一歩進むたびに明るくなるエントランス

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 見落としてしまいそうな敷地
廣部剛司(廣部剛司建築設計室)さんが渋谷に建てた「黒箱-渋谷H」を見学しました。住宅が密集する旗竿状の敷地に、究極の贅沢ともいえる自分だけの庭、自分だけの空を確保したこの家は、まだ見ぬパートナーとの暮らしを想定した「犬と住む家」でもありました。
地図も住所も手元にあったのになかなか見つからずウロウロしてしまいましたが、それもそのはず間口がかなり狭く、外に向けて建物が露出している部分がほんとに少ない。しかも外壁が黒っぽいガルバリウム鋼板、人知れず目立ぬように建てられたという印象の一軒だったわけです。

ところが一歩足を踏み入れてビックリ! 閉ざされた感じの外観に比して、中にはこれでもかというほど開放感を強調した居住空間が広がっていました。
旗竿の竿にあたる部分には、エントランスが住まい手を迎え入れるように張り出してきています。ドアを開けて入るとそれが仄暗いアプローチ(路地のような通路)になっていて、奥に進むに従って明るさを増していき、やがて開放的な中庭を持つ大リビングに繋がっていきます。

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光の方向に向かって通路を進む
このエントランスは行き当たって90度に折れ、さらに数メートル続いているわけですが、この長さがなかなかいい!通路の下部に窓を設けて中庭からの光を見せ、少しずつ少しずつ明るくなるという仕掛けになっている。心憎い配慮ですねー。そしてこの感覚はリビングにもそのまま持ち込まれ、全体がひとつの空間として生きている。どこか渡り廊下で一連なりに繋がっていく伝統的な日本家屋の造りを思わせます。
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閉ざされた空間から開かれた空間へと続くアプローチ

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通路の下部に開けられた窓から中庭を見る

渋谷のど真ん中にいるのをしばし忘れる

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吹き抜けを持つ大リビング、窓は折れ戸で全開放できる

リビングは2層分の吹き抜けを持つ大空間で、これはそのまま2階の主寝室とも連なっているわけですが、廣部さんはダイニングテーブルを中央に据え、その奥に孟宗竹が植えられた坪庭を持つ小さな畳敷きの間、これに沿う形で内壁の向こうに水回り、手前(南側)には同じ素材の床面で繋がる中庭を持ってきました。これによって、この家はダイニングテーブルを中心に、生活機能がぐるりと配された、シンプルで使い勝手のよい居住空間になったわけですね。

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家の中心になるダイニングテーブル、タイルの下は床暖房

和室から孟宗竹のある坪庭を見る
複雑な形状のバスルーム

それにしても、リビングから見る中庭はバツグンの開放感。天井の高さ、開口部の大きさも申し分ありません。また周囲の建物がまったく見えない設計のためか、庭からは蒼く澄んだ空しか見えず、ここが渋谷のど真ん中であることを忘れてしまいます。

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リビングからの眺め、この大空間を独り占め!

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渋谷にいることを忘れさせてしまうような青空が広がる

-->>続いて中庭から2階へ!