3.キッチンで水を出す
【写真3-1】シンク下が開いているタイプのキッチンで、体を近づけることができたので、手を伸ばすと水栓に届きました |
今回、実験したキッチンは、シンク下がごみ置きスペースとして開いており、車椅子のフットレストの部分がここに入ります。そのため、扉付きキャビネットタイプより近づくことができ、車椅子に座ったままでも、手を伸ばすと、なんとか水栓のレバーに手が届きました【写真3-1】。
手が届くかどうかぎりぎりの寸法だったため、個人差があると思われますが、シンク下にキャビネットがあるタイプより数cmは有利であり、膝が入るように設計される身障者用キッチンほどではなくても車椅子で水栓を操作しやすくなるといえそうです。
ただ、身障者用キッチンでは、車椅子でも調理しやすいよう、カウンターの高さが低く、シンクも浅いものになっていますが、こうした通常の高さのカウンター(高さ85cm)では、シンクの中や調理台に置いてある鍋をのぞくことはできず、力も充分に入らないため、本格的な調理は難しいと思います。
しかし、コップに水を入れる程度であれば充分でしたから、日常生活では自立してできる行為が増え、大きな使い勝手の差を生むことでしょう。
4.車椅子を2階に運ぶ
【写真4-1】車椅子を2階に運ぶ実験も行いました |
【写真4-2】車椅子を階段で持ち上げる作業は、ふたりがかりでも大変 |
エレベーターがあればこのような苦労はなくなりますので、最初からエレベーターをつけることが難しい場合でも、スペースの確保と基礎の準備だけはしておくと将来安心です。
階段にレールを固定し、椅子が上下するタイプの階段昇降機を利用する場合、人は乗せられますが車椅子は運べないので、車椅子を階段上下で乗り換えられるよう、各階に用意しておくのが現実的でしょう。また、階段昇降機は階段の有効幅を狭め日常の通行の障害になる場合があるので注意が必要です。
以上、今回は車椅子を室内で使ってみる実験をご紹介しました。街中や施設では見かけるものの、実際に車椅子に乗ったり、家の中で使ったりした経験のある方は少ないのではないでしょうか。この記事で少しでもイメージしていただけたらと思います。
続編で車椅子で家の内と外を行き来する実験をご紹介します。
【実験】車椅子で家と外を行き来してみる