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相手の怒りを鎮めるには? 心理学を活用してクレーム対応!

今回は、クレームの心理学についてご紹介いたします。お客様の怒りを静めるためにはどうしたら良いのでしょうか? 失われたコントロール感を取り戻させること、そして傷ついた自尊感情を癒してあげることが大切です。参考にしてみてください。

執筆者:鹿俣 之信

相手の怒りを鎮める心理学…クレーム対応に!

クレームの心理とお客様への対応は?

クレームの心理とお客様への対応は?

今回は、お客様の怒りを静める具体的な方法を紹介します。お客様の怒りを静めるには、失われたコントロール感を取り戻させ、傷ついた自尊感情を癒してあげることがポイントとなります。

お客様の失われたコントロール感を回復するには、お客様がコントロール感を得られるように応対することで、失った分を埋め合わせます。差し引きゼロになるとお客様の怒りは静まり、プラスになると人を許す寛大さが生まれます。コントロール感が十分に高まれば、お客様は関係修復に向けて積極的に行動するようになります。
 

内的コントロールと外的コントロール

コントロール感とは、自分が行動することによって、望み通りの状況を作り出せるという感覚のことです。私たちにとってコントロール感を持つことは、とても重要なことです。

心理学では、「物事をコントロールしているのは、自分の行動や能力などである」と考える傾向が強い人を「内的コントロール型」といいます。逆に、「物事をコントロールしているのは、他者や運など自分以外のものである」と考える傾向が強い人を「外的コントロール型」といいます。

内的コントロール型の人は、日頃からコントロール感があるため、多少コントロール感を失っても、それを取り戻そうと「怒る」必要はありません。一方、外的コントロール型の人は、日常的にコントロール感が得られないため、自分に少ししかないコントロール感が奪われると、それを取り戻そうと「怒る」のです。

些細なことですぐに腹を立てる人は、外的コントロール型であることを理解しなければいけません。彼らにとっては、ほんの少ししかないコントロール感はとても大切なものなのです。
 

会話の主導権はお客様に

「おまえの会社はどうなってんだ!いつまで待たせるつもりだ!」感情的になってしまったお客様の言葉は容赦ありません。なんとか怒りを静めようと「申し訳ございません」と謝ってみても「謝って済む問題か!ふざけるな!」と、すかさず返ってきます。

このような場合、お客様を納得させようとするのは逆効果になります。クレーム応対の研修で必ず教わる基本のひとつに「お客様の話をよく聞く」があります。これは、聞き役に徹することで、お客様にたくさん話していただくということです。

感情が高ぶっているお客様は、不満に思っていることをすべて話してしまいたいという欲求があります。私たちは、お客様がすべて話し終えるまで邪魔をせず、事情を聞くことに専念すべきなのです。

私たちが話すと、お客様から会話の主導権を奪ってしまうことになります。私たちの目的は、お客様を説得することではありません。ここがポイントです。怒っているお客様を説得しようとすると、怒りが静まるどころかますます怒らせてしまいます。私たちの目的は、お客様の失われたコントロール感を回復させることなのです。

お客様の話をよく聞くということは、会話の主導権はお客様にあるということを暗に示します。私たちが聞き役に徹すれば、お客様はコントロール感を取り戻し、自然と怒りは静まります。

※お客様が話すことによって、自分の誤りに気づいてくれることもしばしばあります。
 

要求を通すことに意味がある

感情的になっているお客様は、失われたコントロール感を取り戻そうとして、私たちに何らかの要求をします。要求は、代金の払い戻しであったり、原因の説明であったり、謝罪であったりします。

ここで重要なのは、要求の内容ではありません。お客様にとっては、要求の内容よりも「要求を通す」ことに意味があるのです。お客様は、私たちに要求を受け入れさせることで、コントロール感を得たいのです。

感情的になっているお客様は、ときに無理難題を要求する場合もあります。しかし、お客様の要求はどんなものであっても真摯に受け止める必要があります。このような場合でも、要求を分割したり、代替案を提案したりすることで、できるだけお客様の要求を受け入れるように努めます。

お客様の要求が分からない場合は、率直に尋ねるのがよいでしょう。「できる限りのことをさせていただきたいと思います。どのようにすれば納得いただけますでしょうか」「お客様に納得していただくために、私たちにできることはございますでしょうか」この言葉は効果的です。
 

