文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
Jパワーの株式買増し申請をしていた投資ファンドに、日本政府が「NO」を突きつけました。「安全保障」VS「市場開放」という2つの立場の意見が対立するこのJパワー問題をきっかけに、改めて民営化のあり方が問われています。

<INDEX>
Jパワーは公益企業、「外資はご遠慮下さい」(1P目)
閉鎖的な日本の市場は、魅力なし?(1P目)
「たった1件の買い増し拒否が、問題?」(2P目)
そもそも、民営化の基準に問題はなかったか(2P目)

Jパワーは公益企業、「外資はご遠慮下さい」

取引
イギリスの投資ファンドに日本政府が突きつけた「NO」が、日本の首を絞めることにも
Jパワーの正式名称は「電源開発株式会社」、その名の通り電気事業を行う企業で、発電した電力を各電力会社に卸売りしています。そもそも国営でしたが、特殊法人改革で民営化し、その株式が2003年より東証に上場しています。

以前からJパワーの株式の9.9%を保有していたイギリスの投資ファンド、TCI(ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド)は、外為法に基づいて2007年1月に日本政府にJパワーの株式買い増し申請をしましたが、日本政府は4月17日に買い増し中止を勧告。その理由は、「国益を守るため」。Jパワーは原子力関連事業を行っているので、外国資本の下では、電力の安定供給や原子力政策に影響を与えるおそれがある」ということなのです。

これに対し、TCIは「日本の市場に長期的な投資を呼び込む機会が失われた」とコメント。6月末のJパワー株主総会に向けて増や持ち合い株の制限など株主議案を提出しました。

閉鎖的な日本の市場は、魅力なし?

株式市場関係者の間では、これをきっかけに、ある心配が浮上しています。以前から言われていた「日本の市場が閉鎖的だ」という指摘が再燃するからです。いまや、日本の株式市場における主力の投資家は外国人投資家。彼らが日本の株式市場から手を引いてしまうと、売買が低迷し、株価下落を招く恐れがあります。

ただでさえ、米国サブプラムローンの余波、資源高とドル安による日本企業の業績低迷が心配される中、これ以上株式市場に悪材料を持ち込んでほしくないというのが市場関係者の本音でしょう。

また、先だってインドのタタ自動車が、株式とほぼ同じ機能を持つ日本預託証券(JDR)を今夏にも東証に上場させたい意思を表明したばかりです。今後、日本の資本市場で外国企業に投資がしやすくなると期待されている今、日本の市場が魅力無しと外国企業に印象づいてしまうと、この流れも後退しかねません。今後、Jパワー問題の行方は、目が離せないものとなるでしょう。

しかし、安全保障を重視する意見も、もっともです。次のページでは、国家の安全を保ちつつ、市場を開放するためにすべきことを考えてみましょう。