セールスでは「見込み客の縫い目を見る」

相手の関心の変化を観察する
ガルウェイ氏はこの「教えない」コーチの考え方を、テニスではなくスキーやゴルフなどの他のスポーツ、さらにはセールスなどのビジネス分野に応用して成果をあげてきました。例えば、「教えない」コーチであれば、セールスに対してどんなアプローチをするでしょう? 先ほどのテニスの例を参考に考えてみてください。

セールスではテニスのボールに当たるものは見込み客です。ラケットに当たるものは、商品知識・セールストーク、パンフレットやプレゼンテーション資料などのさまざまなセールスツールです。従来の「教える」コーチであれば、「こんなときにはこう言いなさい」「ああ言われたら、こう切り返せ」といったラケットの使い方の指示を出すところでしょう。「教えない」コーチであればどうするでしょう?

ここで思い出してもらいたいのが、「ボールの縫い目を見る」。セールスにおいて、「ボールの縫い目を見る」ことは何に当たるでしょうか? ガルウェイ氏はビジネスへの応用例を取り上げた著書・『インナーワーク』でこんなやり方を紹介しています。

「見込み客の関心レベルの変化に注意しなさい」

見込み客が商品・サービスにどれだけ関心を持っているかに注目し、そのレベルを上げようとするのではなく、どのように変化していくかをただ観察するわけです。これによってテニスの場合と同じことが起きます。

「見込み客の状態がより把握できる」

見込み客への注意が高まりますから当然のことです。そして、このことはセールスにとってプラスであることは言うまでもありません。さらに重要なのは、注意が見込み客に向くことで、「売ろう」という力みがなくなることです。リラックスした状態で、ラケットに当たる商品知識をはじめとするツールを使うことができるようになるのです。

教える上司・教えない上司

教えるコーチ・教えないコーチ。いかがだったでしょう? あなたは上司として、どちらのコーチですか? 従来のスポーツのコーチの延長でコーチングを考えていた人には、新しいコーチングについて理解するきっかけになったと思います。

まずは、「部下の“縫い目”を見る」ところから始めたらどうでしょう? 具体的には部下のモチベーションレベルの変化を観察することなどが考えられます。

また、「自分の“ラケット”がどこにあるかを感じる」ことも有効です。例えば、あなたが部下に対してどんな言葉を、どんな言い方で、どんな姿勢・ボディランゲージで出しているか? ただただ、観察してみてはいかがでしょう。ICレコーダーで録音して、後で聞くのもいいかもしれません。

「教えない」上司への変身は、部下だけでなくあなた自身もリラックスさせ、成長を促していきます。試してみてください。

【参考図書】
■『新インナーゲーム―心で勝つ!集中の科学 インナーシリーズ』(W.T.ガルウェイ著 後藤 新弥訳 日刊スポーツ出版社)
■『インナーワーク―あなたが、仕事が、そして会社が変わる。君は仕事をエンジョイできるか!』(W.T.ガルウェイ著 後藤 新弥訳 日刊スポーツ出版社)

【関連サイト】
■「スポーツ選手に学ぶ成長の秘訣――イチローは“言葉”に敏感!」
■「現有戦力を徹底活用した中日・落合監督に学ぶ――優勝に導いた「俺流」コーチング」
■「スポーツのコーチング・マネジメントに学ぶ」

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