要求を引き出すテクニック

感情的になっているお客様は、冷静さを欠いているため、要求があいまいだったり、到底無理なものであったりします。このような場合は、お客様が要求を出しやすいように誘導することもテクニックのひとつです。

例えば、不良品が届いて怒っているお客様に対して、「1.新品と交換する。2.代金をお返しする。3.修理する。」という選択肢を提示するのはよい方法です。提案がひとつだけだと押し付けられているように感じさせてしまうため、複数の選択肢を用意することが大切です。


お客様の失った自尊感情を回復するには、お客様に敬意を示すことで失った分の自尊感情を埋め合わせます。差し引きゼロになるとお客様の怒りは静まり、プラスになると人を許す寛大さが生まれます。自尊感情が十分に高まれば、お客様は関係修復に向けて積極的に行動するようになります。
 

尊敬されたい心理

自尊感情とは、自分を好きという感情、自分を大切に思う感情、自分の存在を肯定する感情です。自尊感情は、現実の自分と理想の自分とのギャップの大きさによって決まります。現実の自分が理想の自分に近いほど、自尊感情が高く、現実の自分が理想の自分とかけ離れるほど、自尊感情が低くなります。

私たちは、自分が正しいと思うことをやり遂げたとき、自分自身に満足し好感を持ちます。主体性(コントロール感)を持って自分が正しいと思う行動をしたときに、自尊感情は育まれるのです。

逆に、悪いことだと分かっていながら欲望に負けて行動してしまったりすると、自己嫌悪になります。主体性(コントロール感)がなかったり、正しいと思えない行動をすると、自尊感情は傷ついてしまいます。

自尊感情が高い人は、他人に不当な扱いをされても寛大でいられます。なぜなら、自尊感情が高いため、他人からどのように評価されようと、自分自身の評価にあまり影響を受けないからです。

一方、自尊感情が低い人は、他人に不当な扱いをされると頭にきます。自尊感情が低い人は、自分自身を尊敬できないため、他人から尊敬されることで、間接的に自尊感情を得ようとします。つまり、他人から尊敬されれば自尊感情が高まり、他人から尊敬されなければ自尊感情が低くなります。自分を好きか嫌いは、他人の評価にかかっているわけです。

些細なことですぐに腹を立てる人は、日頃から自尊感情が高くないということを理解しなければいけません。彼らにとって、他人からの尊敬が自尊感情を得るための唯一のよりどころなのです。だから他人からの尊敬が失われたり、失われそうになったりすると怒るのです。

お客様が怒るのは、失礼な扱いをされたことで一時的に自尊感情が低くなってしまったか、あるいは日頃から自尊感情が低いかのどちらかです。いずれにしても、お客様に敬意を示すことが最善の策です。敬意はお客様の心の栄養となり、自尊感情が癒され、自然と怒りは消えていきます。
 

不快な思いをさせたことを謝る

お客様の自尊感情が傷つくのは、「大切にされていない」「尊敬されていない」「侮辱された」などと「感じる」からです。実際に私たちがお客様にどう接したかではなく、お客様が「どう感じたか」が問題なのです。

そのため、丁寧な応対を心がけていても、不快な思いをさせてしまうこともあります。よかれと思ってしたことが裏目に出てしまうこともあるかもしれません。

まずは、お客様に不快な思いをさせてしまったことを、素直に謝罪しましょう。「不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません。私どもの配慮が欠けておりました。」たったこれだけの心づかいがあるのとないのとでは、その後の展開に雲泥の差があります。
 

行動で謝罪の意を示す

心のこもった謝罪の言葉はとても有効ですが、言葉だけの謝罪では本当にお客様の自尊感情を癒すことはできません。謝罪は、行動が伴ってはじめて謝罪といえるのです。「あいつはすぐに謝るが、口だけだな」と思われてしまったら、信頼を回復するのが非常に困難になってしまいます。

謝罪をカタチのあるものにするには、二度とこのようなことがないことを約束し、実際にそのとおりに行動する必要があります。行動が伴った謝罪は、「お客様は大切な存在であり、今後もよい関係を続けていきたい」というメッセージになり、失った信頼を回復するのです。


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