人間の全遺伝情報であるヒトゲノム。これは人体の設計図と言えるものであるが、この解読競争は特許取得を含め、米国のベンチャー企業を主体に激しさを増している。

当初、全遺伝子情報の解読終了は2005年頃と予定されていたが、米国のバイオテクノロジー・ベンチャー企業、セレラ・ジェノミクス(メリーランド州)やインサイト・ファーマシューティカルズ社(カリフォルニア州)により、この解読が、2000年6月末にほぼ終了した。

我々の体を造っている細胞は実に60兆個もあるそうだ。この細胞の中を順番に分解していくと以下のようになる。それぞれの細胞の中には核があり、この中には23対(46本)の染色体が含まれている。これはDNAと呼ばれる糸状の化学物質で、縄ばしごをねじったような2重ら旋構造からなっている。このDNAの中にある各種情報が遺伝子であり、31億8000万個と推定される塩基4種類の組み合わせで暗号のように書かれている。

この遺伝子が我々の体の特徴を決める情報をもっている人体設計図なのである。皮膚、臓器、骨やホルモンといったものの細胞には、それぞれの固有の遺伝子があり、顔の皮膚からは顔の細胞がコピーされるのである。この遺伝子の組み合わせが情報となって親から子に伝えられるのだ。

テレビのレポートによると、南大西洋のトリスタン・ダ・クーナ島では、隔世遺伝により半数以上の人が喘息にかかっているそうだ。空気のきれいな素晴らしい環境にもかかわらずである。ここはアフリカ大陸と南米大陸の間にあるイギリス領の島である。この島民284人はほとんど孤立した状態で暮らしている為、世代交代につれ喘息が遺伝したようである。

そこでカナダのトロント大学医学部では、島民を喘息グループとそうでないグループに分け遺伝子の研究をした。この研究の受託をしたベンチャー企業は、この共通遺伝子を発見して特許取得をした。

またパナマ北西部の山岳にグアイミー集落がある。ここも外との交流があまりない少数民族の地である。そしてグアイミーは成人T細胞白血病のウイルスに感染しても発病しないので知られていた。アメリカの国立研究所は、この住民の血液を採血して、住民に無断で遺伝子研究をし特許取得をしたのである。この特許申請者はアメリカ商務省であった。

これらは今後の新薬開発や遺伝子医療において、特許による独占権を確保し、遺伝子ビジネスで大きなアドバンテージを得ようとするものである。企業の利益や国益が優先された状態といえそうだ。