非現実的な応益負担

この法案の一番大きな問題点は、「利用したサービスの量や医療費、所得に応じた公平な負担」という部分です。障害者支援費制度の導入以来、サービス利用が急増しており、障害者福祉財政は破綻寸前。制度維持が難しくなり、新たな財源確保のため、これまでの「応能負担」から利用者がサービス量と所得に応じて支払う「応益負担」に改めようというわけです。

具体的に言うと、サービス利用量に応じ、定率1割負担を導入。生活保護世帯は負担ゼロ、市町村民税非課税世帯は所得に応じて15000円~24600円、一般は40200円と、所得に応じて負担上限を定めています。支援費制度では本人が負担できない場合、扶養義務者の収入に応じて負担額が決まっていましたが、この法案では、扶養義務者の負担を廃止した代わりに、本人負担上限額は、世帯収入に応じて決定することになっています。

障害者の多くは低所得であり、これまで障害者の約95%が無料で障害者福祉サービスを利用していました。しかしこの法案が成立すると、生活保護世帯以外は利用料を支払わなくてはならなくなります。障害者年金は月額10万円足らず。この中から、2万も3万も利用料を払って、どうやって暮らしていけばいいのでしょうか。

親元から自立し、一人暮らしを始めた障害者も、また親元に戻らなくてはならなくなるかもしれません。施設に通って、月1万円ほどの給与を得ていた障害者は、法案成立後は逆に施設の利用料を支払うことになります。わずかであっても、自分で働いてお金を得ることを励みにしている障害者はたくさんいます。それすら取り上げてしまうなんて。こんな内容でありながら「自立支援法」とはいったいどういうことでしょうか。

そもそも障害者福祉サービスは、高齢者の介護サービス以上に生活に直結しているもの。障害が重ければ重いほど、多くのサービスを必要とします。生きていくためにサービスが必要なのに、利用するたびにお金を払わなくてはならない。極端に言うと、これからはお金を払わなくては、食事を食べることも排泄をすることもできなくなるわけです。

利用料を負担してほしい、ということであれば、まず払えるだけの収入が得られる就労の場を確保することが先決のはず。障害者雇用が遅々として進まない状況の中で、負担だけを求めても無理があります。

この法案、まだまだ問題点はたくさんあります。
障害者関係の方だけでなく、介護関係の方も、どうかこの問題、関心を持っていただきたいと思います。

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関連リンク

「障害者自立支援法案について」
……厚生労働省のホームページより。障害者自立支援法案の概要、障害者自立支援法案要綱、障害者自立支援法案、新旧対照条文のPDF形式の文書ががダウンロードできます。

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