コンサルタントで働く/コンサルタントの仕事

コンサルティング業界の構造……コンサルタントのポイント・特徴!

内部の構造・現状が少し分かり難いコンサルティング業界。そこには、どの様な分野があり、どういったプレイヤーが存在しているのでしょうか。コンサルティング業界のタイプを6つに分類し、初心者が抑えておくべきコンサルタントのポイント・特徴を解説。

執筆者:大石 哲之

コンサルティング業界の構造とは? コンサルタントのポイント・特徴

コンサルティング業界の構造

コンサルティング業界の国内市場規模は2700~3000億円。年々規模は拡大している

コンサルティング業界とは、主に大企業を中心顧客として、経営や戦略およびに会計・組織・人事・ITなどの業務上の課題について専門的なコンサルティング(相談や指導・企画・立案を手伝う)を行う会社のことを指します。

コンサルティング業界の推定市場規模は、米国で約10兆円、日本においては2700~3200億円といわれています(ユーロモニター社による)。

企業の合併・買収(M&A)の増大、グローバル化、中国の台頭など、経営にかかわる問題は複雑さを増してきています。これらの課題に対して、企業が適切かつ迅速に対応するためにコンサルティング会社への需要が増えてきており、今後ともその流れは変わらないでしょう。
 

コンサルティング会社は「影の主役」

コンサルティング会社は「企業のお医者さん」「経営助言役」などの言い方がされますが、ガイドの私は「影の主役」であると考えています。それは、企業が経営革新したり、新しい制度や仕組みを導入したりするとき、必ずといっていいほど、その裏にコンサルティング会社の存在があるからです。

例えば、ニュースで取り上げられる
  • 多角化で広がりすぎた事業を売却、コア事業に集中
  • 全社的ブランドマネジメントの仕組みを構築
  • アジア地域を統合するサプライチェーン・マネジメント・システムを構築
  • 事業部制から、収益ユニット別の組織に再編成
など、企業経営の根幹にかかわる仕事を行っています。
 

コンサルティング業界マップ

ひとことでコンサルティング会社と言っても、提供しているサービスは非常に幅広いものがあります。それこそ商社が「ミサイルからカップラーメンまで扱う」のと同じで、コンサルティング会社も企業の経営テーマに関して、あらゆるテーマを取り扱っています。大きく分けると次の6分野に分類できるでしょう。

■戦略分野
全社戦略、グループ経営、ビジョン策定、成長戦略、M&A(Mergers and Acquisitions/合併と買収)、アライアンス、R&D(Research and Development/研究・開発)といった全社的かつ抽象的なテーマを扱います。

■業務分野
SCM(Supply Chain Management/供給連鎖管理)、CRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)、会計(連結会計、管理会計)、内部統制、ERP(Enterprise Resource Planning/企業資源計画)導入などの仕組みの改革・構築が主なテーマ。

■IT分野
CIO(Chief Information Officer/最高情報責任者)アドバイザリー、大規模システム導入マネジメント(Project Management Office/プロジェクト支援部門)、ITインフラ構築支援、IT投資の分析・調査、セキュリティなどが主なテーマ。

■人事・組織分野
人事評価制度の導入、年金制度の導入、コミュニケーション・風土改革、組織再編成、人材育成、などが主なテーマ。

■財務アドバイザリー分野
M&Aでの企業価値評価、M&Aスキームのアドバイス、財務リストラ支援、M&A前後の組織統合など、M&A全般のコンサルティングがテーマ。

■その他の分野
IR(Investor Relations/投資家向け広報)やブランディング、Web専門のコンサルティングなどがあります。
 

コンサルティング主要プレイヤーとその特徴

戦略系、IT系など各プレイヤーは専門領域を持っている

戦略系、IT系など各プレイヤーは専門領域を持っている

米国VAULT社が発表している「世界TOP50コンサルティングファーム(2009)」によると、ランキングNo1はマッキンゼー&カンパニー、No2はボストン コンサルティング グループ、No3はベイン&カンパニー、以下、ブーズ&カンパニー、モニターグループ、マーサーLLC、デロイトと続きます。

