【1】
企業にとって厳しい時代だ。変革を繰り返して乗り切らなければ先はない。だが、変革は難しい。だからこそ、できれば競合に対して圧倒的な優位性が築ける。
変革で変えるのはハード(戦略、システム、組織構造)だけではない。ソフト、すなわち構成員の意識と行動を変えることが必要だ。
変革の成功の成否を握るのは人であり、改革から新たな事業戦略を描くのも人だ。彼らが常に学習し自律的に動く「自律型変革組織」に変わることが重要だ。
だが最も変わらないのも人である。人をどう変えるかが、企業にとって最大のチャレンジだ。しかも持続的に変わり続ける必要がある。
社員1人1人が環境の変化を感じ、それに合わせて意識、行動を変え続けることが重要だ。しかもその変化は会社の進む方向に沿ったものであるべきだ。
【2】
個人が変わり続けるためには「自律」と「学習」の2つの特徴を備えるべきだ。「自律」とは主体的に考え、判断し、自己完結的に行動し続けることだ。
これは変化に対して迅速な対応を行う上で不可欠だ。現代は変化が激しく予測できないので、会社が変化に対応するには個人が柔軟に対応する必要がある。
「学習」は、変化のバリエーションへ対応することだ。また変化の中にチャンスを見つけ、創造を行い、自分も周囲も変えることだ。
つまり、問題意識を持って物事に対処し、経験しながら発見し、自己を成長させることだ。
【3】
変わり続ける個人とは「自律的」に働き、そこから「学習」することを相互に、しかも継続的に行い螺旋階段のように変化してく人だ。
これをプロセスとして示したのが「ラーニング・サークル」だ。それを示すと次のとおりだ。
1)「変化の感知」 環境変化を感知し、機会と脅威を認識すること。
↓
2)「目標の設定・軌道修正」 認識に基づき目標設定、軌道修正すること。
↓
3)「戦略の立案」 目標と現状のギャップを埋めるプランを作ること。
↓
4)「実 行」 上の戦略を実行すること。
↓
5)「振り返り」実行した結果について振り返ること。
大事なことは結果の「振り返り」だ。環境変化を感知し、設定した目標の妥当性を再考し、目標の軌道修正や再設定を検討する気づきを得ることも含む。
【4】
変わり続ける個人に必要な要件は3つの“I”である。
<“I”NDEPENDENCE>
自律していること。個人として、主体的に仕事を行える能力と気概を備えていることである。
<“I”DENTITY>
会社の経営理念、ビジョンを共有していること。個人の目標と、組織の目標との接点を見出し、その達成に意欲を持っていることである。
<“I”NTERACTION>
インタラクション。他者との様々な相互交流を通じて他者への問いかけと、自己への問いかけとを継続的に繰り返していることである。
3つの“I”を備えた個人は、組織の変革力も高める。だから「個人に3つの”I”を習得させること」こそ、企業変革のゴールになのだ。
【5】
3つの“I”を備えた個人を作り出すための方法は次の3つだ。
1)「能力開発」と「成功体験」により個人の自律を促す。
仕事を進める上で必要な専門知識や、思考・分析の枠組みを身につけさせる「能力開発」を行い、そこで得た気づきを業務において活用・実践する機会をつくり成功体験をさせる。その結果は、再びフィードバックさせる。
2)経営理念・ビジョンを共有する。
経営理念・ビジョンを明示したら権限を委譲し個人の自由度を高める。自らリスクをとり責任を負うことで、成功体験を早く経験させ、個人のアイデンティティを深め、成長を促し、やる気を引き出すことができる。
3)インタラクションを生み出す。
会議や勉強会などの場を作り、各人を参加せる。これにより対人関係能力を磨かせる。また自律し、会社の方向性を共有した個人同士が振り返りや変化の感知を行うことで、ラーニングサークルを回せるようになる。
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