(記事掲載/2006.11.26)

第2・第4日曜に更新「政治の時事用語」。今日は安倍内閣が来年度からの設立を目指しているといわれる「日本版NSC」についてです。

「日本版NSC」による外交・国防の一元化はかる

日本版NSC
今まで二元化されていた外交と防衛、その他の対外政策の決定を一元化しようというのが日本版NSC構想。
NSCとは、アメリカのホワイトハウス(大統領府)に置かれている「National Security Council」の略で、「国家安全保障会議」と一般には訳します。

アメリカでは大統領のもと、外交を担う国務長官、国防を担う国防長官、そして大統領補佐官やその他の関係官僚が集まり、ここで対外政策に関する戦略や対応を一元的に練っているといわれています。

これに対して、日本は内閣のもとに、外交は外務省、国防は防衛庁などと「縦割り」の状態になっていて、まとまっていません。そして、外交・防衛などを総括して情報収拾をしたりするようなポストや事務局もありません。

このようなことをなくして対外政策決定の一元化を行い、同時に対外政策に対する首相リーダーシップの向上を図るため、日本版NSCが作られようとしているのです。

なぜ日本にはこのような組織がなかった

実は日本にも「安全保障会議」というものが置かれています。

これは首相をはじめとして、関係閣僚が議員となっているもので、自衛隊の幹部も参考人として出席するものです。1986年に設置されました。

しかし、この会議はあくまで「国防問題」に限定されたもの。たとえば北朝鮮のミサイル発射の脅威に対して、「自衛隊はこういう行動をし、外交ではこういうことをする」ということを一括して話し合う場ではありません。

ですからもちろん、外交とたとえば日米安保戦略などについての長期的な戦略、構想などを練る場ではないといわれています。小池首相補佐官(安保担当)に言わせれば、「(官僚や自衛隊の)意見を聞く場」でしかない、というものにすぎないというもののようです(「読売新聞」より)。

そこで、経済財政諮問会議のように、対外政策の柱となる戦略を首相を中心に練る場として、「日本版NSC」が必要ではないか、といわれていて、来年度から設置しようと準備がされているのです。

アメリカのNSC

ホワイトハウス
アメリカのNSCはホワイトハウスのなかで、大統領と側近である補佐官を中心に対外政策や戦略が話し合われているといわれている。
アメリカでNSCが置かれたのは第2次世界大戦が終結したときの大統領、トルーマンのときです。アメリカが超大国となり、しかも冷戦を迎えるなか、アメリカは国家戦略を決定する場を必要としたからです。

NSCを発展させたのが1970年代のニクソン大統領です。ニクソンはキッシンジャー補佐官(後の国務長官)に大きな権限を与え、彼を中心としたNSCの改編を進めました。委員会が設置され、会議も定期的なものになっていきました。

このような形で、大統領によって違いはあれ、NSCは今ではアメリカの対外戦略構築にとって欠かせないものとなっています。

そして、ニクソン政権の頃からなくてはならない存在となったのが安保担当の大統領補佐官です。大統領の代理人として、彼らが事実上NSCの仕切り役となっています。そのため、大統領補佐官が誰になるかは大きな関心事なのです。

日本版NSC、課題や問題点は?

アメリカの大統領と政権は、最低4年の任期が保障され、そのなかで中期的な視野で戦略をたてることができます。

しかし、議院内閣制をとる日本の首相の平均任期は短く、いきなり辞職、失脚ということもありました。このような日本の政治のなかで、「日本版NSC」を作ればすぐに対外戦略がうまく立案できる、と楽観することはできないでしょう。

目まぐるしく政権が変わっていくなかで、いつしか「日本版NSC」を牛耳っているのは結局官僚たちだった、ということがないようにしなければなりませんね。

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