リーダーシップ/リーダーシップの基本知識

攻めと守りのリーダーシップ……ビジネスのビジョンを考える!

ビジネスの戦略と組織とは不可分離です。今回は、攻めと守りのリーダーシップについて考えてみましょう。攻めの戦略の際は攻めの組織が必要で、守りの戦略の際は守りの組織が必要です。その前提にはビジョンがあります。そして、それに辿り着くための道筋が戦略です。

藤田 聰

執筆者:藤田 聰

キャリアプラン・リーダーシップガイド

攻めと守りのリーダーシップ

攻めと守りのリーダーシップ

攻めと守りのリーダーシップ

戦略と組織とは不可分離です。攻めの戦略の際は攻めの組織が必要で、守りの戦略の際は守りの組織が必要です。その前提にはビジョンがあります。ビジョンは10年後、5年後の理想像で辿り着く目的地。その道筋が戦略になります。戦略を実現するためには、それに適合した組織が必要不可欠です。

企業の中での攻めとは売上拡大を意味し、守りとはコスト削減を意味します。売上拡大に貢献する人はコミュニケーション能力に長けている攻め型の人であり、コスト削減に貢献する人は細かいところに目が行き届く守り型の人です。
 
<目次>
 

企業の発展段階からリーダータイプを考える

企業の発展段階によりリーダータイプは異なる

企業の発展段階によりリーダータイプは異なる

企業の発展段階から求められるリーダー像を考えてみましょう。創業期は0(ゼロ)からの始まるので、兎にも角にも売上を拡大することです。そのためには、攻めのリーダータイプが求められます。仕事柄、ガイドの私は多くの創業経営者にお会いしましたが、ほぼ100%攻め型の人でした。

創業後20年が経過し、従業員も100名程度まで増えました。後継者を選ぶ際には守りのリーダーが必要です。次のステージに上がるためには、組織を有機的に動かすための整合性の高い組織づくりや各種制度設計など、細々としたことがきちんと遂行できる守りに向くリーダーが求められるのです。

ここでよくある失敗が、後継者を自分の同質の攻めタイプに託す場合。人は通常自分と同じ思考行動パターン、同質の方を評価するものです。異質こそが相互補完関係であり、シナジー効果が期待できるのです。

戦略フェーズは守りですが、攻めの組織を作るとうまく機能しません。組織には突出(拡大期)と平準(維持期)のメカニズムがあります。右上がりの直線ではなく、突出(攻め:売上拡大期)と平準(守り:コスト削減)の繰り返しで組織は成長していくものです。
 

攻めの組織と守りの組織

攻めの組織を作るには、まずトップに攻めのリーダータイプを据えること。シナジー効果(相乗効果)を発揮させるのは相互補完関係で組むのが原則なので、直下には守りに向くリーダー(=マネジャー)を据えるべき。その下は逆に攻めのリーダーというように、縦の関係で見るとこの順番が理想的です。

逆に、守りの組織を作るにはまずトップに守りのリーダータイプを据えること。直下は補完関係にある攻め型を据えるべきでしょう。この縦の順番はスキル以上にパーソナリティー(性格特性)が重要です。パーソナリティーを見える化するには、「リーダーシップのタイプ」にある5分以内で測定できるテストを実施下さい。数値化できますので、今後の組織設計やチーム編成の際に参考になります。

組織とは共有するビジョン・目標を目指し、2名以上の単位で構成される集団です。個々人の能力が高くても組織として一丸になっていなければ、なかなか勝利の美酒は味わえません。今年のプロ野球日本一になったロッテは、平均年俸でもわかるように突出したスタープレーヤーは不在でした。しかし、抜群の結束力があり優勝しました。西村監督を中心に、パイプ役として西岡キャプテンが選手達をリード。平均年俸が高いスタープレーヤーを集めても、組織やチームとしての結束力がなければ決して優勝できるものではありません。
 

攻めと守り、どちらが格上?

リーダーにおいて、攻めと守りの優劣はない

リーダーにおいて、攻めと守りの優劣はない

企業内研修やカウンセリングの場面で以下のような質問を受けます。「私は守り型のようですが、攻め型の方がより優れているのではないでしょうか?」

この質問に対しての私は「優劣などありません。重要なのは戦略フェーズとの兼ね合いです」と答えています。

日本人の多くは守り型。攻め型に比べ、確かに表現能力はそれほど高くはありません。堅実でコツコツやるタイプです。「ウサギと亀」に例えると亀のイメージです。きちんと組織を整備し、次の成長ステージまでの布石を敷く上では、守り型の人がトップをやる戦略フェーズなのです。そのメカニズムをきちんと押さえ、戦略と組織が一致していれば組織は突出と平準を繰り返しながら成長・発展していくことができるのです。
 

リーダーシップの技と心

リーダーには技で引っ張るタイプと心で引っ張るタイプが存在します。あなたとどちらでしょうか?両方バランス良く兼ね備えた人は鬼に金棒ですが、通常はどちらかに偏りがち。

では、どちらがより重要かというと心でしょう。技が卓越している人は「できる人」です。できる人にはその人の技を学びに弟子が生まれます。ただし、技のみであれば小さな集団の徒弟関係のようなもので、多くの人を統率するものではありません。

大きな組織を統率するには心が重要です。明確な理念・行動規範を持って、魅力あるビジョンと戦略とリーダーシップによって組織を率います。特に、人間力(人間的魅力や人柄など)や心でリードする人は「できた人」です。
 

マネージャーは「技」でリード、部長職以上は「心」でリード

組織のサイズという観点では、小規模組織の場合は技でリードすることが第一です。大規模組織では職位が低ければ技でリードする、リーダー職や課長職であれば、技>心でリードすること。部長職以上であれば、技<心です。いかに人心を掌握するかです。

実務ベースのリーダーシップ論の第一人者である新将命さんに伺ったところ、課長職はスキル(技)1に対してマインド(心)3、社長職はスキル1に対してマインド10が黄金比率だそうです。職位が上がれば上がるほど、マインドの比重が高くなるものです。

専門技能のみならず、人間力を磨くことも忘れてはいけないことです。そのためには良いメンター(師匠)を持つことと、経営者を中心としたリーダー列伝を読破していくことも面白いでしょう。
 

リーダーシップは性格か能力か

リーダーシップは行動により獲得できる

リーダーシップは行動により獲得できる

リーダーシップは、そもそもあるものなのか否かということを再考したいと思います。

性格特性から、リーダー向きかそうでないかがある程度わかります。そもそもリーダー性を保有している人は潜在的に能力が備わっているといえ、意識しなくても能力を発揮できます。たとえ、備わっていないとしても、組織の中の役割、つまり環境的なもので培うことができます。

教育においてもリーダーシップは機能であり、行動であるということから企業内の研修でリーダーシップ研修が盛んに行われています。目的を持って参加し、リーダーシップ行動を習慣化できれば、結果として能力となります。

つまり、リーダーシップは生来的な影響を受けながらも行動習慣化することで培うことができます。就任当初はぎこちない方でも3年も経過すればきちんしたリーダーシップを執ることができるようになります。

「役割が人を変える」という言葉があるように、組織の中での責任や権限の大きさはリーダーシップ能力開発において非常に重要なもの。かなりの負荷をかけた状態でどの程度のパフォーマンスを上げていくことができるかは経営幹部に昇格する際にレビューされる手法の1つです。

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