人間と犬とでは必要な栄養素は同じですが、そのバランスが違います。愛犬に食事を与えるにも基本を知っておいたほうが、よりその大切さがわかるというもの。あわせて、ドッグフードの与え方などについても頭に入れておきましょう。

犬に必要な栄養素

犬にとって楽しみな食事
犬にとって楽しみな食事。必要な栄養素をバランスよく与えたい。
生きていくのに必要な5大栄養素である「タンパク質」「脂質」「炭水化物」「ビタミン」「ミネラル」。そして「水」は体を構成する大切な要素です。どれが不足しても健康な体を維持していくのは難しくなります。

■タンパク質
タンパク質は骨や筋肉、皮膚、被毛、血管、内臓などを構成するとても大切な栄養素で、血液や神経伝達物質、抗体などもタンパク質がなければうまく機能できません。20種類からなるアミノ酸がたくさん連なることによってタンパク質が形作られていますが、動物の場合10種類程度のアミノ酸を生合成できないので食物からそれらを摂取しなければならず、そうしたアミノ酸は必須アミノ酸と呼ばれています。犬の場合はアルギニンやリジンなど10種類の必須アミノ酸が必要となります。

1日に必要なタンパク質量を人間と犬で比較した場合、年齢や大きさ、状況などによって差はありますが、犬は人間の1.3~2.8倍(成人・成犬の体重1kgあたりにつき)のタンパク質が必要になります。肝臓を例にとると2~3週間で新しいタンパク質と入れ替わっており、このように体中が絶えず新陳代謝をしているので毎日の食事にはタンパク質が欠かせないのです。ちなみに、タンパク質が不足すると痩せてきたり、被毛がパサついたりします。過不足は体に影響しますので、バランスよく与えたいものです。

■脂質
脂肪はタンパク質や糖質と比較して約2倍のエネルギーをつくり出します。その他、脂溶性ビタミンの吸収を助けたり、嗜好性を高めるのにも一役かってくれます。体の中でつくり出すことができず、食物から摂る必要がある脂肪酸を必須脂肪酸と言いますが、それが不足すると被毛や皮膚のトラブル、病気にかかりやすくなる、赤血球の減少、繁殖障害などの症状が出ることがあります。一方で脂肪の摂りすぎは下痢を起こしたり、肥満のもとにもなりますので、やはり適量の脂肪を摂取することが大切です。なお、成犬の場合はアラキドン酸を生合成できますが、子犬では不十分ですので、子犬時期には必須脂肪酸の一つとなります。

■炭水化物
炭水化物は糖質と繊維質で構成されており、さらに糖質はブドウ糖やオリゴ糖などの糖類とでんぷんとに分けることができます。糖質はエネルギー源になり、繊維質は消化管や腸内細菌の働きを活発にしたり、便秘を防いだりします。大きく肉食に偏った犬の食性ですが、膵臓から分泌される消化酵素であるアミラーゼにより加熱したとうもろこしや小麦などのでんぷんは消化することが可能です。ただし、元来肉を消化するのに適した腸のつくりとなっていますので、消化しやすい炭水化物を与えてあげましょう。

■ビタミン
タンパク質や脂質、炭水化物に比べると必要量としては微量ですが、体が機能するにはなくてはならないのがビタミンです。水溶性ビタミンと脂溶性ビタミン(A、D、E、K)とに分けることができ、前者は多く摂りすぎてもいらない分は尿中に排泄されますが、後者は体内に蓄積されてしまうので、摂りすぎによる過剰症には注意が必要です。たとえば、ビタミンAを過剰に摂取すると骨格が正常に発育しなくなったり、ビタミンDの過剰摂取では高カルシウム血症などを引き起こしてしまうことがあります。他の栄養素と同様、適量を与えるようにしましょう。犬の場合はビタミンCを生合成できますので、毎日の食事に積極的に加える必要はありませんが、年齢や健康状態によっては必要となるケースもあります。

■ミネラル
必要量は僅かながら、タンパク質や脂質などと同様、体を構成する成分となる他に、酵素を活性化させたり、体全体の機能を調整、維持するには不可欠な栄養素です。犬は12種類のミネラルを必要としますが、代表的なものはカルシウムやリン、マグネシウムなど。カルシウムを吸収するにはリンとのバランスが大切で、どちらかが過不足になっても弊害が起こります。カルシウム不足では骨がもろくなったりする一方で、過剰摂取はリンや鉄などを吸収しにくくさせます。リンの不足は食欲不振や骨軟化症を招き、過剰摂取はカルシウムがうまく吸収できなくなりカルシウム不足となってしまいます。概ね1:0.8程度のカルシウムとリンのバランスがよいとされていますので、偏りのないように気をつけてあげてください。

■水
体の中で水分は60~70%を占めています。水分は体温を保ったり、栄養を吸収する際や老廃物を体の外へ排出する際にも大切な役割を果たします。いつでも新鮮な水が飲めるようにしてあげましょう。


犬が1日に必要なカロリー

その子の状況などによって調整をする必要がありますが、以下の数式で犬が1日あたりに必要とするカロリー量を計算することができます(あくまでも目安程度にお考えください)。
  • 生後4ヶ月齢まで
    3×(30×体重kg+70)Kcal
  • 生後4ヶ月齢~成犬
    2×(30×体重kg+70)Kcal
  • 成犬(健康)
    避妊・去勢手術をしていない場合……1.8×(30×体重kg+70)Kcal
    避妊・去勢手術をしている場合……1.6×(30×体重kg+70)Kcal
  • 高齢犬など運動量の少ない犬(健康)
    避妊・去勢手術をしていない場合……1.4×(30×体重kg+70)Kcal 
    避妊・去勢手術をしている場合……1.2×(30×体重kg+70)Kcal
  • ダイエット中の犬
    1.0×(30×体重kg+70)Kcal

