酒類関係の文献に精通している浅倉氏

浅倉淳氏
オーナーバーテンダー浅倉淳氏
銀座6丁目『BAR ANTHEM』(アンセム)はこの春、4月にオープンしたばかりだ。
オーナーバーテンダー浅倉淳(あさくらあつし)氏と知り合ったのは彼が駆け出しバーテンダーだった頃で、すでに15年近い付き合いになる。30代後半を迎えて体型的には変化している彼だが、若い頃もいまも醸し出す波長は変わっていないような気がする。
若い時から柔らかい落ち着きと、独特のとっぽさを持ち合わせていた。カクテル技術の修練をつづけ、2005年にはNBA(日本バーテンダー協会)の全国技能競技大会で優勝を勝ち取ったりしているが、わたしが彼に一目置いているのは酒類全般にわたる知識欲である。

カウンター
浅倉氏の立つカウンター
10年ほど前のこと、わたしはある雑誌でカクテルブックの歴史に関する記事を企画したことがある。記事中で日本のカクテルブックの最古のものを紹介した。雑誌が店頭に並んでしばらくして、なんと記事で紹介したものよりもさらに古い明治時代のカクテルブックを浅倉氏が所持していることを知った。
識者をあたって、これぞ最古と思われるカクテルブックを紹介したつもりだったが、こころの中に、もっと古いものがあってもおかしくないという気持ちがあったわたしは、口惜しさよりも「浅倉君、よくぞ見つけておいてくれた」との喜びほうが強かった。
それから彼への親近感はさらに増した。

書棚
酒類関係の貴重な文献が揃う書棚
アンセムのカウンター席の背後に書棚がある。そこには浅倉氏が長年収集した酒類に関する歴史的な書籍のほんの一部が並んでいる。
いまわたしは仕事で大正時代のアルコール製造に関する許認可について調べているが、近々にまた彼を頼らなくてはならない。ちょうどよい資料がアンセムの書棚の中にあるからだ。
オールドボトルをはじめさまざまな酒のコレクションで知られるバーもある。そういった店は目で愉しませてくれる。一方で書籍というのはとても地味だし、カウンターで飲みながら文献を探るという人はいないかも知れない。だが酒類関係の文献に精通することもバーテンダーとしてのひとつの生き方かもしれない。
次のページではアンセムのおすすめのカクテル、ウイスキーを紹介する。
次頁へつづく)