住宅購入の費用・税金/住宅購入の税金

マイホームの売却で損失が生じたときの特例(3ページ目)

マイホームを売却したときには、譲渡損失を生じることが少なくありません。この場合には所得税などを還付してもらい、その損失を取り戻すことのできる制度があります。少しでも多く還付が受けられるように、制度の仕組みをよく理解しておくようにしましょう。(2017年改訂版、初出:2006年6月)

執筆者:平野 雅之


マイホームを買換えないとき
〔特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例〕

前ページで説明した従来からの特例は、新たなマイホームに買換えることが要件です。

しかし、不動産価格の下落によって買換えができないケースも多いことから、2004年度の税制改正により「買換えを要件としない」譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例制度が導入(2004年1月1日以降の譲渡より適用)されました。

マイホームを買換えた場合であっても、こちらの特例のほうが有利であればこちらを選択することができます。ただし、こちらの特例では従前のマイホームに対する住宅ローンの要件が加わることに注意しなければなりません。

なお、従来からの特例と同様に2017年12月31日までに居住用財産を譲渡することが要件のひとつとなっています。期限の延長については改めてご確認ください。


特例の対象金額は?

この「買換えを要件としない」特例の対象となるのは、次のうちいずれか低いほうの金額です。

〔取得費-譲渡価額+譲渡費用〕
・・・(譲渡損失額)

〔住宅ローンの残高-譲渡価額〕
・・・(譲渡代金で返済しきれない住宅ローンの残存額)

譲渡する住宅を、当初に物件価格の全額に近い(または物件価格を上回る)住宅ローンを借りて購入したような場合や、変動金利による未払い利息の発生で住宅ローン残高が膨らんだような場合を除けば、通常は の〔住宅ローンの残高-譲渡価額〕のほうが低い金額になりますから、〔住宅ローンの残存額〕がこの特例の対象額だと考えて差し支えないケースが大半でしょう。

なお、控除額の計算方法や年数、控除を受ける年ごとに確定申告が必要なことなどは前ページの特例の場合と同様です。

ただし、住宅ローンを返済しきれずに残存額が生じるにもかかわらず、あえて売却しようとする人(その必要に迫られる人)は相対的に少ないうえ、残存額が大きければ通常は金融機関が抵当権の抹消に応じてくれず、結果的には売却することができません。

そのため、この特例を利用できる人の割合そのものが少なく、特例が導入されてからの利用実績もさほど多くないようです。


譲渡する居住用財産の要件

譲渡する年の1月1日時点における所有期間が、土地家屋ともに5年を超えていること
  ※ 災害により家屋が滅失した場合で、その家屋を引き続き所有していたなら5年を超えることになるときは、土地のみの所有期間が5年を超えていれば適用されます。ただし、家屋の滅失後3年目の年の12月31日までに譲渡しなければなりません。
   
自分が住んでいる住宅の譲渡、もしくは住まなくなってから3年目の年の12月31日までの譲渡であること
  ※ 国内にある住宅にかぎられます。
  ※ 2つ以上の住宅を所有している場合には、主として居住の用に供しているほうの住宅にかぎられます。
  ※ 店舗や事務所などとの併用住宅の場合には、控除の対象が居住用部分の面積で案分した損失額にかぎられます。
   
譲渡する相手が自分の配偶者(内縁関係を含む)、直系血族、生計を一にする親族など特殊な関係者ではないこと
   
譲渡の契約締結日の前日時点において、譲渡する住宅にかかる「返済期間10年以上の住宅ローン」(金融機関などからの住宅ローンや社内融資)の残高があること

なお、家屋とともに譲渡する「敷地の面積」(借地権等を含む)が500平方メートルを超える場合、500平方メートルを超える部分についての損失は譲渡した年の損益通算の対象にはなりますが、翌年以降の繰越控除はできません。


その他の要件

繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下(給与所得のみの場合は年収が3,336万円以下)であること
  ※ 譲渡した年における損益通算は所得金額に関係なく適用できます。
   
譲渡した年の前年または前々年に、居住用財産の譲渡に関する他の課税特例(3,000万円の特別控除買換えの特例軽減税率の特例など)の適用を受けていないこと
   
譲渡した年の前年以前3年以内に生じた他の居住用財産の譲渡損失について、この特例などの適用を受けていないこと


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マイホームを売却したときの税金の基礎知識
マイホームの売却と3,000万円の特別控除
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