国債残高の増加が、長期金利の上昇要因となる(?)
「国債残高が増えて財政が悪化すると、長期金利が上昇する」―― 金融や財政を勉強した人なら、誰もが一度は耳にしたことのあるフレーズでしょう。

わが国の借金(国債と借入金、政府短期証券の合計)は2009年6月末現在、およそ860兆円です。100年に一度といわれた未曾有の金融危機から脱却すべく、先の麻生政権では総額75兆円もの景気刺激策が発動されました。そして、こうした借金が積もり積もって、日本は今や世界ワースト・ワンの財政悪化国になってしまいました。

となれば、教科書的には長期金利が上昇しても不思議ではありません。借金増大による財政の不安定化は、その国の信用力を低下させます。日本に信用がなくなれば、当然、誰も国債を買ってはくれません。よって、債券価格は下がり、長期金利(利回り)が上昇するというシナリオが現実のものとなるはずです。

ところが、これまでの推移を見る限り、長期金利は低位安定を継続しています(下グラフ参照)。預貯金の金利こそゼロ近傍と寂しいかぎりですが、他方、住宅ローンは「借りやすい」「返しやすい」環境が続いています。急激な金利上昇は住宅ローンを抱えている人にとって、このご時勢、死活問題につながりかねません。そうした心配が少ないのも、すべて長期金利が“低空飛行”だからです。

では、なぜ長期金利は上昇しないのでしょうか。そこには、大きく2つの理由がありました。(1)「景気見通しの不確実性」と(2)「銀行による国債の大量購入」が長期金利の上昇圧力を排除していました。今後の金利動向を占う上でも、上昇しない原因の分析は重要な情報となります。そこで以下、1つずつその理由を見ていくことにしましょう。

「わが国の景気は下げ止まっている」 日銀・金融経済月報


昨年9月15日のリーマンショックから1年。日本経済は2007年11月から始まった景気後退の最悪期を脱し、経済指標(マクロ経済)を見る限りにおいては回復方向に向かい始めています。内閣府発表による今年4~6月期のGDP(国内総生産)改定値は年率換算でプラス2.3%、5四半期ぶりにプラスに転じました。また、経済産業省発表の7月の鉱工業生産指数は5カ月連続で前月を上回り、日本銀行による8月の金融経済月報でも「わが国の景気は下げ止まっている」との判断が示されています。

ご存じ、定額給付金に始まり高速道路の通行料1000円、エコカー減税にエコポイント制度、さらに、マイホーム取得にかかる住宅ローン減税と、様々な景気対策が実施されています。「ばらまき」との批判がある一方で、こうした刺激策がそれなりの効果を生み出していることは間違いなさそうです。

長期金利の性格からして、景気見通しに明るさが戻れば、教科書的には金利上昇してもおかしくありません。しかし、そこには「ジョブレス・リカバリー」という魔物がいました。この魔物が景気の先行きを不確実なものにしていました。

長期金利(新発10年物国債利回り)の推移
(出所)QUICK