リーダーシップ理論の歴史的変化

SL理論でリーダーシップ

SL理論でリーダーシップ


リーダーシップ理論、つまり、リーダーシップの捉え方の歴史的変遷を辿ると、第1フェーズから第4フェーズに分けられます。

第1フェーズ「特性論」の時代(1900年以降)はリーダーシップは生来的な要素が強いと捉えられていた時代。例えば、カリスマ性は代表的な要件です。

第2フェーズ「機能論」の時代(1940年以降)は、リーダーシップは行動であり技術である、よって習得できると考えるようになりました。行動や技術と捉えることで今日のように研修などで学ぶことができるようになったのです。

第3フェーズ「条件適応理論」の時代(1970年以降)は、リーダーシップは状況に応じて取るべきスタイルが異なるという考えが主流となりました。

第4フェーズ「コンセプト論」(2000年以降)は、著名な学者がそれぞれの捉え方をする時代。例えば、変革型リーダーシップ、サーバントリーダーシップ、責任共有のリーダーシップなどが挙げられます。

今回は日常的に活用しやすい第3フェーズ「条件適応理論」を中心に、解説したいと思います。

<目次>  

リーダーシップは状況によって変化……代表とSL理論

そもそも「リーダーシップ」とは多数の人間を 一人の人間に従わせること、またはその技術と才能を指します。リーダーシップ論の第1フェーズの特性論を経て、第2フェーズである機能論では、課題達成と人間関係の2つの軸で表現する二次元モデルを用いてリーダーシップ・スタイルを分類していました。

ところがこの理論のリーダーシップでは、組織の業績に対して必ずしもよい影響を与えるとは限らないという様々な例外が出てきています。「人間への関心」と「業績への関心」で軸分けしたマネジリアル・グリッド理論や「目標達成能力」と「集団維持能力」で構成したPM理論で捉えたタイプのリーダーたちが組織を引っ張っていったとしても、必ずしも好業績を残すことができるわけではないという事例です。

ここから、研究者たちの間では、リーダーシップを解明するにはリーダーの行動特性だけでなく、さらに何らかの追加条件が必要なのではないかということが主張され始め、「条件適応理論(コンティンジェンシー理論)」が生まれました。

条件適応理論は、相手や組織の状況を踏まえて、とるべきリーダーのスタイルは異なるという考え方です。また、この理論では「全ての状況に適応できる、唯一最善の普遍的なリーダーシップ・スタイルは存在しない」という考えを基本に、リーダーの特性や行動と状況との関係を明らかにしています。

この代表的な理論の1つには、P・ハーシーとK・H・ブランチャードのSL理論があります。わかりやすい理論ですので知識としてストックしておくと便利でしょう。
 

リーダーシップのSL理論とは

SL理論(1977年)のSLというのはSituational Leadership(リーダーシップ条件適応理論)の略です。この理論は、リーダーの資質ではなく、状況に応じて役割を変える必要があると考えたフィドラーのコンティンジェンシー理論の状況要因を掘り下げて、部下の成熟度に着目し発展させたものです。リーダーシップのスタイルは状況によって必要とされるものが変わるわけですが、この理論では業務指示の必要性とそれを支援するコミュニケーションの必要性の2つの要素によってリーダーシップが変わると捉えています。

P・ハーシーとK・H・ブランチャードは、リーダーのスタイルというのは部下の成熟度によって変える必要があると考えました。まず、はじめに図1のように縦軸を人間関係志向(共労的行動をとる)、横軸を仕事志向(指示的行動をとる)の強さとして4象限に分け、それぞれの状況でリーダーシップの有効性を高めていくにはどうすればよいかを示しました。SL理論において有効なリーダーシップは、部下の成熟度のレベルによって次のように規定されています。
リーダーシップ

図1:SLモデル



■S1:教示的リーダーシップ
具体的に指示し、事細かに監督する。意思決定はリーダーが行う。

■S2:説得的リーダーシップ
自分の考えを説明し、疑問に応える。

■S3:参加的リーダーシップ
部下を認めて意見を聞き、部下が適切な問題解決や意思決定をできるよう取り計らう。

■S4:委任的リーダーシップ
部下と話し合い、合意の上で目標や課題を決め、部下に任せて成果の報告を求める。

以上の4つが、SL理論におけるリーダーが部下の状況(能力・マインド)によって変えるリーダーシップ・スタイルのタイプ分類です。S1からS4と部下が成熟していくにつれて、適切なリーダーシップのタイプは図の矢印のように推移します。

