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産休切り・育休切りによる解雇、どこに相談する?

「産休切り」「育休切り」が問題になっています。もし自分が産休中や育休中に解雇を言い渡された場合、どのようにしたらいいのでしょう。社会保険労務士さんに教えていただきました。

高祖 常子

執筆者:高祖 常子

子育てガイド

産休・育休を希望したら会社を辞めさせらる!?

産休中や育休中に突然企業から「もう来なくていい」と言われたら……

産休中や育休中に突然企業から「もう来なくていい」と言われたら……

出産を機に女性が会社から解雇を言い渡される、「産休切り」「育休切り」が問題になっています。

平成21年3月16日付けで厚生労働省から「現下の雇用労働情勢を踏まえた妊娠・出産、産前産後休業及び育児休業等の取得等を理由とする解雇その他不利益取扱い事案への厳正な対応等について」という通達が出されました。しかし、企業からの不当な解雇を言い渡され、泣き寝入りしてしまう人も少なくないようです。

もし自分がこのような事態に陥ったら、どのように対処したらいいのでしょうか。気になる質問について、社会保険労務士の横井寿史さんに答えていただきました。

育休切りにあったら、どこに相談すればよい?

権限があるのは、国の機関である労働局だと思います。労働基準監督署も労働局下にあります。労働局には雇用均等室という部署があり、そこが雇用均等法や育休法などを所管しています。

育休法では育児休業等の取得を理由とする不利益取扱は禁止されていますが、違反した場合どうなるかというと、実はどうにもなりません。せいぜい民事訴訟において不法行為として認定されるだけです。男女雇用機会均等法にもとづく労働局長による助言、指導、あっせんもありますが、現実的にはあまり効果を発揮していません。

なぜかというと、この労働局長による助言、指導、あっせんは、なんの強制力も持っていないからなのです(違反項目によっては罰則の適用や、企業名公表などされます)。

「育休切り」をくつがえすのは難しい?

法律が禁止しているのはあくまで育休の取得を「理由」とした解雇だけであり、格段別の理由がある場合は、禁止されていません。 ここが、一番歯がゆいところなのです。

企業側は、決して育休を理由とした解雇だとは言いません。過去の勤務成績や勤務態度、勤務年数を考慮した結果、あなたが被解雇者に選ばれた、と言うでしょう。

産休切りにあいそうになったら、どこに相談する?

「育児休業」と混同してはいけないのが、「産前産後休業」です。産前産後休業の期間中(産前42日、産後56日)と産休明け後30日間は、理由を問わず解雇できません(天災事変等の場合は別)。

もし、産前産後休業中に解雇されたらそのときは、労働基準監督署へ行くべきです。労基法19条違反で、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

労働基準監督署に相談する際、事前申し込みや準備は必要?

いつでも困ったときに相談できる駆け込み寺のようなところですので、基本的に、事前に申し込みをする必要はありません。ただ、事実関係が分かる資料はできる限り持って行ったほうがいいでしょう。

まず、必ず持って行きたいのが解雇通知書(会社から通告される際に交付されるもの)。 もし解雇通知書が発行されず、口頭で解雇を告げられただけなら、その際には解雇通知書の発行を求めるべきです。拒否されたのであれば、労基法22条に基づく解雇理由証明書を発行してもらいましょう。

それすらも発行してもらえない場合、会社とのやりとりを手帳などに記録しておき、その記録を持っていきましょう(例:○年○月○日○○時頃 社長から電話があり、○○の理由で解雇すると告げられた)。時間、場所、相手、内容などを克明に記録しておいたほうがよいです。

その他に、雇用契約書や給与明細、出勤簿などもあれば持って行ったほうがいいと思います(いつから働いていたのか等を証明するため)。

労働基準監督署に相談したら、具体的にどんなことをしてくれる?

労働基準監督署が法違反の疑いがあると認めた場合、会社に対して是正指導をしてくれます。ただし、この是正指導については強制力がないため、最終的には相談者から刑事告訴をし、会社に対して刑事罰を求めるより他はありません。

慰謝料等に関しては、民事上の争いになりますので行政官庁である労基署は対応してくれません。個別労働関係紛争解決促進法に基づく労働局長による助言・指導・あっせんを利用すれば、民事に関しても対応してくれます。

労基署に対しての相談は労基法104条に基づく申告といえますが、この申告をしたことに対する不利益取扱は同条で禁止されています。また、労働基準監督官(公務員)には守秘義務がありますので相談内容が外部にもれることはありません。

産前産後休業中に解雇されないための防衛策はある?

産休切りにあわないよう、事前に事業者と確認しておくべきことがあるか、気になる方もいるでしょう。そもそも法律上禁止されているので、あえて確認をする必要はないと思います。逆にそのような確認をすると、口うるさい人間だと思われてしまいかねません。 どうしても労使のトラブルは労働者側が後手に回ってしまいがちなのです。

あえて言うなら、産前産後休業だということを明確にしておくといいかもしれません。

休業に入る際に、「産前産後休業願い」のような文書を作成して「○月○日から○月○日まで(出産予定日が遅れた場合はその日数分だけ繰り下げます)産前産後休業を取得させていただきます」という文言を入れておく。そうすると、その間は産前産後休業だということが明確になり、仮に解雇されても無効だと主張しやすくなると思います。

育休切りについても、何か防衛策はありますか?

育休についても産休と同じことが言えます。育休中は決して解雇ができないのではなく、育休を取得したことを理由に解雇することが禁止されているだけなので、解雇されないという方法はありません。

ただ、解雇を通告された際に、その理由を問いただしその理由が育休を取得したことだったのであれば、その解雇は無効ですので、相手の主張等をやはり手帳等に記録しておくとよいでしょう。

産休切り、育休切りなどにあってしまった場合、泣き寝入りせず、まずは相談してみましょう。どこに相談したらいいかわからなければ、全国にある総合労働相談コーナーへ。労働問題に関するあらゆる分野についての相談を、専門の相談員が、面談あるいは電話で相談に応じてくれます。相談は無料です。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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