企業のIT活用/システム運用管理

雷サージとは?企業の対策はこれで万全

雷シーズンが到来。落雷があると誘導雷による雷サージが発生します。雷サージとは雷による「過電圧」「過電流」のこと。コンセントにつないだ家電製品は全部使えなくなってしまいます。どう雷対策をすればよいのか、見ていきましょう。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

自宅で仕事をしている人は要対策


今年も雷シーズンがやってきました。家で仕事をすることが多いSOHOや個人事業主にとってパソコンは仕事の必須ツールです。せっせと作成したデータや書類が落雷で飛んでしまったら目もあてられません。こうした事態を防ぐ対策について見ていきましょう。

高層ビル街ではどこに雷が落ちるか分からない

高層ビル街ではどこに雷が落ちるか分からない

落雷は年間50万回、特に8月に集中


日本では1年で50万回ほどの落雷があります。365日で割ると1日あたり1370回、特に多いのが7月・8月の夏期で、約3割が8月に集中しています。

雷の特性として高い所や先の細い所に落ちやすいことが分かっています。そこでビルの上に避雷針を立てますが、東京など都会では高層ビルがたくさん建ちすぎたため、この避雷針の効果が出にくくなっています(ちなみに避雷針を発明したのは凧の電気実験で有名なベンジャミン・フランクリンです)。

永田町の国会議事堂に落雷が直撃し、議事堂の外壁の一部がはがれ落ちたことがありました。すぐ隣に地上36階建ての「霞ヶ関ビルディング」がありましたが、はるかに低い国会議事堂のほうに雷が落ちたのです。とはいえ、高層ビルでも避雷針に落ちずにビルの側面に落ちたりもします。都会では、どこで落雷にあっても不思議ではありません。

また都会ではヒートアイランド現象が進み、気温の上昇に伴って雷の発生が多くなっており、落雷のリスクはますます高まっています。

雷サージとは、雷による過電流・過電圧

雷サージが通信線や電力線を伝わって家庭や会社に入ってきます

雷サージが通信線や電力線を伝わって家庭や会社に入ってきます


雷の電圧は約1億ボルトで、家庭で使う電圧の100万倍にもなります。

落雷によって膨大なエネルギーが放出されることになります。直撃を受ければひとたまりもありません。

問題になるのは間接的な被害です。建物や木などへの落雷することによって周りに強い電磁界が生じます。この電磁界に通信線や電力線があると「誘導雷」が発生します。誘導雷によって生じる過電圧・過電流を雷サージと呼んでいます。

この雷サージが通信線や電力線を伝わって家庭や会社に入ってきます。進入口はADSL・CATVなどの通信線、コンセント・アンテナ・アースなどになります。光ファイバーは素材がガラスですので雷とは直接には関係ないのですが、強度補強のために鉄のワイヤーが入っており、安心というわけにはいきません。

遠くで雷が落ちたからといって安心するわけにはいきません。落雷が町内くらいの距離であれば、十分に影響を受けます。先日、知り合いのオール電化にしていた自宅に雷が落ち、冷蔵庫やテレビだけでなく、IHクッキングヒーターもダメになってしまい、料理がまったくできなくなりました。

対策1. 雷ガードの電源タップを使う


雷の音が聞こえたらパソコンの作業を止めて、パソコンをコンセントから抜くようにとよく言いますが、まずはこれが一番です 。しかし、そうはいかないという場合も多いでしょうから、他の対策も行うのが現実的でしょう。

コンセントからの雷サージを防止するのが雷ガードです。過電圧が発生した時、その過電圧を吸収し、電気器具へは制限された低い電圧(制限電圧)のみを供給します。

パソコンショップの電源タップコーナーではで雷ガードタップと名づけられて売られています。最大どこまでの雷サージに耐えられるかによって価格が変わっています。

対策2. UPS導入で「瞬電」「瞬低」に備える

日本の電力会社はファイブナイン(99.999%)と呼ばれるほど高いレベルの信頼性で停電事故に備えています。

長時間停電を発生させないため、電力会社は経路を二重化して電力を供給しています。送電線に雷が落ちた場合、すぐにもう一つの経路に切り替えて送電を続けます。この切り替えは素早く行われますが、瞬間的には停電したら電圧が下がったりすることになります。これが「瞬電」「瞬低」と呼ばれるものです。

蛍光灯が少しまたたく程度で人間には気がつかないくらい短い時間ですが、コンピュータにとっては大きな影響を与えかねないものです。

10%を超える電圧低下が0.03秒ほど発生するとコンピュータが停止したり誤動作を引き起こたりします。たまたまハードディスクに書き込みしている最中に発生するとデータが飛んでしまうことがあります。

対策はUPS(無停電電源装置)を導入することです。UPSをコンセントにつなぎ、パソコンの電源はUPSからつなぎます。UPSの中にはバッテリーが内蔵されており、コンセントにつなぐことでバッテリーに電力が蓄えられます。電源トラブルが起きるとUPSからの電力供給に切り替わります。

高い信頼性を求めるなら「常時インバータ給電方式」のUPSを

UPSの中には専用の電源管理ソフトを用意するものがあり、電源トラブルを感知するとパソコンを自動的にシャットダウンしてデータを保護します。さらに電源コンセントや通信回線から侵入するサージ保護機能も備えています。

UPSは1万円程度のものからあり、コンセントの数、最大出力容量が大きるほど価格が高くなります。パソコンは約300Wですので、パソコン用なら最大出力容量が300W以上を選ぶとよいでしょう。

安価なUPSは「常時商用給電方式」で、入力された交流電源をそのまま外部出力するタイプです。他には幅広い電源異常に対応できる「常時インバータ給電方式」などインバータの種類別に4種類あります。

企業でUPSを導入する場合は「各機器が使う消費電力」を合計した上で、さらに「どれだけの時間、電源を供給しなければならないか」を計算をします。

次に給電方式の検討になりますが、高い信頼性を求めるのであれば「常時インバータ給電方式」を、コストを下げるのなら「常時商用給電方式」を中心に選ぶことになります。

対策3. 等電位ボンディングで等電位化する

自社ビルの場合は避雷針の設置、雷ガードの導入以外に「等電位化」することが大切です。

等電位とは、建物から地中に雷の電流を流す時にアースの電位を均等にすることを言います。電気エネルギーは電位の高いところから低いところへ流れるため、アースの電位が均等でないと地中へ流れた電気エネルギーが建物内に戻り、機器に影響を与えてしまいます。

これを防ぐために導入されるのが等電位ボンディングです。等電位ボンディングによって各機器のアースで電位差を発生させないようにします(等電位ボンディングの詳細はビルの施行業者などにお問い合わせください)。

いろいろご紹介しましたが、一番の雷対策は「遠くでゴロゴロしたらパソコンの電源を落とし、コンセントから抜く」という至極原始的な方法なのです。

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