そもそも「生もと(きもと)造り」の日本酒とは?

雑菌に対抗できる有用な微生物である乳酸菌。清酒造りに昔から不可欠なものである。現在の一般清酒造りでは人工的に培養した乳酸菌を使用する「速醸もと」仕込みが主流だが、伝統製法として、蔵内や空気中に自然に生息する天然の乳酸菌を、蒸米と水と麹を桶に入れ、時間をかけすりつぶすように練り上げる作業「もとすり」または「山卸し(やまおろし)」によって、時間をかけ自然に取り込み、自然に培養しながら、酒母造りに利用する「生もと(きもと)造り」、「生もと(きもと)仕込み」がある。

この製法によって生まれた清酒は、ヨーグルトのようなまろみのある酸味と旨味たっぷりのボディと深みを持つ飲み応えある味わいとなる。ちなみに「山卸し」作業を簡素化した(=廃止した)「山卸し廃止(略して山廃)もと」仕込みもある。

生もと造りで人気の銘柄ベスト5を紹介しよう。どれも日本酒ファンが注目する逸品ばかりだ。


【INDEX】  

5位:花垣 生もと純米 生もと米しずく

花垣 生もと純米 生もと米しずく
 
良質の米と名水の里、福井県奥越前「大野市」の名醸蔵、南部酒造。銘柄は「花垣」。有機米への取り組みも長く行っており、よりピュアな、より自然な日本酒造りにまい進する蔵だ。

まさに「米のしずく」そのものの味わいを堪能できるのがこの生もと。炊き立てのご飯やつきたての餅のような日本人ならほっと安心するような米の香り。滑らかで角が取れた舌触りとすきっとした後味。酸度2.1度と高めな数値が全体を引き締めている。ひっかかるものが何もない極上のしずくである。ヌル燗がいい。福井の名珍味「ヘシコ(鯖の糠漬け)」とは、ロックフォールとソーテルヌ以上のマリアージュといってもいいだろう。

詳細記事:南部酒造訪問記事その1
詳細記事:南部酒造訪問記事その2
詳細記事:南部酒造訪問記事その3
詳細記事:南部酒造訪問記事その4

<DATA>
1800ml 3000円(税別)
720ml 価格 1500円(税別)
五百万石70%精米
アルコール度15度
日本酒度+3

有限会社 南部酒造場
住所:福井県大野市元町6-10
電話:0779-65-8900(代表)

 

4位:仙禽 生もと 純米吟醸 亀ノ尾

仙禽 木桶仕込み 生もと純米吟醸 亀ノ尾
 

栃木の日本酒は、若い蔵元が一丸となって大躍進中で、最も注目に値する地域といえる。なかでも、蔵の息子2人と若き杜氏の3人が主となって、ひたむきに、情熱的に、ときおりのんびりと、「生もと造り」で酒を醸しているのが仙禽酒造だ。

昔ながらの木桶を使用した純米吟醸。幻の酒米「亀の尾」の個性か、実にパワフルで重量感がある飲み応え十分な生もとだ。日本酒度-3、酸度2.1というこのバランス。ワインで言うならばコート・デュ・ローヌだろうか・・・。ゆず胡椒や唐辛子などスパイスをちょっぴりきかせた地鶏のローストなどとおもしろい。無濾過生原酒と瓶囲い瓶火入れの2タイプがある。

詳細記事:関東の地酒特集

<DATA>
亀ノ尾 50%精米
アルコール度 16度
日本酒度 非公開
酸度 非公開
1800ml 3,300円(税別)
720ml   1,650円(税別)

株式会社せんきん
住所:栃木県さくら市馬場106
電話:028-681-0011

 

3位:初孫 魔斬り

初孫 魔斬り
 

「西の堺、東の酒田」と謳われたほど海上交通の要であった酒田市の伝統蔵。吉田健一氏に「なんだかお風呂に入っているような気持ち」と賞されたこの初孫も「生もと造り」一筋の名醸蔵だ。好きなお寿司屋さんで出会ってから、我が家のキッチンにはかならず「初孫 魔斬」が置いてある。