ドッグフードの与え方

食事は一生を通して同じものを与えていればいいというものではありません。妊娠中の母犬、子犬期、成長期、成犬期、シニア期と、そのライフステージごとに必要とするエネルギーは少しずつ違ってきます。たとえば、子犬の体重が成犬になった時の50%になった頃には約1.5倍、80%になった頃には1.2倍の代謝エネルギーが必要になります。「妊娠・授乳期用」「子犬用」「成犬用」「シニア犬用」など、ライフステージごとに必要な栄養素を満たしたものが売られていますし、「お腹の弱い子用」「アレルギー用」など目的をもったものもありますので、成長段階や健康状態などによって見合ったドッグフードに換えていくようしてあげましょう。

以下に、ライフステージごとにドッグフードの与え方のポイントを。

  • 成長期(離乳期後~1歳まで)
    消化機能自体もまだ十分に発育していませんから、一度にたくさんは食べられません。生後半年齢くらいまでは1日に必要な量を3~4回に分けて与えます。それ以降は、与える回数を徐々に減らし、1日に2~3回程度にしていきます。大型犬より小型犬のほうが成長が早く、生後10ヶ月齢くらいで成犬と同じ体重になりますが、大型犬では成犬になるなでに一年半くらいかかり、生後12ヶ月齢くらいではまだ成犬時の体重の80~90%くらいにしかなりません。体のサイズや成長度合いによって与える回数を加減していきます。この時期に食事を与えすぎて肥満にしてしまうと成長後にも肥満になりやすく、かつ痩せにくい体となってしまいますので注意を。(ダイエットや肥満については「犬の肥満とダイエットのコツ」を参照)
     
  • 成犬期(1歳~8歳)
    与える食事の回数は1日に1~2回程度。お腹の弱い子などは2回にしてあげるといいでしょう。グレート・デンやブラッドハウンドのような大型犬(特に胸の深いタイプ)では、時折胃捻転になるケースもあります。中型犬や小型犬でも見られることはあるのですが、特にリスクが高いと思われる子は、食後に激しい運動をさせない(基本的に食事は散歩の後)、一度にたくさん食事や水を与えない、早食いをさせない、食事の回数を1日2回以上にするなど気をつけることである程度の予防となります。
     
  • 高齢期(9歳以上)
    ここでは9歳以上と書きましたが小型犬と大型犬とでは老化のスピードが違います。一般的に、小型犬では7~8歳頃、大型犬では5~6歳頃から高齢期に入るとされますので、そのくらいの年齢になったら様子を見つつ、少しずつ食事内容を換えてあげるといいでしょう。健康であれば1日2回の食事回数でも大丈夫ですが、場合によっては食事回数を増やすことで消化機能の低下を補ってあげるようにします。高齢期では栄養の摂りすぎによる肥満には注意し、良質でやや高タンパクな食事内容が必要になってきます。


ドッグフードを食べない時は

お肉メインの食事
ドッグフードを食べたがらない時には、トッピングをしたり、肉汁をかけてもOK。ドライフードから缶詰などに替えてもよい。
食事を食べたがらない時に手を替え品を替えあれこれ与えていると、食べなければもっと他のものがもらえると覚えてしまいますので、しばらくは根気比べをしてみてください。たいがいお腹がすけば食べるものです。その際、フードを1日置きっぱなしにするようなことはやめましょう。食べないなら、様子を見てさっさと片付けてしまいます。

それでもなかなか食べようとしない時には、フードにトッピングをしたり、お肉を茹でたスープなどをかけてみたりするのもいいと思います。ただし、ドッグフードの栄養バランスが崩れない程度のトッピングに。スープをかける時には、犬は熱いものは苦手ですから適度に冷ましたものにします。ドライフードの場合は水やぬるま湯でふやかしただけで食べるようになることもあるので試してみてください。

そうは言っても、そのフードが本当にイヤで食べないこともありますので、他のメーカーのものに替えてみたり、ドライフードから缶詰などに替えてみるのもいいと思います。

フードを切り替える時

これまで食べていたドッグフードから他のものへ切り替える時に、急激に替えるとお腹を壊したりすることもあります。新しいフードを少しずつ混ぜていき、数日かけて切り替えるようにします。

食事に関する考え方は人それぞれですが、同じメーカーやシリーズで一生通すよりも、いろいろなものが食べられるようにしてあげたほうがよりよいという考えをガイドはもっています。同じものを食べているほうが、お腹も体調も安定していいということもあるでしょう。それはそれでいいと思います。しかし、動物病院やペットホテルに預けた時など、これしか食べられないというのでは困るケースもあります。加齢とともに犬の食の好みが変わってくることもあり、消化機能の状態によってはお腹に合わないものも出てきたりすることがありますので、食べられるものの範囲が広いと食事内容の選択肢もより多くもてることになります。そして、人間に比べたら短い犬の一生。食の楽しみを与えてあげるという意味でも、ある程度いろいろなものを食べさせているガイドです。

犬の食事は、その子の健康状態や飼い主さんの考え方、環境などによっても変わってきます。試行錯誤しながら自分の子に合った食事を見つけてください。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。