1972年(昭和47年)に産声を上げ、その誕生から半世紀近くが過ぎようとしている税額控除の1つ「住宅ローン減税」―― 当該税制は景気刺激策としての側面(政策期待)を多分に有しているため、これまで国内経済の浮沈に応じて累次の改正(控除期間や最大控除額、控除率の拡大・縮小など)が行われてきました。

直近では安倍政権のもと、8%から10%への消費税率引き上げが2回延期されたことで、呼応するように住宅ローン減税も適用期間が延長され、当初(2013年度税制改正)は「2017年12月末」で終了する予定が「2021年12月末」まで4年間の期間延長が決まっています。

こうした柔軟な対応はマイホームの取得検討者にとって、とても喜ばしい話ではありますが、住宅ローン減税は控除の適用期間が10年~15年と長丁場になるため、還付金の支給が始まったからといって安心してはいけません。“適用後”(還付の支給開始後)の変化にも想像をめぐらせる必要があります。

たとえば、適用期間中に転勤や転職、最悪のケースではリストラや勤務先の倒産などの憂き目に遭う可能性は否定できません。これにより住宅ローン減税の還付が中断されてしまうのか、それとも引き続き適用されるのか?―― 当事者は常にリスクシナリオを描いておかなければならないのです。

そこで、本稿では適用期間中の転職に内容を絞り、当人が転職した場合にどのようになるのかを解説します。


たとえ転職しても、住宅ローン減税には影響しない

転職の面談イメージ写真

働き方改革によって政府も後押しするように、サラリーマンションの転職は日常化しつつある。


では、ここから本題です。前段では危機感をあおるような表現をしましたが、実は転職しても住宅ローン減税には影響が及びません。不利益を被る心配はないのです。以下、「再就職した場合」と「再就職しなかった場合」に分け、それぞれのケースで詳述します。

【再就職した場合】

ここでは当人が給与所得者であることを前提に話を進めますが、この場合は再就職先の年末調整で税還付を引き続き受けられます。改めて確定申告する必要はありません。手続きとしては、再就職先の総務や経理などの担当部署へ以下の(a)と(b)の書類を提出するだけです。すると年明け以降、給与口座に還付金が振り込まれて来ます。

(a)金融機関から郵送されてくる「住宅ローンの残高証明書」
(b)「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」兼「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」

(b)の書類は実に長い名称ですが、もともとは別々に存在していた「給与所得者の~申告書」と「年末調整のための~証明書」が業務の効率性を向上させるべく、兼用(一枚つづり)となりました。機転を働かせ、気の利いた名前を付ければいいのでしょうが、お役所に期待するのは無理があるようです。その結果が、この長い名称です。

入手先は税務署となり、住宅ローン減税の確定申告後に郵送されてきます。税還付の適用期間中の人は、すでに手元になければならない書類です。再就職した人は、いつでも提出できるよう準備しておきましょう。


2010年以前に居住開始した人は、書類の再交付が必要になる

なお、補足として書類が兼用される前、具体的には2010年(平成22年)以前にマイホームを取得・入居した人は、再就職先に提出する書類が増えて、次の3種類になります。

(c)住宅ローンの残高証明書
(d)給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
(e)年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書

注意点として、「(e)年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」は前の勤務先でのみ使用できる内容になっているため、再就職先では年末調整時に使用できなくなっています。そのため、税務署へ同証明書の再交付を申請しなければなりません。郵送あるいは税務署の窓口で対応してくれます。手数料はかかりません。

交付申請すれば、2週間程度で再交付してくれます。そして、その証明書と合わせて(c)と(d)の書類を提出・年末調整することで、引き続き給与口座へ還付金が振り込まれて来ます。


再就職しない場合は、自分で確定申告して還付請求する

税務署のイメージ写真

再就職しない場合は、自分で税務署へ行って還付請求する。


【再就職しない場合】

続いて、再就職しない場合を見ていきましょう。この場合は当然ながら年末調整することができません。従って、ご自身で再度、住宅ローン減税を受けるために確定申告する必要があります。

退職時に勤務先から交付された「給与所得の源泉徴収票」「退職所得の源泉徴収票」、さらに金融機関から毎年郵送されてくる「住宅ローンの残高証明書」などを持参し、所轄の税務署へ還付請求します。

その際、再就職しないことによる不利益(還付額の減少など)はまったくありませんので、その点はご心配いりません。退職時に退職金をもらっている場合は、退職所得に対する税金が源泉徴収されています。その結果、平年より多くの所得税を支払っていることになり、多く徴収された所得税額の分、住宅ローン減税の還付額が増える可能性があります。あくまでケース・バイ・ケースにはなりますが、期待は持てます。

政府は働き方改革を推進しており、終身雇用は“オールドスタンダード”と化しています。もはやサラリーマンの転職は非日常ではありません。その際、適用中の住宅ローン減税がどのように扱われるか、本稿を通じて知っておいてください。

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