そもそもEDって何?

日本のED(勃起不全)患者は約1130万人といわれています。大雑把にいうと、東京都の総人口と同じくらい。この数字は1998年に行われた調査に基づいているため、その後の時代変化や調査に漏れた分を考えると、現在はもっと増えているはずです。EDは「Erectile Dysfunction」の略称で、一般的には「立たない病気」と捉えられがちです。

しかし、その本質は脳梗塞や心筋梗塞の原因となる動脈硬化です。つまり、ペニス周りの血管の病気なのです。単に立つ、立たないという問題ではなく、生活習慣病の一種と捉えれば、放ってはおけないはず。男性であることは生まれながらにED予備軍に組み入れられているということです。

パートナーとの豊かな性生活を営む上でも欠かせないEDの豆知識をご紹介しましょう。

EDの原因は器質性、心因性と混合型の3つ

EDは「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態」と国際的に定められています。

ここで肝心なのは、立つか立たないかではなく「性行為ができるのに十分な」という条件が付いていることです。ですから、たとえ自慰行為では射精できてもセックスで射精できなければEDとみなされます。

EDはその原因によって、器質性、心因性、両者の混合型の3つに分けられます。

■1.器質性
器質性は簡単にいうと身体的な理由で勃起できないケース。糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病、神経が障害される病気、陰茎海綿体周辺を損傷するような手術や外傷、泌尿器系の病気が引き金になります。

■2.心因性
心因性は主に精神的な理由で神経の性的な興奮がペニスにうまく伝わらないことで起こります。性交中の「中折れ」が典型的な症状です。家庭内や仕事上のストレスが深く影響します。初めてのセックスの失敗が尾を引くことも。

■3.混合型
混合型は器質性と心因性が複雑に絡み合って生じるものですが、実際問題として器質性か心因性かをきちんと分けることは困難。多くの場合、糖尿病や高血圧などの慢性疾患が原因となっています。

これらとは別に、神経や循環器、消化管に対する特定の薬剤が原因となる薬剤性のEDもあります。

簡単にできるEDセルフチェック質問表

EDの判定にはIIEF(国際勃起機能スコア)という質問票が使われます。数分で簡単にできるので、気になる場合は自分で症状をチェックしてみるとよいでしょう。

■質問票
この6カ月に、
1:勃起してそれを維持する自信はどの程度ありましたか
1.非常に低い
2.低い
3.中くらい
4.高い
5.非常に高い

2:性的刺激によって勃起した時、どれくらいの頻度で挿入可能な硬さになりましたか
0.性的刺激はなかった
1.ほとんど、または全くならなかった
2.たまになった(半分よりかなり低い頻度)
3.時々なった(ほぼ半分の頻度)
4.しばしばなった(半分よりかなり高い頻度)
5.ほぼいつも、またはいつもなった

3:性交の際、挿入後にどれくらいの頻度で勃起を維持できましたか
0.性交を試みなかった
1.ほとんど、または全く維持できなかった
2.たまに維持できた(半分よりかなり低い頻度)
3.時々維持できた(ほぼ半分の頻度)
4.しばしば維持できた(半分よりかなり高い頻度)
5.ほぼいつも、またはいつも維持できた

4:性交の際、性交を終了するまで勃起を維持するのはどれくらい困難でしたか
0.性交を試みなかった
1.極めて困難だった
2.とても困難だった
3.困難だった
4.やや困難だった
5.困難でなかった

5:性交を試みた時、どれくらいの頻度で性交に満足できましたか
0.性交を試みなかった
1.ほとんど、または全く満足できなかった
2.たまに満足できた(半分よりかなり低い頻度)
3.時々満足できた(ほぼ半分の頻度)
4.しばしば満足できた(半分よりかなり高い頻度)
5.ほぼいつも、またはいつも満足できた

数字の合計点数とEDの程度との関係は次の通りです。
  • 22~25=正常
  • 21~17=軽度
  • 12~16=中等~軽度
  • 9~11=中等度
  • 1~7=重度
21点以下の場合はEDと判定されます。この質問票はあくまでEDの可能性を探る目安なので、気になる方は医師に相談しましょう。

ED治療薬の薬効(効果・効能・効き目)と注意点(副作用)

注射と飲み薬では、飲み薬のほうが楽なので、それから試しては?

注射と飲み薬では、飲み薬のほうが楽なので、それから試しては?