「生もと」ならではのコクとパンチがありながら、どこか滑らかでやわらかさがあり、後口にも癖がなく、不思議ともう一口もう一口と杯がすすむ。「お風呂に入っているような」とはまさに言いえて妙。ゆったりのんびりとろりとした湯に浸かっている気分で、あっという間に2合3合。

ちなみに、魔斬(まきり)とは、酒田に伝わる、漁師が使う切れ味の鋭い小刀で、魔除けの縁起物だとか。昆布〆した白身魚との相性の良さは涙モノ。

詳細記事:舌に逆らわない酒「初孫」生もと純米本辛口

<DATA>
1800ml 2,450円(税別)
720ml 1,225円(税別)
美山錦 60%精米
アルコール度 15.5%
日本酒度  +8
酸度 1.5

東北銘醸株式会社
住所:山形県酒田市十里塚字村東山125番地の3
電話:(0234)31-1515(代)
 

2位:菊正宗 生もと 上撰

菊正宗 生もと 上撰
 

「創業350年、酒造りの原点生もとに帰る。生もとで辛口は旨くなる」これが今の菊正宗のキーワードである。昨年より、上撰・本醸造を全量生もと造りにした。

ますます、コクがあってキレがある、カラリと晴れ上がった青空のように爽快な辛口。これぞ灘の男酒の本領発揮だろう。昔、パック酒のみのブラインド試飲をやったとき、味わいのバランスとおいしさでダントツ1位だった菊正宗。いつでもどこでも買えるのに、この安心感とおいしさはさすがとしかいいようがない。「旨いものを見ると菊正を飲みたくなる」のコピーに偽りはない。おろしたての山葵をそえた鮪の刺身がほしくなる。ああ、たまらない。


詳細記事:灘散策・菊正宗訪問

<DATA>
1800ml 1,868円(税別)
アルコール度 15%
日本酒度 +5

菊正宗酒造株式会社
住所:神戸市東灘区御影本町1-7-15
電話:078-851-0001

 

1位:大七 純米 生もと

大七 純米 生もと
 

「生もと」といえば「大七」。「大七」といえば「生もと」である。数々の名品を持つ大七だが、やはりスタンダードな「大七 純米 生もと」は不動の人気ナンバー1であろう。

さまざまなランキングでも常に上位入賞をはたすこの「純米 生もと」。概観は透明感のあるクリアな印象。一口飲めば、キレイな酸味とどこまでも深く品格のある旨味、エレガントな後味に感動しない人はいない。

冷酒や常温でもすっきりとした旨味を楽しめるが、お燗で良さが引き立つのも大七生もとのポイント。お燗によってきゅっと引き締まった風味が、上質の鮪が持つ酸味、白身魚の淡い旨味をぐっと引き立ててくれる。また、ナチュラルチーズとの組み合わせも楽しい。

詳細記事:大七酒造蔵訪問
詳細記事:大七とナチュラルチーズの相性

<DATA>
1800ml 2,545円(税別)
720ml 1,273円(税別)
180ml 382円(税別)

大七酒造株式会社
住所:福島県二本松市竹田1-66
電話:0243-23-0007

 

番外編:太平山 生もと純米

 
太平山 生もと純米

太平山 生もと純米


 
 
秋田流生もと。手作業で行う山卸しをモーターつきの電気ドリル式の道具で行う、いわば簡略式の生もと製法。極寒仕込みの影響もあるのか、いくぶんすっきりと軽めの印象。洗練度合いはすばらしい。2007年と2009年にはモンドセレクションにおいて世界最高金賞を受賞している。

<DATA>
1800ml 2,300円(税別)
720ml 1,050円(税別)
美山錦 59%精 米
アルコール度数15.2%
日本酒度 2.0
酸度 1.7

小玉醸造株式会社
住所:秋田県潟上市飯田川飯塚字飯塚34-1
電話:018-877-2100

 

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