それでは、部下の成熟度に適合するリーダースタイルを具体的に見ていきましょう。
 

S1:新入社員には仕事で関わる

新入社員には仕事を徹底

新入社員には仕事を徹底

S1象限における部下は4象限の中で成熟度が一番低く、「熱心な初級者」な状態にある新入社員にあたる人です。この場合には、仕事志向が高く、人間関係志向の低い「教示的なリーダーシップ」が有効です。

リーダーは部下にやってもらう業務を具体的に指示したうえで、進行状況を把握し事細かにアドバイスを与えていきます。しっかり監督し、意思決定はリーダーが行うことで、部下は着実に業務を進めることができます。このとき、リーダーは対等の立場での協労的行動はとりません。

熱心な初級者と良好な人間関係を築くことよりも、仕事の達成度を高めるためのサポートに力を入れていきます。そうすることで、部下は着実に業務をこなしていくことができます。
 

S2:若手部下には仕事と人間関係で関わる

S2象限においては、部下は成熟度を高めており、「迷える中級者」といった入社5年目以下程度の先輩社員です。この場合は、仕事志向、人間関係志向がともに高い「説得的リーダーシップ」が有効です。

リーダーは仕事の達成度を気にかけつつも、部下との人間関係もしっかりと築くこともします。自分の考えを部下に説得しつつ、部下の疑問に1つ1つ答えるなどして、部下とのコミュニケーションを図っていきます。

このように、積極的に指示的、協労的行動をとっていきます。その結果、ただ与えられた業務を淡々とこなしていくだけではなくなるため、部下はやる気を増し、業務を効率よく遂行することができます。
 

S3:中堅部下には人間関係で関わる

S3の象限において、部下の成熟度がさらに高まり、「波のある上級者」になって、業務の実情を上司と同じくらい理解できている中堅社員の場合です。この段階では、仕事志向が低く、人間関係志向の高い「参加的リーダーシップ」が有効です。この場合、部下はリーダーが事細かに監督しなくても自分の仕事を進め、成果を出していくことができるようになっています。

リーダーはさらに部下とのコミュニケーションを深め、部下を認めたうえで彼らの意見を聞くことが必要とされます。そのあとで、部下の自主を促すための激励や環境整備を行います。

部下は、リーダーが自分の意見に耳を傾けるだけではなく、意思決定の判断材料の1つとしてくれることに満足します。そして、リーダーからのアドバイスを受けながらも自ら問題解決をしていけることで、責任感と充実感のもとにモチベーションを高めていくことができます。
 

S4:ベテラン部下には委任する

S4の象限では、部下が完全に自立性を高めて「安定したベテラン」に成長し、業務の実情に関して自分より詳しいベテラン社員の段階です。この場合は、仕事志向、人間関係志向がともに低い「委任的リーダーシップ」が有効です。この象限では、部下は安心して仕事を任せられるレベルになっているうえ、リーダーと円滑なコミュニケーションがとれるようになっている段階です。

リーダーは部下と話し合い、合意の上で目標や課題を決めますが、そこから先は部下に仕事遂行の責任を委ねて成果の報告を求めるだけにします。

部下は、自分が頼りにされていることで責任感と充実感をさらに増します。もっと認められたいと思うようになり、質の高い結果を残していくことができるようになり、組織全体の業績にも影響していきます。
 

SL理論だけでなく、多様なリーダーシップスタイルを使い分ける

このようにして、リーダーが部下の成熟度に応じてリーダーシップ・スタイルを変化させることで、組織メンバーのモチベーションは上がります。その結果、業務が効率的になるので、組織の目的を達成することができます。

読者のみなさんは、自分の上司が部下に対してどのようにリーダーシップ・スタイルをとっているかを、上記のような観点で実際に観察してみてください。そうすれば、このSL理論の4つのスタイルをより理解していただけると思います。 

このSL理論を初めとする条件適応理論は、組織においてリーダーには状況に応じて要請されたニーズを的確に読み取り、変化する状況に適切に対応していくことが要求されます。つまり、リーダーシップは状況に対して適合的でなければならないのです。一般的に強力なカリスマのような個人的な能力などで成り立っているのではなく、状況を見極め状況に的確に反応し、その状況で役割を果たすことが重要であると考えられます。

有効なリーダーシップを発揮するためには、数種類あるリーダーシップ・スタイルを理解し複数のスタイルを身につけ、状況に応じて適切に使い分けることが大切です。

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