乳児期から形成される、自分や他人への基本的信頼感

海を見つめる女性

自分に自信がない、他人を信じられないという思いが強い場合、その背景に何があるのかを考えてみましょう


たとえば誰かに裏切られたり、自分の味方がいなくなった時や、今まで信じてやってきたことに意味を見出せなくなった時には、「世の中も、他人も信じられない。自分に自信を持つこともできない」……このような心境になることがあるかもしれません。しかし、幼い頃からこうした思いを強く持ち続けていると、人生に希望を見出しにくく、生きる目的が見つかりにくくなってしまいます。

米国の精神分析家・発達心理学であるE.H.エリクソンは、人間は乳児期に「基本的信頼」を獲得すると説明しました。

言葉で自己表現をすることができない乳児は、思い切り泣いたり叫んだりすることによって、自分の感情やしてほしいことを伝えます。このときに自分の気持ちが伝わり、やさしく対応してもらうことによって、子どもは自分がいる場所が安心できる場所であると感じ、育ててくれる人への信頼を感じます。そして、ここでは素直な感情や欲求を表出してもよいのだということを、信じることができます。
 

幼児前期の欲求は、わがままではなく自律性の発達から

反抗期に自分自身でやりたい欲求を

幼児前期には「自分なりにこうやってみたい」という欲求を表出し、体験してみることが大切

その後、幼児前期の子どもには「なんでも自分自身でやってみたい」という自律性が発達していきます。この時期には、やりたい気持ちを強く持つのと裏腹に、それがうまくできないことに強く苛立ちます。

この時期の子は、大人が「この場ではこうしていてほしい」と思うことを理解して行動することができず、やりたいことを制止されると激しく抵抗します。こうした態度は、大人からはわがままに見えることがあります。しかし、これは養育者から自立し、身の回りのことを自分でできるようになるための基礎作りの行動です。

この意欲と怒りが入り混じった複雑な気持ちが受け止められず、頭ごなしに叱られたり、素直な感情を出してはいけないと抑えつけられてしまうと、表面的には「大人しい良い子」に見えても、言葉にできない自信不足を抱えやすくなります。自発的に何かをやってみようという意欲が生じにくく、いつもどこか不安な気持ちを抱えやすくなります。
 

信頼できる人に素直な気持ちを打ち明け、自分の思いを整理してみる

思いのたけを話して受け止められると、前に歩き出せる

自分の思いを受け止められる体験をすることで、生きる目的を見つけるヒントに出会えるかもしれない

このように人間の基礎となる部分は、自我が芽生える前、そして自我が育っていく時期に形成されます。そのため、子どもの頃から「どうしていつも不安が強いのだろう」「どうしていつも生きにくいのだろう」という思いを抱えている場合、そのように感じている背景に何があるのかを振り返ってみるのもよい方法です。

その振り返りの方法の一つに、自分の中に未消化のままで残っている傷ついた子どもの心「インナーチャイルド」を癒すという方法があります。インナーチャイルドの癒し方については、こちらの記事で解説しています。
不安や怖れを起こす「インナーチャイルド」の癒し方

こうしたワークを一人で行うのは難しいことが多いため、できればインナーチャイルドに詳しいカウンセラーと一緒に取り組むのがお勧めです。抱えている思いをカウンセラーに話し、一緒にインナーチャイルドを癒していくことによって、自分の心の底にある傷が癒され、生きる自信、生きる目的が見つかっていくかもしれません。

ただし、注意したいことが三つあります。一つは、大人になってから振り返る子ども時代の記憶は、あいまいだということです。「これが原因だ」と確信した答えが、本当に真実であるかどうかは分からないものです。二つ目は、インナーチャイルドが癒せるかどうかはカウンセラーの人間性や力量、カウンセラーとの相性にもよるということです。三つめは、自分の心がインナーチャイルドを癒す準備ができているのかどうか、ということです。

大切なのは、原因が自分の乳幼児期にあるのかもしれないと気づいた上でも、今、ここからできることをしていくことです。そのためにも、まずは身近にいるカウンセラーに相談し、自分の素直な気持ちが受け止められることによって、自分の気持ちを見つめていくことから始めてみるのもよい方法ではないかと思います。
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