森の水源

多くの命を育む自然の森は、都会の水源として都市の人びとの命もささえています(写真提供・日本熊森協会)

なぜ、クマが人里にやってくるの?

夏から秋にかけてよく聞くのが“クマ出没”のニュース。実はクマが人里に出てくるのは、都会の水が涸れていくサインかもしれないって知っていました? クマと都会の水には深い関わりがあるのです。

それはなぜ? クマと水にどんな関わりがあるの? それを知るために、9月19日に都内で行われた日本熊森協会のシンポジウムに参加しました。日本熊森協会はクマをシンボルに、クマの住む森を守り、多様な生物の生きる環境を取り戻すことを目的に活動する団体です。

クマだけではなく、イノシシ、シカなどが人里に出没して田畑やときには民家にまで被害を与えるといったニュースを良く聞きますが、こうした人里に降りてきて、被害をもたらす動物は有害獣ともいわれ、駆除の対象にされてしまいます。けれども、そもそも動物たちが、人間たちのエリアにやってきて“害”を及ぼしているのは、決して、動物たちが悪いのではありません。

山が、森が、荒れ果てているためです。

経済重視の政策が、森を荒している……

人工林

国の政策で植えられたスギなどの人工林には、多様な生物の世界が失われてしまいます(写真提供・日本熊森協会)

日本は国土の7割を森林が占める世界第2位の森林大国といわれます。その多くは、第二次世界大戦後、木材の需要に応えるために植えられたスギやヒノキの人工林です。

山には人が適度に手を加えつつ維持してきた里山に対して、本来は、人が入らない野生動物の世界だった奥山があるとされています。何をもってして奥山と定義するかはいくつかの論もあるのですが、この奥山の木を伐ってスギやヒノキを植えたのが、戦後の拡大造林という政策でした。

それまでは、クマを頂点に様々な生きものから草や微生物にいたるまで無数の命が関わり合ってバランスを保っていたはずの奥山。それが人工林となってしまったことで、そのバランスが崩れ、動物たちのすみかやエサがなくなってしまったのです。

まず、これが動物たちが里へ追われてきた理由の1つ。

この秋、森は動物たちの食糧危機

さらに、林業の衰退と安い輸入材に押された今では、その人工林すら人の手が入らないまま放置されています。一度、人の手が入った森は、手入れをしないと維持管理ができません。その結果、森は荒れ果て、ますます動物たちの居場所とエサがなくなってしまいました。いわば、人間の勝手で、動物たちの居場所を奪っているようなものなのです。

そして、今年の猛暑は、木の実が結実しないなど森にも大きな影響を及ぼし、動物たちのえさが大幅に減少しているといいます。言ってみれば、森の食糧危機。秋も深まるこれからの季節、動物たちの不幸なニュースはますます増えるに違いありません。