向き合う関係がベストではない

女性よ、もっとバーへ行こう
女性よ、もっとバーへ行こう
現代人はひとりになって、自分を見つめる時間が必要だ。それにはバーを上手く活用しよう、と書いたことがある。だが、バーはひとりだけのものじゃない。バー・カウンターはぎくしゃくしたふたりの仲をとりもつこともあるのだ。
互いが素直に向き合えなくなってしまった知り合いの夫婦や恋人同士に、わたしはバーに行きなさいと最近はすすめている。人と人が深い会話をしたいなら、対面しないほうがいい、との根拠があってのことだ。

夫婦や恋人たちの実例を紹介するが、その前にかつてこの“男は読むな!シリーズ”で、臨床心理士・諸富祥彦氏の著書『孤独のちから』を引用しながらバーの効用を語ったことがある。
諸富氏は、夫婦、恋人が同じテーブルで向き合う関係が必ずしも良いとはいえないとの例として、バー・カウンターをすすめられていたのを要約する。

テーブルでの対面の関係と、カウンターで隣り合いお互い同じ方向を向き、同じ景色を見つめながらの状況では互いの意識が違う。カウンターでは同じ時、同じ空間を共有しながらも、自分自身と向かい合うこともでき、深い心の会話がなされやすい。そのため通常より思いを語り合い、聴き合うことができるというものだった。
 

バーに行く夜は親密さが深まる

この光度の中、カウンターでの会話が良好な関係をつくる
この光度の中、カウンターでの会話が良好な関係をつくる
1年半前からあるバーで、50代後半の夫妻と親しくなった。10年近く前からそのバーでよく出会ってはいたのだが、会話したことはほとんどなかった。
親しくなって、ある夜わたしのほうから、挨拶代わりに「いつも仲良しですね」と声をかけた。すると奥さんはクスクスと笑い、ご主人が苦笑しながら「そう見えますか。バーに来る夜だけは仲がいいんですけど。普段はね」と返した。

夫妻には子供がいない。どちらも仕事を持つ。30代半ばまでは、休日となればふたりで買い物や映画に出かけ、旅行もした。ところが次第にそんなこともなくなり、ご主人の仕事での地位が高まった40代後半には会話すらあまりしなくなった。
ある夜、親戚の結婚式に出席した帰り道、奥さんのほうから「一緒に暮らさなくてもいいんじゃない」との話がでた。ご主人はタクシーの空車に手を挙げようとしているところだった。で、どうなったかは、次のページへ。
次頁へつづく)