラエティーで大暴れする芸人たちと比較して、そんなに大して変わらないってことに気づくんじゃないでしょうか。

そこまで行けば、お腹を抱えて笑えるようになるまであと一歩。いずれにしても、これまで有り得なかったバラエティーだけに一見の価値はあるはず。見始めたときに感じていた違和感も、2時間後にはどこかに吹き飛んでしまうんじゃないでしょうか。

<関連情報>
NHK教育「きらっといきる」「バリバラ

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