3つのルートを確保したプランにしよう
高齢者の毎日の生活において、人や自然とのふれあいといった刺激も重要です。プライベートスイートで全て揃っているからといって、部屋にこもっていてはいけません。具体的には、【1】家族の居るリビング、【2】自然と触れ合える窓際やデッキのような外部スペースへ行くためのルートを確保すること、そして【3】知り合いと会うためのお出かけができるように配慮することで、充実した生活が送れることでしょう。■プライベートスイートと3つのルート |
■3つのルート設計 |
資料提供:二世帯住宅研究所 ※グラフをクリックすると大きく表示されます |
リビングルート
リビングの続き和室であれば、直接リビングに行けますので全く問題がありません。廊下を通る場合は曲がり寸法が確保できるよう、廊下か建具のどちらかを通常の寸法より広く取る必要があります。リビングが別の階にある場合、エレベーターを用いれば簡単に別の階に行くことができますが、その場合はエレベーターの広さにも注意が必要です。コンパクトなエレベーターでは大きい車椅子が載らなかったり、介助者が同時に乗れなかったりします。エレベーターはメンテナンス契約などで維持費がかかりますから、必要になるまでは納戸等で使い、必要なときに改造する、という考え方もあります。この場合エレベーターの基礎や床の取り外しをあらかじめ準備しておくことで改装費用を抑えることができます。
そとルート
外に出るためには、普通1段低く設けられるウッドデッキを床と同じレベルで設けることが必要です。サッシも車椅子の通過が配慮されたものを選ぶか、渡り板で乗り越せるようにする必要があります。この「そとルート」の確保は避難上も有効です。このデッキと、庭またはカーポートとを段差解消機を使って直接結ぶことができれば、おでかけルートも確保できます。
おでかけルート
おでかけルートは玄関を経由する方法と、前述のそとルートの延長とする方法があります。玄関には普通土間との間に段差がありますので、携帯スロープを使って車椅子を移動させることになります。玄関框段差が18cm以下であれば、1.2mのスロープで介助者が車椅子を移動させることができるでしょう。この場合スロープの前後にも車椅子のスペースが必要です。
入浴については、介助の必要性が増すほど通所介護を利用することが多くなると思いますので、浴室入り口の段差を無くすこと以外に特別な対応をしておく必要はないと思います。1616(一坪)サイズ以上の広めの浴室や、入口が3枚引戸等で大きく開くものはシャワーチェアを利用した入浴の場合でも介助スペースの確保がしやすく有利ですから、検討してみてもよいでしょう。
上記をまとめると、次のような考え方で設計すればいいことになります。
- プライベートスイートとする部屋を想定し、トイレ、洗面台の位置を考えておくこと
- リビング、外、お出かけの3つのルートを確保すること
在宅介護や車椅子での生活は、超高齢化社会となるこれからは増えてくると思われます。手摺や段差解消と言った、一般的な歩行の支援だけではなく、その先の車椅子対応まで配慮した設計をすることで、できる限り住み慣れた我が家で住み続けることができます。これから住まいの計画には、是非この視点を取り入れて頂きたいと思います。
【参考記事】
同居と介護(1)~介護経験者の声
同居と介護(2)~同居介護の家造りポイント