ED治療の指針である『ED治療ガイドライン』はED治療薬が第一選択の治療方法であると明記しています。ED治療薬の正式名称は「PDE5阻害薬」で、簡単にいえば勃起しづらくする物質(PDE5)の働きを妨げるように効きます。

わが国では、シアリス、バイアグラ、レビトラが処方可能な正式薬剤です。ただし、いずれも、ニトログリセリンなどの硝酸薬やNO供与薬と併用することは禁じられています。

■シアリス
内服後30分から効果を発揮し、36時間持続します。この長時間持続効果が他の薬剤との大きな違い。食事の影響を受けることもないので服用のタイミングを気にせずに使えるのが利点です。EDだけでなく、血管の健康を促す効果も認められています。

■バイアグラ
世界で最初に臨床応用されたED治療薬です。内服後30~60分で効果を発揮。性交の1時間前を目安に服用するとよいでしょう。効果は4時間ほど持続します。世界中で広く利用されていますが、食事の影響が出やすいのが特徴です。

■レビトラ
内服後30分で効果を発揮します。服用のタイミングや効果が持続する時間はバイアグラと同等。しかし、バイアグラに比べて食事の影響を受けにくい利点があります。通常の10mg錠のほか、確実な効果が望める高用量タイプの20mg錠もあります。

ED治療薬には勃起を促すために血管を広げる働きがあるため、服用すると頭痛、ほてり、消化不良、鼻閉、めまい、眼障害、背部痛などの副作用を伴うことがあります。いずれも軽度で一過性のため心配ありません。

脳動脈瘤がある患者さんもOK

脳ドックで動脈瘤が発見された40代の患者さんからED治療薬服用の影響について相談されたことがあります。結論からいうと、ほとんど影響はないと考えてよいでしょう。動脈瘤があっても、ED治療薬は通常どおり使用できると思います。脊髄損傷の患者さんのEDにも効果があるという報告もあります。

また、高血圧の薬を服用している方からED治療薬の服用の相談を受けることがありますが、基本的に降圧剤で血圧がコントロールされているなら処方できます。降圧剤の中には併用注意薬があるので注意が必要。市販のビタミン剤との併用もまったく問題ありません。

よく、ED治療薬を使えば必ず勃起力は増すのかという質問を受けますが、100%効果があるわけではありません。原因にもよりますが、おおむね8割ぐらいに効果があるようです。

ED治療薬は決して依存症にはなりません

ED治療薬は使い続けても、依存症になることはありません

ED治療薬は使い続けても、依存症になることはありません

過度の緊張やストレス、失敗の記憶などを原因とする心因性の勃起不全には特にED治療薬の服用が大変に有効です。

その恩恵を被っている患者さんは多数いますが、なかには常用すると体がそれに頼ることで依存症になり、それなしでは立たなくなったり、効かなくなったりするのではないかという不安を抱く方もいます。

しかし、それは杞憂です。ED治療薬は使い続けても、依存症になることはありません。心因性の場合には何回か服用して性交渉がうまくいき、ED治療薬なしでもできるようになることもあります。まずは気軽に服用して自信をつけることです。

ED治療薬は生活改善薬でもある

ED治療にはED治療薬の服用がもっとも簡単で効果的。ED治療薬が効かない場合は、陰茎に直接、薬を注射することで陰茎への流入血液を増加させて勃起させるという陰茎注射法があります。どちらの方法でも勃起は起きますが、注射より飲み薬のほうが楽で、まず、ED治療薬から試すといいでしょう。

ただし、ED治療薬の効果の出方には多少個人差があります。体調によって効果が出にくいこともあります。回数を重ねて自分にあった使用法を探すといいですね。3回目くらいからよく効いたという方もおり、一度で諦めず最低5回くらいはトライしてください。

私はED治療薬を生活改善薬と位置付けています。勃起の改善はもちろん、それを通じて生活の質の改善をもたらしてくれるから。実際、来院時に緊張していた方の多くが、診察室を出るころには勃起への希望と期待で顔をゆるませ、一様にリラックスして、受診してよかったと喜んでお帰りになります。

EDを遠ざける、規則正しい生活習慣って?

EDのリスクファクター(危険因子)のほとんどは生活習慣と深い関わりを持っています。EDにならないようにするには、規則正しい生活を送ることが第一なのです。

さまざまな生活習慣のうちでも、喫煙者はEDの発症率が高いというデータがあります。EDの一次予防はできるだけ喫煙しないこと。高血圧による血管障害がEDの原因となっていることもあります。また、糖尿病や脂質異常症もEDを招く要因です。

明らかな病気とはいえないまでも、肥満もEDのリスクファクターの1つです。肥満の解消と運動不足の解消はEDの改善や予防につながる可能性がある非薬物治療としておすすめです。

食生活では肉類を少なくする一方、魚や大豆製品を増やすように心がけましょう。食物繊維の多い食品や抗酸化物質を多く含む野菜、果物などは生活習慣病の原因を抑えるために有効です。

EDの引き金になる生活習慣病の予防には肥満を招きやすい食事を避けるだけでなく、食事のスタイルを見直すことも大切。噛まずに飲み込むような食べ方や早食い、不規則な食事など、肥満につながるような食習慣の改善も間接的なED予防策になりますよ。

<関連リンク>
EDってどんな症状?なぜなるの?
ED治療薬と一緒に飲んではいけない薬
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。