ストレス/身近な人のストレスケア

家族のうつの兆候に気づいたら…「見守る技術」5つのポイント

【公認心理師が解説】家庭は社会で受けるストレスを癒し、元気を取り戻すための大切な場所です。だからこそ、家族につらい様子が見られたときには、ほどよい距離感で見守りあっていくことが大切です。簡単なようでいて難しい、家族としての適度な「見守り方」のポイントを5つご紹介します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

ストレスを癒し、元気を取り戻す場になるのが家庭・家族

家族のうつを防ぐ「見守る技術」5つのポイント

家族がつらい気持ちを抱えている際にできること…「見守る」技術とは?


家の外で受けたストレスを癒し、元気と笑顔を取り戻すための場所――それが「家庭」です。幸せを感じる瞬間とは、心のなかでぼんやりと感じる「ほの温かい感覚」のことかもしれません。では、この感覚を家族みんなが味わうために必要なこととは、どんなことでしょう?

そのひとつに「見守る技術」があります。「見守るって、どんな行動?」「見守っているつもりが、見過ごしてしまわないかと心配」、このように感じる人も多いかもしれません。

「見守る」とは、相手の無事を祈りながら、少し離れた場所でなりゆきを見ていくことです。そして、相手の危険を察知したら、すぐに助けられる状態を保っていくことです。
 

家族に必要な「見守る技術」5つのポイント

家庭がお互いの幸せを守るために、「見守る技術」をどう使っていけばいいのでしょう? 次の5つのポイントを参考に、助け合っていくことをおすすめしたいと思います。

1. 「いつもの様子」とどう違うか、観察する
体調に変化がなさそうか、ストレスがたまっていないだろうか、家族の様子を観察しながら、微細な変化に気づくようにしましょう。特に大切なのは、次の4点です。
  • 朝の様子の変化……なかなか起きられない、食欲がない、疲れた顔を見せる
  • 帰宅時間の変化……帰宅が遅くなった、遅い帰宅の理由を言いたがらない
  • 睡眠の変化……就寝が遅くなっている、夜中に何度も起きている
  • 休日の変化……長時間昼寝をするようになった、外出に誘っても行きたがらなくなった

2. 元気がないときは声をかけ、以前との違いを伝える
上のような変化を感じたときには、できるだけ声をかけあいましょう。「すっきり起きられなくなったようだけど、疲れがたまっているのかな?」「帰宅が遅くなったけど、何か大変なことがあったのかな?」。このように、明らかに感じる変化とを伝えながら、心配しているという気持ちも伝えるとよいでしょう。

すると、本人もたまった疲れやストレスを自覚しやすくなりますし、つらい気持ちを打ち明けやすくなります。ただし、何も言いたがらないなら、無理に聞き出さないことも大切です。しばらく様子を見て、また気づいたときに心配に感じることを伝えると、つらい気持ちを話しやすくなると思います。

3. どうすれば、家族の気分が楽になるかを考える
家族を元気づけようと、本人の意向を聞かずに外食や旅行の予定を立てたりしないようにしまししょう。まずは、いつもの生活のなかで楽に過ごせることを考え、体を休める時間をつくってあげるのが先決です。

たとえば、疲れてしんどそうに見えるなら、自分が家事を多めに負担し、家のなかでのんびり過ごせる時間を増やしてあげるとよいでしょう。休日の日中は家を空け、リビングで一人で過ごす時間をつくってあげるのもよいでしょう。

このように、相手の気持ちを察して心遣いをするだけで、家族の気持ちは休まるでしょう。

4. 本人の気分が少し明るくなるものを用意する
気持ちが沈んで見えるときには、少し明るくなり、気持ちがほころぶものをさりげなく用意してあげるのも、ひとつの方法です。

たとえば、買い物のついでに小さなブーケを買ってきて、食卓を明るく飾ってみる。本人が好きなメニューを食卓に並べてみる。くつろいでいる時間に、そっとお茶を入れてあげる。このような小さなやさしさを向けてあげると、本人の気持ちは少し明るくなり、少し元気になれると思います。

5. 自分の楽しみは控えめにし、ほどよい距離感でかかわっていく
自分のやりたいことがあっても、家族がつらいときには少し控えめにしながら、できるだけ家族のことを思いやる時間を増やしていくとよいでしょう。すると、本人がしてほしいサポートに気づきやすくなれると思います。

かといって距離が近づきすぎてしまうと、息が詰まってしまうものです。四六時中、そばにいなくてもいいのです。お互いが負担にならない、ほどよい距離感を保ちながら、気長にかかわっていくとよいと思います。


誰にでも、調子の悪いときは訪れるものです。そんなときに、家族にほどよい距離感で見守ってもらえると、安心できるものです。家庭それぞれの幸せを守っていくためにも、家族みんなで「見守る技術」をぜひ発揮していきませんか?
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