世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

シャルトル大聖堂:フランスが誇るゴシック建築の傑作

深い森を思わせるゴシックの荘厳な空間に舞い降りる青い光。この不思議な光をもたらすステンドグラスは再現不能といわれ、人々はその奇跡的な青を「シャルトル・ブルー」と称賛した。今回はゴシック建築の基礎知識と共に、パリから1時間で訪れることができる世界遺産「シャルトル大聖堂」の見所・観光情報・歴史を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

ゴシックが醸す聖母の青 シャルトル大聖堂

シャルトル大聖堂の西ファサード

シャルトル大聖堂の西ファサード。向かって左がゴシック建築の新塔で、右がロマネスク建築の旧塔。塔に昇ってシャルトルの街並みを眺めることができる

世界でもっとも美しいといわれるステンドグラスを有するフランスの世界遺産「シャルトル大聖堂」。その内部は神々しく、まるで天へ吸い寄せられるような錯覚さえ起こさせる。

今回はシャルトル大聖堂で花開いたといわれるゴシック建築の基礎知識を解説しつつ、シャルトル大聖堂の魅力と歴史を紹介しよう。

天へと翔けるシャルトル大聖堂

北ファサードのバラ窓と5連ランセット窓

聖母マリアの生涯を描いた北ファサードのバラ窓と、その下には5連ランセット窓

すなおに、すなおに――
宗教建造物に入っていつも心掛けていること。何も考えず、このシャルトル大聖堂を眺めてみよう。

上へ上へ――
外からその姿を眺めるとフワリといまにも飛び立ちそうな勢いを感じ、中に入って全体を見渡せば身体がスーっと空へと吸い上げられるような錯覚を起こす。
南ファサード

南ファサード。ファサードは建物正面部分のことで、西・南・北の各ファサードに巨大なバラ窓が設けられている

上へ上へ。天へ天へ。 

カテドラル(大聖堂/ドゥオーモ)とは、一定の区域を司るカトリック教会の司教が座る椅子=カテドラが置かれた教会堂のことをいう。ヨーロッパや旧ヨーロッパ植民地の都市には必ず中心にカテドラルがあり、一帯を睥睨するようにそびえている。

カテドラルの主な役割はふたつ。ひとつは地域一帯を束ねること。そしてもうひとつ。神と交流すること。 

シャルトル大聖堂とゴシック建築

美しき絵ガラスの聖母

有名な「美しき絵ガラスの聖母」。聖母が着ているのがこの大聖堂に収められているという聖衣サンクタ・カミシア

シャルトル大聖堂の身廊(教会堂中央部分の建物。ネイヴ)で、信徒席に腰かけてこの建物を全身で感じてみよう。まず、上へ上へ、天へ天へと見る者を引き上げる不思議な力を感ぜずにはいられないはずだ。

それともうひとつ。その不思議な色彩。

まるで森の中の木漏れ日のような、やさしいやさしい光。見上げるほどの位置にあるクリアストーリー(高窓)のカラフルなステンドグラスには、それほど明るくはないものの、様々な色彩が舞うようにたわむている。白いステンドグラスからはすべてを浄化するような鋭い光。赤いステンドグラスからは精気が伝わってくるような温かな光。そして全体は清浄な青で統一されている。
主祭壇のステンドグラス

シャルトルブルーが神々しい主祭壇のステンドグラス

「はじめに神は天と地とを創造された。地には形なく、虚しく、闇と神の霊が水面を覆っていた。神は『光あれ』といわれた。すると光が現れた。神はその光を見て、『よし』といわれた」(『新約聖書』「創世記」より) 

光とはすなわち神。だから教会堂はいつの時代もこの光を表現するために様々な工夫を凝らしてきた。10世紀前後から、より多くの光を求めてそれまでの建築様式を一新するまったく新しい建築様式が発明された。その様式は、建物をより高くすると同時に壁を大きく減らすことに成功し、結果それまでの建築に比べて何倍もの光を取り込むことに成功した。

ゴシック建築である。
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