不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

宅地建物取引士になることは難しいの?(2ページ目)

あなたも「宅地建物取引士」になることができます。一度、試験勉強にトライしてみるのもよいでしょう。しかし、不動産会社に就職することはよく考えてから決めてください。(2015年改訂版、初出:2006年3月)

執筆者:平野 雅之


ひとくちに不動産会社といっても、その営業内容や営業方針は千差万別です。さらに新入社員に対する教育姿勢も、会社によって天と地ほどに違うでしょう。

近年ではだいぶ改善されつつあるでしょうが、ひと昔前のあるマンション販売会社では新入社員に対して不動産のことは何も教えないまま、とにかく朝から晩まで電話営業をさせ続けることが通例になっていたようです。

不動産営業ではなく、単なる自社商品の電話セールスに過ぎません。たまたま取り扱う商品がマンションだったというだけのことです。

マンションの外観

不動産業とはいえないような実態の会社も……

手当たり次第に電話をして、強引でも何でもとりあえずお客様をモデルルームまで連れ出せば、あとは別の担当者が契約までこぎ着けてくれますから、「商品」以外の不動産について知識を得る機会すらありません。

それなりにキャリアを積んだ40歳代半ばの営業部長が「謄本ってどう見りゃいいんだ? 甲区と乙区ってどう違うんだ? 抵当権っていったい何?」と平社員に真顔で聞いていた、という笑うに笑えない実話もあります。

また、大卒の新入社員を数十名、あるいは百名以上採用し、その家族や親戚に1戸ずつマンションを買わせていたという不動産会社もあります。さらに、かつては活発に分譲をしていたある会社では、新入社員の入社式に親を同伴させ、その場で「売買契約書」にサインさせたことがあるのだとか。

そうやって新入社員1人につき1戸ずつ売れば後はもう用済みですから、いちいち不動産について教えるような手間を掛けることはないわけです。

当然ながら大半の社員は半年ともたずに辞めるのですが、それでも残れば上記の部長さんのようになってしまうわけです。もちろん、そんな不動産会社ばかりではありません。しかし、そのような不動産会社の流れをくむところもいまだに存在しているのが実態でしょう。

その一方で、新入社員にはしっかりと不動産知識や接客マナー、お客様へのアドバイス方法などを教え込み、一人前の営業担当者になるように教育体制を整えている不動産会社もあります。

前ページの宅地建物取引士との関係でいえば、「5人に1人の有資格者」などという宅地建物取引業法の規定に甘えることなく、全社員が宅建資格を取得するように指導をしている会社もあるようです。そもそも「5人のうち4人は資格がなくても良い」とする宅建業法自体がおかしなものかもしれません。

社員に対する教育体制の最も優れた会社での1か月の経験のほうが、最も劣った会社での20年の経験よりも勝る、といっても過言ではないほどに中身は違うのが実情でしょう。もちろん、個人の心がけ次第の部分も大きいのですが……。

ご相談の内容に戻って、いずれにせよ不動産業界に入ること自体は反対しませんし歓迎も致しますが、入る会社を間違えると大変な目に遭います。

分譲や媒介だけでなく不動産業の中にもさまざまな業態がありますから、自分が何をしたいのかをよく考え、しっかりと会社の中身を見極めるようにしてください。


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