「教えない」コーチは何をする?

ボールの縫い目を見る
教えることの弊害と、教えないことの可能性に気づいて、新しい「教えない」コーチを始めたのは当時テニスのコーチをしていたW.T.ガルウェイ氏。今から30年以上も前のことです。彼は選手に対する言葉を減らして、ただ選手を観察したときに、選手が自然に正しいやり方を習得するのに驚いたといいます。そこから、彼はさまざまな「教えない」コーチング手法を開発していきました。
W.T.ガルウェイ氏とは?

その一つが「ボールの縫い目を見る」

テニスの選手に、「ボールの縫い目を見る」ことだけを意識させるのです。これは難しいことではありません。とはいえ、単に「ボール」を見ることは簡単ですが、「ボールの縫い目を見る」ためにはかなりの注意が必要となります。これによって、これまでよりも早い時点からボールを見始めるようになり、打つ直前まで見続けることができるようになるのです。

「ボールがずっと大きく見えるようになった」

選手の多くが持つ感想です。こうなれば当然、ボールを打つことも楽になり、より思い通りに打てるようになることは言うまでもありません。

そしてさらに重要なのは、ボールへの集中が強いので、「ああしよう・こうしよう」という余計な考えや力みがなくなり、リラックスした状態を保てることです。肉体の自然な動きがそのまま出ることで、結果としてうまく打てるようになるのです。こうやって「教える」コーチングが作り出す状態とは対極の状態を作り出していくのです。

自分の現状を知れば変わり始める

もちろん、ボールに集中するだけで何もかもがうまくいくわけではありません。テニスでいうと、もう一つの大事な要素はボールを打つラケットです。

従来の「教える」コーチであれば、「ラケットをもう少し早めに引いて」とか「もっとボールを自分よりも遠い位置でとらえて」といった指示をするかもしれません。しかし、ガルウェイ氏の場合は違います。

「ラケットがどこにあるかを感じてみて」

ラケットをどうするかではなく、ただ位置を感じるように言うだけです。どこが正しい位置なのかを教えるのでもありません。正しい・間違っているかを判断するのではなく、ただ観察することを促していきます。

「ラケットが早めに引けるようになってきた」

観察することを続けていくと、ラケットを引くタイミングなどが自然と変わっていきます。ラケットに対する意識のレベルが上がる中で、意図的にある部分を直そうとしなくても、自然と直っていくのです。

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