コンサルティング業界は、弁護士、会計士、医者といった職業と同様、市場シェアといった統計にはなじまないため、総合的なプレステージを指標にしたランキングです。病院ランクや、大学ランキングのようなものと捉えてください。

コンサルティング業界は、その手法やコンセプトが外国から輸入されたものが多く、外資系が非常に多い業界です。以下に、日本における主要なプレイヤーを挙げます。

■会計事務所の流れを組むプレイヤー
いずれも規模が大きく、500~3000人規模の会社です。取り扱うテーマも、戦略から業務・IT・組織人事まで幅広く、総合的なコンサルティングを標榜しているため総合系ファームと呼ばれています。

主要プレイヤーには、アクセンチュア、デロイトトーマツコンサルティング、PWCコンサルタント、アビームコンサルティングがあります。

■戦略系ファーム
主に戦略領域のサービスを中心に提供していることから戦略系ファームと呼ばれます。極めて少数精鋭で、主要プレイヤーでも50~300人程度。

主要プレイヤーには、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ、ベイン・アンド・カンパニー、 A.T. カーニー 、ブーズ・アンド・カンパニー、ローランド・ベルガーがあります。

■SIer出自のプレイヤー
大手のシステムインテグレーターや商社の情報系子会社などを出自として、コンサルティング領域に業務を拡大している会社です。

主要プレイヤーには、IBMビジネスコンサルティング、日立コンサルティング、クニエ(NTTデータ系列)があります。

■総合研究所
戦略からITまで幅広いサービスを提供しています。母体となるグループ企業を中心として、安定した事業基盤を持っているのが特徴です。

主要プレイヤーには、野村総合研究所、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、NTTデータ経営研究所、三菱総合研究所、富士通総研があります。

■中小企業向け
主に50~500人クラスの小企業・中堅企業を対象として、経営者のニーズにあわせて、会計から人事、マーケティング、組織改革まで幅の広いコンサルティングを行っています。

主要プレイヤーには、船井総研、タナベ経営、ジェムコ日本経営、日本能率協会コンサルティングがあります。
 

注目したいスピンアウトファームたち

業界の中でも、ガイドの私が特に注目したいのは、スピンアウトファームの台頭です。

スピンアウトファームとは、大手プレイヤーに在籍していたコンサルタントが、それぞれのコンサルティングの理想を求めて、スピンアウト(切り離し)して起業した会社です。スピンアウトといっても、すでに上場している会社もいくつもあり、決して小規模というわけではありません。

得意の業界に特化したり(例:医薬・バイオや消費財など)、得意の分野を押し出したり(例:会計やベンチャー支援など)、それぞれに強みがはっきりしているのが特徴です。働き方を工夫されていたり、昇進が早いといった大手にはない魅力があり、それを求めて転職してくる人も多数います。多くの会社が新卒の採用も行っています。

主なスピンアウトファームのプレイヤーは、以下のようになっています。

ドリームインキュベータ、スカイライトコンサルティング、シンプレクス・テクノロジー、エル・ティー・ソリューションズ、アロウズコンサルティング、アイズイノベーション、IAFコンサルティング、アットストリーム、クロスフィールドなど。

コンサルティング会社の場合、「規模が大きい=質がよい」という構図にはなりません。弁護士などと同様、会社名ではなくあくまでコンサルタント個人の質がモノをいう世界ですので、小さい会社でもキラリと光る仕事をしているところがたくさんあります。業界研究するときには、大手プレイヤーばかりではなく、こうしたコンサルティング会社についてもぜひ注目してみたいところです。

業界を絞った新聞や雑誌(たとえば日経流通新聞、日経メディカルなど)を読むと、その専門領域のコンサルタントが寄稿している場合もあります。またコンサルティング業界に詳しい人材紹介会社に聞いてみるのもよいでしょう。

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