「小規模多機能ホーム」が少しずつ増えています。利用者の状況に合わせた柔軟な対応ができるよう、デイサービス、訪問介護、ショートステイ、入所など、様々な機能を併せ持ち、しかも利用者10数人程度の小規模のホームです。

この小規模多機能ホームを、10年前に立ち上げた(といっても最初は多機能ではなかったけど)奥山久美子さんが、立ち上げのいきさつから現在までを振り返って書いた『のぞみホームの静かな力』を読んでみました。

介護って、本当はこういうものなんだよなぁ、と、心が温かくなりました。歳をとったらこういうところで暮らしたいなぁ、とも。内容を紹介しつつ、感じたことを書いてみます。


決まり事は何もなし
 筆者の奥山さんは元看護師。患者さんの役に立てる看護の仕事は好きだったけど、雑務に追われて患者さんのそばに行く時間が取れない毎日に疑問を感じて病院を退職。おばあちゃん子だったことから、高齢者の役に立てるボランティアでもしようか、と、住んでいた栃木県の社協(社会福祉協議会)にたまたま電話したことから、のぞみホームへの関わりが始まりました。

そのとき、ちょうど社協は、4カ月後には通っていたデイサービスを利用できなくなるので、地元にデイサービスがほしい、という要望を受けたところ。何もわからないまま、奥山さんは立ち上げに関わることになります。地元にデイサービスがほしいと訴えた2人の利用者の家族と打ち合わせを4回。そして1993年7月、その家族が所有する、6畳2間と4畳半、3DKの貸家を使ってのデイホーム(デイサービス)「のぞみホーム」が、利用者たった2人でスタートしました。

その利用者のうちの1人の利用が、週1回に減ったことから、週4日は利用者たった1人。奥山さんは痴呆がある、たった1人利用者ウメさんと、歌を歌ったり、縁側にやってきた野良猫を眺めたりしながら、のんびりと1日を過ごします。決まり事は何もなし。ウメさんと会話にならない会話をしながら、その日の過ごし方を決めるという毎日。

拾った犬を連れて散歩に行くと、ウメさんが普段発しない言葉を犬にかけているのに驚き、それからは晴れれば2人と1匹でせっせと散歩へ。食事の時間は、ふと気がつくとウトウトしていたりするウメさんに時々声をかけ、マイペースで食べてもらうと2時間かかって終了。排泄はパットを当てつつトイレ誘導し、排泄時間を記録する。排泄パターンが変われば、それに合わせて誘導する。

すべて、ホームの都合ではなく、利用者の状況に合わせているうちにペースができていったというところがすごい。これも利用者1人、2人だからできたことだとも言えますが。

>>次は人の生活は毎日違うもの